普段着感覚で使える”しん”が折れないシャープペンシル
出勤して、デスクに座ってパソコンをONにして、カバンから手帳を取り出し(ブルーシンシアの手帳。お気に入りだ)、筆入れを出して(ブロッサムの革製の筆入れ。長年使っているお気に入りだ)、その中から筆記具を2本取り出す。1本はステッドラーのアバンギャルドライト。数年前に妻から誕生日プレゼントとしてもらったもので、たまらなく気に入っている。これはいわゆる多機能ペンで、赤と黒のボールペンとシャープペンシルの機能が1本に凝縮されている優れものだが、シャープペンシルの機能が壊れてしまい、今は2色ペンとして使っている。そのため、もう1本のペンを取り出す。これが、ぺんてるのグラフギア1000。アバンギャルドライトのシャープペンシル機能を補うための1本だ。
グラフギア1000を購入した時は、アバンギャルドライトのシャープペンシル機能は壊れていなかった。だが、仕事で必要なものを購入するのに深夜のドン・キホーテに訪れた私は、何気なく文房具売り場を彷徨い、このペンを見つけると、少しだけ、惚れた。
一目ぼれ、というほどではない。少しだけ、いいな、と思った程度。近未来的なシルバー色をしたアルミボディ。グリップのところには、滑り止めの緑のゴムの楕円がいくつも配置されていて、これも未来っぽい。そう、未来だ。私はこのシャープペンシルのデザインに「未来」をイメージし、それを少しだけ、いいな、と思ったのだった。
衝動買いが得意な私は、我慢しきれずにそのぺんてるのシャープペンシルを購入した。仕事道具は探したけれど、売っていなかった。何をしに、深夜のドン・キホーテに来たのやら。やれやれ。
購入してからしばらくの間(アバンギャルドライトのシャープペンシル機能が壊れるまで)、ぺんてるのグラフギア1000は、私のセカンドペンとして使われた。その頃は、その日の気分によって使うペンを変えていた。
アバンギャルドライトは小さくて軽く、独特の使い心地。慣れるまで使いにくかったが、慣れると手に馴染んで使いやすくなった。逆に、グラフギア1000は、程よい重量感に、しっかりとした書き心地。ペン先がひょいと飛び出すのが面白くて、それでいて芯が折れにくく、これはこれで使いやすかった。私の買ったグラフギア1000は、芯径が0.4mmのため、お店で探すのに苦労するという難点はあるが。
しばらくして。アバンギャルドライトが壊れると、ぺんてるのグラフギア1000との二刀流使いが始まった。普段の筆記はぺんてるのグラフギア1000。ボールペンが必要な時、特に赤字で書きたい時は、アバンギャルドライト。否応なしに始まった、この二刀流だったが、今ではしっくりときている。
仕事に疲れた時、私は文房具を眺めることがままある。ブルーシンシアのシステム手帳、ブロッサムの革筆入れ、ステッドラーのアバンギャルドライト、ロットリングの600多機能ペン。たまに、パーカーのボールペン。お気に入りの文房具を眺めると、心が安らぐ。その中で、一番眺める頻度が少ないのが、ぺんてるのグラフギア1000かもしれない(まったくない訳ではない)。飛びぬけてデザインがいい訳でもなく、かっこよくもかわいらしくもなく、高級感がある訳でもない。でも、一番使用頻度が高いのが、ぺんてるのグラフギア1000なのである。
私は筆圧が強いから、普通のシャープペンシルではぽきぽきと芯を折ってしまう。続けざまに芯が折れると、たまらずイラっとしてしまう。イラっとすると、余計に芯が折れる。すると終いには心が折れる。
グラフギア1000には、ペン先にパイプガイドがついていて、これが芯を折れないように守ってくれる。先述したように、このパイプガイドはボタン一つでボディの中にしまい込まれるから、移動中の衝撃で折れることもない。芯が折れなければ、イラっとしない。芯が折れなければ、心も折れずに済むというものだ。

