プロモーション有

城里町の高萩さん ~ひとり農家のひとりごと 取材記(11)~

ヒト取材記
スポンサーリンク
スポンサーリンク

梅林で焚火。そして、焼き芋と干し芋を食べる(取材日:2020/2/22)

 

高萩さんと焚火

 
このところ仕事やら何やらで慌ただしく、高萩さんの家にしばらくお邪魔していませんでした。
前回訪問したのが12月半ばだったので、かれこれ2か月行っていません。
あれから、高萩さんはいったいどうしているのかしらん。
仕事やら何やらがひと段落するのを待っていたら、いつ訪問できるかわからないので、えいやっ!と気合を入れて高萩さんの住む茨城県・城里町に行ってきました。
 
そういえば、城里町自体に行くのも久しぶり。
高萩さんの取材や、イベントの取材がないと、なかなか行く機会がないな…。
久しぶりに城里町を車で走ると、とても気持ちがよく、気分が落ち着くことに気づきました。
こんもりとした小さな山が連なり、その合間に田畑があって、家があって。
ああ、田舎だなぁ、長閑だなぁ…なんて思いながら車を走らせました。
やっぱり、田舎はいい。
豊かな自然のある暮らしはいい。
私の住んでいるところは、以前はそれこそ田んぼと畑と雑木林ばかりだったのですが、ここ十数年で開発が進んでショッピングモールができたり、いろんなお店ができたり、
住宅があちこちにできたり…とすっかり変わり果ててしまいました。
普段の仕事も、街中を車で走ることが多く、城里町のような自然豊かな風景の中をゆっくりとドライブすることがとても新鮮に感じたのであります。
 
そんなこんなで高萩さんの家に到着すると、高萩さんは畑にはいませんでした。
高萩さんがアスパラガスを育てているビニールハウスのすぐそばには梅林があって、そこにいたのです。
 
高萩さんは梅林で何をしていたのかというと。
…焚火をしていました。
梅林の中には、穴が掘られていて、そこに梅の木の枝がまとめられていて、そこからもくもくと煙が出ています。
先日、知り合いの方が梅の木の枝打ちをしてくれたらしく、その切った枝を燃やすとのこと。
「今日は焚火です」
2か月振りの高萩さんは、いつもと変わらぬ穏やかな様子でそう話します。
焚火……。
何とも魅惑的なこの言葉。
私は「焚火」という言葉と、そして、目の前で燃え出した小さな炎を見て、すっかり心乱されました。
 
「では、小さな枝を集めますね」
穴の中には太い枝がたくさんあったので、燃えやすいような細い枝を集めることにしました。
 
こらこら、いったい己は何をしに来たのだ?
取材をしにきたのではないのか?
 
私は高萩さんの近況を聞かずに、黙々と周囲に落ちている小枝を拾い集めます。
そして、それを炎の中に投下。
小枝はあっという間に燃え尽きてしまいました。
これではいかん。
火種を絶やさぬようにしないと。
そう思って、高萩さんと一緒に大きな太い枝を取りに行き、投下します。
 
高萩さんはちょこまかと動き回り、木の枝を燃えやすい位置に集めています。
うむ、さすが農家さんだ、フットワークが軽い。
 
焚火というと、燃え盛る炎を見つめながらぼんやりと過ごす…なんてシチュエーションが思い浮かびますが、意外に大変で燃え尽きてしまわぬように火のお世話をせねばなりません。
少しすると、火種ができて火が安定して燃えるようになりました。
すると高萩さんが椅子(というかコンテナ)とお茶を持ってきて「まぁまぁ、こちらにおかけになってください」と焚火の前に差し出してくれました。
 
しかし、目の前に火があると落ち着くようで落ち着きません。
せっかくの焚火なのだから、焚火らしいことがしたい。
そうだ、高萩さんは干し芋を作っているから、芋があるはず。
焼き芋がしたい!
そう思って、「高萩さん、焼き芋しましょう」と高萩さんに言うと「いいですね」と快く引き受けてくれて、サツマイモと干し芋を持ってきてくれました。
まずはサツマイモをアルミホイルに包み、火の勢いが弱いところ…すでに灰になってしまったあたりに置きます。
直に火があたってしまうと、酸化して真っ黒こげになってしまうとか。
さすが高萩さんです。野菜の作り方や加工の仕方だけではなく、焼き芋の焼き方も心得ているようです。
次に干し芋に割りばしを差し、これも火から離れた場所に刺します。
干し芋をあぶるのです。
昔、ストーブの上に干し芋を載せて少しあぶってから食べたことがありましたが、それと同じ要領のようです。
 
これはこれは! なんと焚火らしいことか!
私は嬉々として、枝を拾い集めました。
 
それにしても、炎を見ると、なんで気分が高揚するのだろう。
高萩さんにそんな疑問を投げかけると、
「最近では女性のソロ・キャンプが流行っているらしいですよ。一人でキャンプして、焚火をするらしいです」
どうやら、焚火に魅せられるのは私だけではないようです。
 
そのまましばらく、高萩さんとお話をしながら焼き芋とあぶり干し芋が出来上がるのを待ちます。
まず、最初に出来上がったのはあぶり干し芋。
表面の色が変わったあたりで、串を抜き取り、はふはふと言いながら食べてみると。
……うまい!
表面がパリッとしていて、中はねっとり。
いつもの高萩家の干し芋よりも、甘さがぐっと増したように感じました。
「成功ですね」と高萩さんも自画自賛。
おっしゃるとおり、これは大成功なのではないでしょうか。
続いて、焼き芋を焚火の中から取り出し、アルミホイルをはがして二つに割ってみると……。
おお!焼き芋っぽくなってる!
味の方も、ちゃんと焼き芋でした(それはそうか)。
 
それから、火のお世話をしながら日が暮れるまで焚火をしていました。
火が途絶えないように枝をくべて、あとは炎が燃え盛るのをぼーっと見つめて過ごします。
その間、考えるのは「火が途絶えない」ということだけ。
ただそれだけを考えて、動いたり、腰を掛けて休んだり。
何もしていないようで、実は枝打ちした木の枝の掃除をしているから、まったく生産性がない行動ではないところが、またいい。
 
川をカヤックで下ったり、山に登ったりした時と同じような感動が得られました。
これはひょっとして、極上のアウトドア体験なのでは?
ぼんやりと炎を見つめながら、そんなことを思いました。
 
焚火を終えて、帰宅途中、やたらと鼻水が出て目がかゆいことに気づきます。
しまいには、涙すら出てきました。
感動ゆえの涙かと思いましたが、どうやらそうではないようで。
半日外で過ごしたせいで、花粉症の症状が出たようです。
梅の花に、花粉症。
もうすぐ春がやってくることを、身に染みて感じた一日でした。

12月~2月の高萩さん

・干し芋加工
・レンコン収穫