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雨中、鍋足山で滝めぐり【茨城・登山】

コト
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雨の日の鍋足山(551m峰)は、
自然の魅力満載の絶景スポットと化す(登山日:2021/5/22)

★雨の里山登山

雨の山には、いつもと違った楽しみがある。

5月下旬現在、2021年の茨城県では、梅雨のような天気が続いている。
こんな最中、低山に登るなんてまっぴらごめん。
湿度が高くてじめじめしているし、雨で足場はぬかるみ滑り、靴やズボンが汚れてしまうし、カッパなど着込めば蒸れてしまうし(安ガッパ使用)、展望もよくないし。
正直、あまりいいことはない。いいことがなければ、気分は乗らない。
以前、私はソロハイカー(低山)だったので、天気が悪い日はかのような理由から極力登山を中止にした。

けれども最近は里山冒険家・Nさんに同行することが多く、その際は友人H氏や共通の山屋さんOさんなども一緒なので、一人のわがままで登山中止にする訳にはいかない。
登山の決行はNさんの意思決定に従うことになり、その結果昨年の磐梯山のような大冒険かつ苦行を強いられることもある。

今回の鍋足山も同様で、登山予定日の5/22(土)がどうにも天気が思わしくない。
それでも、Nさんの意向で登山結構することになった訳だが、Nさんは雨の日にぴったりの山を選んでいただいたようで、2021年の鍋足山登山は、生涯記憶に残る山登り、そして滝巡りとなった。

★鍋足山

前方に見えるのが鍋足山。

場所:常陸太田市小中町(里見地区)
標高:551.7m(今回の登山)、528.9m(南の三峰の最高峰)
コースタイム:約5時間(休憩・写真撮影込)
今回のコース:笹原コース>駐車場 → 団子岩滝 → ハッチメ滝 → 三角点 → 北の入滝 → 中ん滝 → 駐車場
特徴:南側の3峰が鍋の足に見えることから「鍋足山」という名がついた。3峰から北に700mほどの距離にあるのが、今回登った551.7m峰であり、付近に小滝が点在していて、鍋足四十八滝と呼ばれる。コースも豊富にあり、笹原コース、小中コース、大石コース、大中コース、猪ノ鼻峠コースなどがある。低山ながらも険しさはなかなかで、ロープ場、鎖場が複数ある。

笹原コースの駐車場に車を停め、数分歩くと分岐がある。ここからは団子岩滝、ハッチメ滝、北の入滝、中ん滝がほど近いから、山に登らずに滝だけ見て周ることもできる。

★鍋足山の滝巡り

雨がもたらす恩恵。沢や滝が元気になる。

この日は滝たちが魅せる景色が大変素晴らしくて素晴らしくて、もうたまらないもので、これを書いている今もその感動冷めやらず。その素晴らしい景色を魅せてくれた要因が、最近の雨続きの天気にあった。雨量が少ない時期は、ハッチメ滝などはどこが滝だかわからない(おそらく他の滝も同様だろう)。以前に一度、ハッチメ滝を見たことがあったが、その時は好天続きであったのだろう、滝を見ても「これが滝か」と思ったほどであった。

2018年に見たハッチメ滝。この日は水量が少なく…。

それが、この日はどうか。
滝の水量が以前とは見違えるほどに多い。勢いよく水が流れ落ちる様は、同じ滝とはまるで思えない迫力があった。しかも、今回はそのような滝が4つも拝めたのだから、こんないい日はない。
うっとうしく感じていた雨続きの天気が、この素晴らしい景色を見せてくれたのだから、自然の恵みに感謝するほかない。

4つの滝にはそれぞれ違いがあって、それぞれに魅力があった。

鍋足山の団子岩滝。和の雰囲気が感じられる。

始めに見たのが団子岩滝。
これは団子のような丸い岩の間から幾筋か白糸が垂れている滝であった。
最初に見た滝ということもあり、予想以上の水量に驚く。改めて写真で見てみると、岩のコケや周囲の緑と滝のマッチングが素晴らしく、和の装い漂う滝であったと感じた。

団子岩滝を見て、

これはすごい!すごい!

と私がはしゃぐと、

「まだまだこんなもんじゃないよ」とNさんがハードルを上げる。

団子岩滝だけでも満足できるものだったので、Nさんの言葉に期待が膨らんだ。
同時に、一抹の不安もよぎった。

(本当かな? これ以上の滝がこの小さな山にあるなんて)

茨城の山には方々登ってきたが、「○○岩」「○○滝」などたいそうな名称がついていながら、実際見てみると「なんだこれ?」と表紙抜けすることが多い。その経験から、Nさんの言葉をまるっと信じ込むことはできなかったのだが。

鍋足山のハッチメ滝。この日は水量が多く、美しい姿を見せてくれた。

次のハッチメ滝が、私の不安と疑念をそっくりそのまま拭い去ってくれた。
この滝は、岩の模様が数字の「8」と人の「目」のように見えることから「ハッチメ滝」と名付けられた。遠目からでも木々の合間から滝の白い筋が見て取れて、滝の規模が大きいことがわかる。

次はあれだ、すごい!すごい!見てください!

