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ひとり農家のひとりごと~城里町の高萩さん~取材記&編集記(8)

ヒト取材記
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農らく路の夏、日本の夏(取材日:2019/8/15)

 

長い前置き

西日本に台風10号が上陸するなどして、荒れた天気が続いた2019年の日本のお盆。

私と高萩さんが住む茨城県では、それほど台風の影響はなく、相変わらず30℃を超える真夏日が続きました。

いやはや、こんなに毎日暑くては、海やプールに行くよりもクーラーの効いた家で過ごす方が快適です。
もはや、「日本の夏」はインドアで過ごさないと身の危険を感じるほどの暑さなのです。
だから、海やプールやBBQや花火などに行かず、お盆を連日家でゴロゴロとしてばかりいる私は勝ち組なのです!
クーラー部屋こそ、新時代の「日本の夏の風物詩」なのです!

などと、腑抜けたことを抜かしながら、腑抜けた生活を送っていた私は、ある意味熱中症よりも危険な状態であると自覚し、クーラー部屋からの脱却を図ります。

では、どこに行こうかと模索してみたところ、真っ先に思い浮かんだのが甲子園。
夏といえば、高校野球ですよ、やっぱり。
炎天下で汗水垂らして白球を追うその姿は、見ているだけで心震える感動巨編であり、日本の夏の風物詩であります。
日々薄給を追い求めてダラダラと仕事している私とは訳が違います。
これは是非とも生で見てみたいと思いましたが、何分薄給の身分ゆえにおいそれと大阪まで行く旅費なんてありません。

ならば仕方ない、大阪に行かずとも自宅のテレビで甲子園を見ればいいと思い、テレビの電源をオンにしたところで気がつきました、これではクーラー部屋から出ていないではないかと。

そこであることを閃きまして、手の平を一つポンと叩くと、TSUTAYAのカードをサイフに入れて、近所のTSUTAYAであだち充さんが描いた野球漫画の名作「H2」のコミックをレンタルして読もうと考えます。

 

甲子園に行くお金がないなら、せめて甲子園に行った気分になれるような漫画を読もうではないか、TSUTAYAに行くから外にも出られる、と思いましたが、道中の車ではクーラー、TSUTAYAのお店でもクーラー、挙げ句の果てにはコミックを読むのに自宅に戻ってきてクーラーと、根本的な問題解決にならないと気付き、この案もあえなく却下となりました。

しかしまぁ、どうにもこうにも、クーラー部屋から離れることができなくていけません。

こんな私は、炎天下で働く農家さんの爪の垢でも煎じて飲ませてもらった方がいいと自戒の念を抱くと同時に名案が浮かびます。

そうだ、高萩さんの家にいこう。

いつもの定期取材をしつつ、農作業のお手伝いをしよう。
そういえば、定期取材の他にも打ち合わせすることがあったし。

何より、畑でかく汗は、ひょっとしたら野球でかく汗よりも気持ちいいかもしれない。

取材してブログを書けば、ひょっとしたら、万が一、何かの間違いで当ブログが炎上し、多くの読者を獲得してブロガーとして生計が立てられるようになるかもしれない。

そして、クーラー部屋ライフからおさらばすることで、陰キャ・ライフからもおさらばして、イケてる人生を歩むことができるかもしれない…!

高萩さんの家に行くことを想像しただけで、数々の「かもしれない」という期待が生まれたことに我ながら驚きました。

これぞ「かもしれない思考」。

車の教習所で習った「かもしれない運転」とは似て非なるものです。
あちらはネガティブな「かもしれない」だけれど、こちらはポジティブな……(いい加減にしろ)。

という訳で、今月も城里町で農業を営む高萩さんの家にお邪魔してきました。

 

そういえば、この取材は本作りのためであったことを忘れてはいけない

ふらふら~っと現れた高萩さんは、何だかいつもと様子が違いました。

いつもの訪問時は、作業着姿での登場が常だったのですが、この日は普段着を着て明らかにリラックスモード。

「いやぁ、暑いですね。こんなに暑くては作業もできませんね」

と、高萩さんの口からもリラックスした言葉が。

(おや、これはもしや。今日は農作業がなさそう?)

