神田伯山の講談を聞きに、日立へ(2026/1/16)
猿師匠と私、それと二人の恩師であるM先生の3人で、講談師・神田伯山の独演会を聴きに日立へ行ってきた。

神田伯山。
二ツ目時代の「松之丞」の時から脚光を浴び、2020年2月に講談の大名跡である6代目神田伯山を襲名した、講談界で抜群の人気を誇る講談師。「日本一チケットが取れない講談師」としても有名で、講談のみならずテレビやラジオの世界でも大活躍中である。
そんな神田伯山のプレミアムなチケットを、猿師匠が見事にゲットしてくれた。さすが、師匠である。

1席目:源平盛衰記 那須与一 扇の的
カタンカタン!
噺のクライマックスになると、伯山は張扇で釈台をリズミカルに打ちながら、浪曲を歌うかのように喋る。これが実に心地よかった。アートなパフォーマンスを見ながら物語を聴いているようで、伯山の世界観に腰までずっぽりと浸かる。
2席目:赤穂義士外伝 忠僕元助
来る前に呑んだ日本酒が効いてしまい、うつらうつらしてしまう。
カタンカタン!
時折鳴り響く音に身体をビクつかせて目を覚ます。結局、2席目は眠気と戦っているうちに話が終わってしまった。伯山の講談が聞けるせっかくの機会なのに、一生の不覚なり。
中入りでM先生と猿師匠が口を揃えて興奮気味に「よかったねー!」と喜びを分かち合っていた。2席目については共感できるほど聴けていないので、1席目を聴いた後の気分を思い出して「よかったですねー!」と同調した。
「よし、本を買いに行くぞ!」
猿師匠、伯山の講談によほど感動したと見える。講談を聞く前は、私のことを「グッズを買い漁りそうな中年男」と揶揄していた癖に、自らグッズを買いに行こうと誘ってきたではないか。
「いいですね」
師匠に釣られて私も本を一冊購入した。ちなみにサイン本ナリ。
「読み終わったら交換っこしましょう」
講談放浪記 / 神田伯山
神田伯山対談集 訊く!
3席目:浜野矩随(はまの・のりゆき)
枕は林家三平師匠の落語「浜野矩随 」を見た時の話。「2代目」、「その時の気分で同じものを見ても違う感想を抱く」という話が伯山の「浜野矩随」の本編に繋がっていて「さすが」と唸る。
さらに、本編は圧巻だった。
腕の良い彫刻家の息子・浜野矩随が、父亡き後に家業(腰元彫り )を継ぐが、出来上がるのはヘンテコリンなものばかり。河童の頭に狸の体を持った「河童狸」や足が3本にしか見えない馬だとか。とてもじゃないが、名人の血を引く者の作品とは思えない代物ばかりをこしらえていた。
父の代から面倒を見てくれていた道具屋にも愛想をつかされ、矩随は身投げしてしまおうかと悩む。そこに、母親から最後に観世音菩薩を彫ってくれと頼まれ、何日も寝ずに一心不乱で菩薩を彫る。出来上がりを道具屋に持っていくと、父の彫ったものと見紛うほどの出来の良さで……。
話の世界にずいずいと引き込まれる。
「河童狸」のようなものしか作れなかった浜野矩随に、ポンコツな人生を歩む私の「今」を重ねた。いや、頭のてっぺんが薄くなり、お腹の出た姿は、むしろ「河童狸」そのものか。