私はまたはしゃぐ。

看板があるところからだとまだ遠い。沢を越えて滝のすぐ近くまでいくと、滝の美しさに圧倒された。

団子岩滝とは違い、ずいぶん高いところから一筋の水の流れが、落ちている。岩肌にはまあるくくぼんだ場所があり、なるほどここが目のように見えるわけか。女性のようなしなやかさと美しさが、ハッチメ滝にはあった。

それから鍋足山のピークを踏んで(軽く書いたがロープ場が多くてなかなか大変だった)、再び滝めぐりへ戻る。次は、北の入滝。

鍋足山の北の入滝。迫力満点。

この滝は大きな水の流れが二つに分かれて落ちていて、その様が豪快で勇ましさを感じた。冬には氷瀑するらしいが、この日くらいの水量があれば、充分に満足できる景観である。滝の迫力という点では、本日見た4つの滝の中ではナンバーワンだ。

少し離れた場所から見た中ん滝。

鍋足山の中ん滝。長い、そして高い。

最後に見たのが「中ん滝」。
北側の「北の入滝」、南の「ハッチメ滝」「団子岩滝」の間に位置するから「中ん滝」というらしい。書いていて先ほどから思うのだが、ネーミングが安直すぎやしないか。(そこがまた愛着持てる部分でもあるが)

常陸太田市の紹介文では、

「里美地区見立て観光名所番付」で、自然・名勝地の西の小結。雨量が増すと見られる幻の滝で、落差があり迫力がある

と書いてある。

この滝の長さと高さに驚かされた。限界まで近づいてみたが、それでも滝の上部はまだ上の方に見える。
遊園地などにあるウォータースライダーのような出で立ちだ。一筋に細く、長く、そして、高く流れるこの滝は、市の紹介文よろしく「幻の滝」だという。

その幻の滝が、この目でしかも間近で拝めるなんて。

雨、万歳!自然ってすばらしい!

この日の鍋足山の4つの滝を見たら、誰だって雨に対して賞賛の言葉を並べずにはいられないだろう。
雨続きの日々に感謝をしつつ、山を下りた。

そして、駐車場に戻り、車を発進させようとした時。
タイヤがぬかるみにハマって、動けなくなった。

雨のもたらす恩恵とその代償を、身をもって思い知った一日だった。

★(雨の)鍋足山・笹原入三角点の山登り

渓谷感のある鍋足山の風景。

鍋足山は滝が素晴らしいだけではない。
登り甲斐のある山であり、また幽玄な雰囲気漂う山である。

今回登ったのは、「笹原入」と記された三角点がある峰で、いわゆる一般的な三峰の「鍋足山」ではない。
三峰の方は以前に登ったことがあるが、山頂付近の岩場が険しく、とても高度感があってそれはそれで素晴らしい山登りが体験できた。今回登った551.7m峰(笹原入三角点)は、それとは一味違った素晴らしさがあった。

沢を飛び越えることもしばしば

まず、滝が近いだけあって沢がところどころに流れていた。滝を見るためにそれをひょいと飛び越えながら進むのだが、ちょっとしたスリルがあって面白い。苔蒸した巨岩がところどころにあり、どこぞの渓谷に沢登りに来たような感覚が味わえてしまう。

屋久島・太鼓岩で撮った写真。

鍋足山の写真(屋久島風)

人の手がそれほど入っていないのか、倒木がところどころにあるし、道案内も万全とは言い難い。だが、それは自然のままの状態に近いということ。屋久島級の幽玄な景色が楽しめる場所だってある。

鍋足山のロープ場。

また、山頂に近づくにつれて急な登りが続くので、鍋足山・三峰と同等の登り甲斐がある。ロープ場がある上に、雨で足場が滑るものだから、岩場のスリリング度が跳ね上がる。岩場だけではなく、足場が土の場所でもスリッピーになっているので、こちらも気が抜けない。

551.7m峰(笹原入三角点)から見た三峰の鍋足山。

頂上に登ると、始めは雲で真っ白であったが、徐々に雲が散り始め、鍋足山の三峰がよく見える。岩肌まできれいに眺めることができて、あちらの鍋足山の険しさがよくわかる。

この日のような体験は、雨の鍋足山(笹原入三角点)だから味わえたものだろう。

雨の登山もいいものだ。

雨の鍋足山に登って、雨の日の山登りへの印象がだいぶ変わった。