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【群馬・長野】山の日に、嬬恋ゴンドラを使って四阿山へファミリーハイキング(未登頂)2024【登山】

コト
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初心者向けのゴンドラコースで百名山・四阿山へ挑む……が。(2024/8/11)

● 今回登った山

四阿山(あずまやさん)
標高2,354m
群馬県と長野県の県境にある山。山の麓にある群馬県吾妻郡嬬恋村では吾妻山(あづまやま)・吾嬬山(あがつまやま)と呼ばれるが、長野県では四阿山(あずまややま)と呼ばれている。名前の所以はどこから見ても山の形が「屋根」のように見えるから。菅平牧場登山口から根子岳・四阿山・中四阿・小四阿を歩く周回コースは5~6時間。今回歩いたコースは、パルコール嬬恋リゾートからゴンドラを使った初心者向けの四阿山ピストンコース(登山のゴンドラ利用は夏季~秋季のみ)。歩行時間は3時間~4時間程度。今回の私たちはスタート時間が遅く、ゴンドラの最終便に遅れる恐れがあったので山頂を踏めずに帰ることに。

● パルコール嬬恋の嬬恋ゴンドラ料金と利用時間

ゴンドラ利用は2024年7月6日~2024年10月14日期間中の毎週土・日・祝日
お盆期間:8月10日から18日(計39日)

【ゴンドラ 往復券】大人 3,000円 小学生 1,500円 ペット 800円
【登山・空中散歩/上り乗車】8:00〜15:00(下り15:30)

● 四阿山登山のあしあと(時間はおおよそ)

四阿山往復コース(嬬恋ゴンドラ利用・初心者向け・山頂未達)

11:35 ゴンドラ山麓駅
11:50 ゴンドラ山頂駅 標高2,059m
13:20 茨木山分岐 時間と体力を考慮しUターン
15:00 ゴンドラ山頂駅
15:15 ゴンドラ山麓駅

登山口にあたるパルコール嬬恋リゾートからの眺め。赤城山が見える。

ゴンドラ山麓駅。別棟の受付を済ませてからゴンドラ乗り場へ

ゴンドラ山頂駅。15分か20分で到着。

ゴンドラ山頂駅を下りて。雲で真っ白

四阿山の登山道(序盤)。山頂付近までは危ない場所はない(らしい)から初心者でも安心。

四阿山の登山道。このような桟橋がけっこう多い。

四阿山の登山道。熊笹エリアも多かった。

【四阿山・登山コラム1】下調べ

この山行は始めから間違いだった、と気付いたのは山を登り始める直前。ゴンドラに乗り込む時だった。

「今から四阿山に登るの?」とゴンドラの係員に聞かれた。「はい、そうですけれど」と答えながら時計を見る。時計の針は11時半を指していた。

「ちょっと厳しいんじゃない? 山馴れしている人でも往復で3時間はかかるよ。このゴンドラは15:30で運転終えちゃうから。天候が悪くなれば停めちゃうし。今日は登山者が多いから、時間がかかると思うよ」

この日は家族で山に来ていた。妻と次男は体力に不安があるから、4時間くらいは歩くだろうと踏んでいた。11時半から登り始めて、4時間で戻ってきたとして15時半。今からゴンドラに乗る時間を含めると……あれ? 時間がオーバーしちゃう。
茨城県の自宅を出発したのが7時、パルコール嬬恋リゾートに着いたのが11時過ぎだった。そもそも、家を出発する時間が遅い! 山に登る上での、下調べが足りなかった。

ゴンドラ係員の忠告を聞きつつ、それでもここまで来たので四阿山には登りたい。休憩なしなら3時間で行って帰ってができないこともないだろう。そう思って、そのまま登山を強行した。

「時間を気にして歩いてくださいね」

ゴンドラに乗り込む際、係員にそう言われた。

山頂駅に着くと、辺りは真っ白な雲に覆われていて視界が悪い。麓のパルコールにいた時は青空が広がっていたのに。これは、天気も心配だ。天気が崩れたらゴンドラが停まってしまう。

「今日は休憩なしで、ちょっと早足で歩いてみよう」

それからいつもよりもハイスピードで歩く登山が始まった。ゴンドラ係員の言うとおり、小まめに時計をチェックして歩いた。13時半までに山頂に着けば、ゴンドラの最終便までに余裕で間に合う。

登山コースは細かなアップダウンが続いたが、険しい場所はほとんどない。体力に不安がある二人も何とか付いてきている。これならば、ひょっとして……と期待を抱いたのも束の間。

「こんにちは」

「こんにちは」

少し歩けば、上から降りてくる登山者とすれ違う。道が狭いから、すれ違いざまにどちらかが足を止めて道を譲らなければならない。「登山道ですれ違う時は登り優先」という基本ルールがあるのだが、私は登りだろうと下りだろうとついつい道を譲ってしまう。時間がないのだから、ルール通りに譲ってもらえばいいものを。

しかも、この日は山の日。ゴンドラ係員が言っていた通り、登山者の数も多かった。私たちの登り始めた時間が遅いから、出会う登山者は下りの人ばかり。登っている人は、私たちだけ。ちょこっと歩いてはすれ違い、ちょこっと歩いてすれ違い、を繰り返した。ただでさえ時間ギリギリの山行なのに、これでめっちゃ時間ロス。さらに、体力不足の次男坊が「疲れた。休みたい」と道にうずくまってしまう始末。

