見るからに険しい岩稜が、冒険心をくすぐる山……奥久慈男体山
男体山(奥久慈男体山)
MAP提供元:大子町観光商工課
所在地:茨城県久慈郡大子町(GoogleMapで”大円地駐車場”で出ます)
標高:653.9m
今回のコース:大円地駐車場 → 健脚コース → 男体山頂上(休憩) → 大円地越 → 大円地駐車場
コースタイム:往復で4時間くらい?(うち休憩1時間)
特徴:連続鎖場・新日本百名山
3度目の奥久慈男体山
連日、新型コロナウィルス感染のニュースばかり流れる昨今。
まったくもう、自粛、自粛で嫌になる。
嫌にはなるが、コロナに感染するのはもっと嫌だし、人に移すのはもっともっと嫌である。
だから、せっかくの休日を家に引きこもるという過ごし方も致し方ない。
けれど、それにもいささか飽きてきた。
そんな折、職場仲間のHが「山に登りたい」と言ってきた。
ちょうど私も登りたかったところだ、よし、行こう!行ってしまおう!ということになる。
というわけで、職場仲間と山登りに行ってきた。
(一応断っておくが、外出自粛の波が登山者にも影響を及ぼし始め、「登山自粛」なんて言葉が出回っているなんて知ったのは、登山後のことである)
マイカーで向かい、二人登山、地元の低山ならばコロナの恐怖から少しは逃れられるだろう……と、選んだ場所が奥久慈男体山だった。
茨城県の北部・大子町にあるこの山は、見るからに険しい岩稜であり、新日本百名山のひとつに数えられている。
奥久慈男体山の醍醐味は、何といっても健脚コースの連続鎖場だろう。
次から次へとやってくる鎖場はスリル満点である。
標高は653.9mだから、低山中の低山の部類。
だけれど、急登が多いせいか、それとも岩が多いせいか、標高以上の高度感もある。
さて、この奥久慈男体山。
登るのは今回で3回目となる。
1回目の奥久慈男体山は、登山を初めてから2回目の登山で。
地元のスポーツ誌の取材で行ったのだが、大雨に降られた挙句、下山で健脚コースを使ったから死ぬほどに怖かった。
2回目の奥久慈男体山は、やはり取材で。
今度は某スポーツサイトの取材。
夏季に行ったため、アブに刺されるわ、頂上ではクマ蜂の大群に遭遇するわでこれまた難儀な登山となった。
それでも、この日は雲海を見ることができるなど、収穫もあった。
そして、今回が3回目の奥久慈男体山になるわけで。
コロナ騒動から逃れての登山になる。
連続鎖場の健脚コースへ
大円地駐車場に到着したのは、午前10時頃。
その時すでに、トイレ付近の駐車場は車でいっぱいであった。
こんなご時世でも登りに来る人がいるのか、と人様のことは言えないが、そんなことを思う。
今回のコースは、大円地駐車場から健脚コースで登り、大円地越を周って駐車場に戻ってくるコース。
奥久慈男体山で最もポピュラーなコースである。
歩き始めて20分ほどで、最初の鎖場がやってくる。
最初は鎖がなくても登れるやん!ってほどの登りであるが、途中には鎖があってよかった!と思うほどの登りもあった。
いやはや、久々の男体山の鎖場(5年ぶり)であったが、登りの鎖はやはり楽しい。
下りで使おうとは、二度と思わないが(1回目の登山で痛い目を見た)。
鎖場の切れ目で、絶景スポットがある。
途中ですれ違った登山者いわく、ここから富士山も見えるらしい。
けれど、今日は生憎のガス模様。
富士山はおろか、スカイツリーも見えなかった。
登り始めて1時間と少しで頂上に到着した。
頂上からの展望は、素晴らしいの一言。
富士山は見えないが南には筑波山、西には日光男体山と那須岳、東には太平洋と高鈴山などが見渡せる。
それらに加えて、近くの奥久慈の山々がこれまた素晴らしい。
直下を見ると、あまりの急な角度に吸い込まれてしまいそうになる。
あれ、こんなに眺めが良かったっけ?
5年ぶりだから忘れてしまっただけ?
いや、そうではなかった。
思い起こせば、過去2回の奥久慈男体山は、頂上でくつろいだ記憶があまりない。
1回目は大雨、2回目はクマ蜂の大群……。
頂上で時間を気にせずゆったりできることが低山の魅力だというのに、それができていなかった。
なので、今回は思い切り頂上でくつろいだ。
湯を沸かし、カップラーメンを作って食べ、食べ終わったらコーヒーを淹れて。
カップラーメンといえど、侮れない。
絶景を見ながら食べるカップラーメンは、どこぞの行列を作るラーメン店で食べるラーメンよりも、数百倍はうまい。
コーヒーだって、コンビニで買ったインスタントだけれど、これまたどこぞのオシャレなカフェで飲むよりも、明らかにおいしく感じた。
極上のランチである。
コロナの恐怖などどこ吹く風である。
「いやぁ、来てよかった!」
Hと喜びを分かち合い、過去2回頂上でくつろげなかった分、思う存分に頂上でゆったりくつろいできた。
帰りにソバ
下山は健脚コースを使わずに、大円地越を周って下りた。
健脚じゃなければ、容易いものだとたかをくくっていたが、そうでもない。
案外、急な場所もあってそれなりに楽しめるコースであった。
下山は昔から苦手で。
ザレ場のようなすべりやすいところで、すってんころりんと転んでしまうのは、私の登山には付き物である。
今日の同行者Hは登山初心者であったので、カッコ悪いところは見せられない。
私が転ばないように転ばないようにと恐る恐る歩を進めていると、Hがすいすいと下りていく。
Hは運動神経が私の数倍良い。
鎖場もすいすい登っていた。(登りは不慣れなせいか、バテていたが)
私はというと、極めて運動音痴な上、極めて臆病である。
運動ができるやつは、山の初心者であってもすいすいと登り下りできてしまうようで、以前にも運動ができる山の初心者と一緒に登ったことが何度もあるが、その時も同じだった。
それを知った当初は「運動はできなくても山登りはできる」と自負していたので、山の初心者に山歩きで負けるはずがないと思っており、そのように初心者にすいすいと歩かれてしまうのが屈辱で仕方なかったが、今はそうでもない。
もはやその光景を諦観できるようになったのは、私が少しは大人になっただろうか(アラフォーになって何を言おうか)。
下山後は、麓の蕎麦屋でソバを食う。
先ほどカップラーメンを食べたばかりでも、まだ食えた。
山菜の天ぷらがうまい、うまい。
そして、ビールで(私はノンアル)Hと乾杯!
奥久慈の木々に囲まれ、山に登り、空気に触れて、食を楽しむ。
やっぱり山はいい!
近場の小さな山とはいえ、こんなにも「旅をしている感覚」が味わえてしまうのだから。
山の素晴らしさを再認識した一日だった。