山について、自然について。偉人達の意識に触れる。
若菜晃子さんの文章について、私の考えを話そう。
私が、若菜晃子さんの文章と出会ったのはいつだっただろうか。
Spectator(スペクテイター)の「OUTSIDE JOURNAL 2012」で紹介されていたのを読んで? 暮らしの手帳別冊の「徒歩旅行」を読んで? きっかけは忘れてしまったが、私は若菜さんの文章が好きだ。とても可愛らしくて素敵な文章だと思う。若菜さんの素直な気持ちが、そのまま文章に表れている。
何ていうんだろう?
ジブリ感?
そう、ジブリ映画に出てくる主人公の少女のようなイメージを、若菜さんの文章に抱いている。シータのような女性らしさがあって、ナウシカやサンのような芯の強さがある。月島雫のように本が好きで、キキのように好奇心旺盛な面もある。きっとサツキのように面倒見が良いに違いない(もはや妄想)。
スポンサーリンクそれと、若菜さんの文章には、ごく自然な臨場感がある。読んでいる私までその場にいるような、そんな感覚に陥る。それが顕著なのが「徒歩旅行」の文章ではないだろうか。鎌倉、木更津、松本、桐生、会津若松…自分自身が足を踏み入れた場所はもちろん、鳥取、豊橋、村上、桑名…などの訪れたことのない場所でさえ、旅している気分になる。
そして、「旅のいきさき」というコラム。このコラムには、旅先について若菜さんの思い出が書かれているのだが、これがまた、いい。若菜さんの思い出が、読み手の心にすぅっと入り込んでくる。
また、今回のタイトル本「自然について、私の考えを話そう。」も彼女の人物がにじみ出ている。この本はインタビュー本で、各界の著名人に若菜さんがインタビューしているのだが、相手のコメントに対する若菜さんの相槌がいいではないか。
「ほおー」「へえー」なんて感嘆詞は、通常ならばまず文字にしない。「そうですね」「なるほど」なんて、インタビュー時に実際言っているかもしれないが、文字に起こさないのが普通ではないか。
本来ならば、それらの言葉はなくても、文章として本として成立する言葉である。インタビューをした相手の言葉をうまい具合にまとめてしまえば、読み手としてはすっきりと読める。でも、この本ではそれらの言葉も書かれていて、立派に出版されている。
私には、この自然な感じがとてもリアルに感じられた。こんな風に、実際にインタビューしたんだろうな、と思えた。そして、著名人相手に「ほおー」だの「へえー」だのと応じる若菜さんに対して、先述した「新米記者(編集者)が悪戦苦闘しながら…」や「ジブリ映画に出てくる主人公の少女のような…」なイメージを抱くようになった。さらに付け加えるならば、「深津絵里感」とでも表現しようか(若かりし頃の)。
若菜さんの文章は、決して難しくない。けれども知性が感じられて、とても優しい(易しいだけではない)。だからこんなに、人の心に溶け込みやすいのだろう。その場に居合わせているような錯覚を引き起こすのだろう。文章だけで、こんなことができるなんて。感動すら覚える才能である。
そうして、想像上の若菜晃子像とその文章に惚れ込んだ私は、リトルプレス「murren」の定期購読を始めた。彼女のことは、彼女が書いた文章でしか知らない。それでも、若菜さんの文章は、文章だけで心を動かすほどの魅力がある。
自然について、私の考えを話そう。
この「自然について、私の考えを話そう。」は、山登りをしない人でも知っている(?)山雑誌「山と渓谷」を発行している山と渓谷社から出ている。本の内容は、本のタイトル通り。先にも触れたが、各界の著名な方々の「自然」についての考えがインタビュー形式でまとめられている。
インタビューに応じているのは……、
と、そうそうたる面々である。
各業界で成功を収めている方々が、「自然」について何を考えているのか? また、普段「自然」とどのように接しているのか?
インタビュアーの若菜晃子さんが、ほんわかと、時に鋭くその辺りを聞き出している。……といっても、この本を読んだのはだいぶ昔。誰が何と言ったかは覚えていない(何ていい加減な読書録だろうか)。
ぼんやりと覚えているのは、若菜さんの「へえー」とか「ほおー」とか(またそれか)。でも、先に述べた偉人達が「自然」についてどう思っているかを知れるなんて、それだけで面白そうではないか。
この本を読むことで、偉人たちの自然に対する意識に触れることができる。 それは、自分自身も自然のことを考える時間になり、読後はとても豊かな気持ちになるはずだ。
スポンサーリンク今回紹介した本
- 出版社 : 山と溪谷社
- 発売日 : 2000/12/1
- 単行本 : 237ページ
若菜晃子さんの本
・Spectator 26号 OUTSIDE JOURNAL 2012
私が一時期猛烈にハマり、買いまくっていたスペクテイターでも紹介されていた若菜さん。この号ではインタビューをする側でなく、される側。若菜さんの生い立ちなどがわかる一冊。
編集者として書き手として「街」の人々に「山」のことを伝える若菜さん。彼女の魅力がいっぱいに詰まった文章をどうぞ。
ブログ内でも触れた「徒歩旅行」。購入時はムックだったので、新品はもう出回っていないっぽい。とても素敵な旅本なので、ぜひ。
リトルプレス「murren」を読んでいると、若菜さんは世界各国に旅していることがわかる。メキシコ、イギリス、キプロス島、ロシア、スリランカなど、様々な国を巡った若菜さんの旅の記憶の断片が読める随筆集。
山のガイド本。東京から日帰りで行ける山をセレクト。登山初心者にオススメ。
東京にある甘味食堂を取り上げた本。まだ読めてないです、すみません。
・murren
若菜晃子さんが手がけるリトルプレス「murren(ミューレン)」。山のこと、旅のことなどが書かれている小冊子。サイズが小さくてかわいい。デザインもかわいい。文章もかわいい。特定の書店やカフェで販売されているほか、ネットで定期購読もできる。