長袖のTシャツ(日焼け&虫刺され防止)の上にツナギを着こんで、いつも通りに作業をやる気満々といった格好で来た私ですが、真夏の炎天下での農作業はやらないことにこしたことはない気もしなくもない(いや、何のために来たのだ)ので、それはそれで結構なことで。

それに、この日はいつもの取材だけではなく、高萩さんに書いていただいた原稿についての打ち合わせや、その他諸々の打ち合わせもあったので、高萩さんも「今日は打ち合わせの日にしようかと思って、作業はなしにしようと思ってました」と言うから、高萩さんがそう言うなら仕方ありません、本日は農作業はナシの方向に決まりました。

そもそもこの取材は、農作業体験のブログを書くためではなく、本作りのためであったのを忘れてはいけません。(私が忘れていた)

なので、農作業をして云々の内容はどこか遠くの国へ放り投げていただいて、スッパリと忘れていただいた方がこの先何の矛盾を感じることなく読み進められます。

そして、始まった原稿の打ち合わせ。
いただいた原稿を事前に私がタドタドシく校正をし、その結果を擦り合わせます。

ここはこうした方が…、ここは表現変えてはどうですか…などと、どの口がそんな偉そうなこと抜かすんじゃい!と怒られそうなことをズケズケと言います。

編集や校正の仕事は過去に真似事をやったくらいで、書籍の編集となると人生初めてなわけで。

そのため、高萩先生のお力を借りながら、少しずつですが本の完成に向けて前進しているところです。

そんなこんなで打ち合わせがひと段落した頃、息抜きがてらに農らく路の畑の様子を見に行きました。

 

8月の農らく路

まずは、レンコンが植えられている蓮田を見学。

「今年は田んぼの草抜きを例年よりも頑張りました」

と言う高萩さんの努力の結果が実って、レンコンの生育具合は順調のようです。

(立派に育っているなぁ)と感心しながら見ていると、蓮田の中にレンコンの花が一輪咲いているのを発見。

レンコンの花を見ると幸せな気持ちになるのは、私だけでしょうか。

レンコン農家で働いていた頃の記憶がよみがえるから?

いや、それはないと思います…(もし、そうであれば幸せな気持ちにはならない気が…大変だったので)。

蓮の花があまりにも美しいから、という理由にしておきましょう。

蓮田で育てているマコモも順調です。

ただし、トラクターが埋まってしまった田んぼの方は、ご覧の通り…。

写真では見にくいですが、雑草がたくさん生えてきてしまい、マコモの生長を妨げているようです。

続いて、先月草ぬきした生姜畑。

うーん、少し草が生えてきてしまいました。
先月はしっかり抜いたのに、やはりこの時期の植物の勢いはすごい。
ぼーっと生きていたら、人体にも雑草が生えてきそうなくらいの生命力と繁殖力は、脅威そのものです。

こちらは、炭素循環農法「的」に作っている生姜畑です。
生長は慣行栽培よりも少し遅いようですが、それでもしっかりと育っています。
加えて、雑草の数も少ない。
すごいです、たんじゅん農法。

最後は、アスパラガスのハウスです。
夏ゆえに、湿気が多いためか少々元気がなくなり気味。
それでも収穫・出荷は順調に続いています。

では、8月の高萩さんはどんなことをしているかというと。

8月の高萩さん
・午前中はアスパラガスの出荷と収穫
・昼間は出荷準備の作業…もしくは昼寝! 昨今の夏の暑さは異常なので無理は禁物。
・夕方16時過ぎから草ぬきなどの管理作業をスタート(日没ギリギリまで)

梅雨が明けてからは、とにかく畑の管理作業…すなわち草ぬきなどの作業がメインだったようです。

「日中は暑いのでのんびりと過ごしています。無理して作業をして、熱中症になって倒れてしまったら、元も子もないので。この時期は”割り切る”ことが大事です」

ひとり農家の高萩さんは、常時フル稼働! のイメージでしたが、案外そうでもないようで。

高萩さんの夏の過ごし方を聞いて、やはり今の日本の夏はクーラーの効いた部屋でのんびりと過ごすのが正解なのだと自己肯定したのも束の間。
そのような自己肯定感が得られたのも、外出して高萩さんの話を聞いたからだ! と思い直すと、自己肯定どころかまたしても自戒の念に駆られました。

畑見学を終えると、再び軒下に置かれた椅子に腰を掛けて、打ち合わせを再開。
額から流れ出た汗が腕を伝わって原稿用紙を滲ませる様子を眺めながら、話を続けます。

ふと、横に目をやると、金鳥の渦巻き型の蚊取り線香の姿が。
これも、日本の夏の風物詩ではないでしょうか。

海に行かずとも、川原でBBQなぞしなくとも。
花火を見に行かずとも、やらずとも。

このうだるような暑さと渦巻き型の蚊取り線香さえあれば、「日本の夏」は充分に感じられるのです!(負け惜しみではありません)

そうして、夏の農らく路で「日本の夏」を噛みしめた私は、取材を終えるなりクーラー部屋に戻っていくのでした。