登り始めて1時間ほどで、山頂を諦めて「13時半まで歩けるところまで歩こう」と目標を変えた。……つもりだったのだけれど。やっぱりできるならばピークを踏みたい、という気持ちが心の中に残っていた。出来る限り歩行速度は緩めずに、けれど、家族の体力を気遣って。そして時計を気にして歩いた。

13時10分頃の何度目かの休憩で、ついに次男がへばる。「もう歩けない」と言う。ここまで1時間ちょい歩いて来た。恐らく、山頂はもう少しの距離。ひょっとしたら、ちょいと走って登れば着いてしまうかもしれない。

そう思って、次男と妻をその場に残し、体力のある長男とダッシュで山頂を目指した。ひょいひょいと最初は足取りが軽かった。けれど、ほんの数分ですぐに息が切れた。走って登るのが、想像以上にキツイ。これまで歩いてきても息が切れることはなかったが、走った途端に急に苦しくなった。トレイルランナーは常時これをやっているのか、あの方々はもはや人間じゃない。

茨木分岐まで走ったところで、長男もへばる。この時、時刻は13時25分。予定していた折り返しの時間の13時半まであと5分だった。もはや、ここまでか。でも、もしかしたら、もう少しだけ登ればひょっとして……。こうなったら、長男を引き返させて私だけ登ってしまおうか、と頭を悩ませる。

下りてきた登山者に「あとどれくらいで山頂ですか?」と聞いてみる。

「15分か20分くらいかな」

その通りだとして、行って帰ってしたとして、茨木分岐に戻るのが14時になる。そこから下山するとゴンドラの終電時間に、かなりギリギリになる。「ゴンドラに間に合わなくなっちゃうなぁ」と言うと、「大丈夫、行けるよ」と下山者は言う。行けるのか? 確かに行けるかもしれない。でも、その間家族を待たせることになるし、ひょっとしたらゴンドラに間に合わないかもしれない。「うーーーーーん!」と声に出して悩んだ挙句、「よし、帰ろう」と下山することに決めた。

帰りはのんびり歩いて下山。ゴンドラ山頂駅に着いたのは15時ちょっと前だった。あのまま山頂まで登っていても、ひょっとしたら終電に間に合ったかもしれない微妙な時間。後悔がないとは言い切れないが、帰りのゴンドラに揺られながら、(まぁいいか)と切り替えた。登山としては心残りはあるけれど、家族旅行としてみれば、ゴンドラに乗って山を歩いてそれなりに充実したものではないか。お土産に嬬恋高原キャベツでも買って帰れば、日帰り旅行として及第点だ。

四阿山から下りて帰り道に草津付近のスーパーに寄って嬬恋高原キャベツを探した。そこにあったキャベツのポップには「地元・長野原町産の生産者が作ったキャベツです!」と書いてあった。こんなに嬬恋村に近い場所のスーパーなのに、嬬恋村産じゃないんかい。どこに売ってるんだ、嬬恋高原キャベツ。家族旅行にしても、やっぱり始めから間違っていたようだ。

何をするにしても下調べって大事だよね、というお話。

ゴンドラに乗るだけでもけっこう楽しい

【四阿山・登山コラム2】目の見えない登山者

四阿山を下山途中、歩みの遅い登山者グループに出会った。声をかけて追い抜かそうかと思ったが、少し待った。何かちょっと様子がおかしい。

そのグループの後方を歩く人は、その前を歩く人のザックに付けられた紐のようなものを持って歩いている。段差がある時などは、前方の人が「○㎝下がるよ」などと声をかけている。

これは、もしかして、視覚障がい者の方々? まさか、目が見えないのに山に登れるの?  ちょっと足を踏み外したら標高2,000mから落ちてしまうというのに?

ふと、以前に読んだ本「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」を思い出した。その本は、視覚障がい者の人と一緒に美術館に鑑賞にいくというもの。見てなんぼ、の美術鑑賞のはずだが、その本ではアート作品を見る時に同行者が目の見えない白鳥さんに言葉で作品の様子を伝えていた。それにより、「見て終わり」の美術鑑賞が「人に言葉で伝える」ことで、新たな楽しみ方を生み出す。

試しに、私も目をつむって登山道を歩いてみるが、怖くて1歩進んだだけで目を開けてしまった。「すごいな」と私が言うと、妻もそれに気付いたようで「すごいよね!」と驚いていた。

目が見えなくても山に登ろうと思う人がすごい。そして、一緒に登る人もすごい。美術鑑賞とは違って、命の危険が付きまとう「登山」なのに。リスクも込みで、登山を楽しんでいるのだろうな。

感心しながらそのグループの後ろを歩いていると、すぐにその人たちが止まってくれて「どうぞ」と先を歩くことを促してくれた。「すみません」と言って、遠慮なく前を行く。すると、更に驚かされることになる。

しばらく普通に歩いてから休憩を取っていたら、ほんの少し後にそのグループの人たちが歩く姿が見えた。私たちと、歩くスピードがさほど変わらないのだ。

「いやいや、本当すごいね」

登山の楽しみは風景を眺めることだけじゃない。自然が奏でる音に耳を澄ませたり、山が醸し出す匂いを嗅いだり、山頂に登ることで達成感を得たり、歩くこと自体を楽しんだり。山にはいろんな楽しみがある。その中のひとつくらいが欠けたって、やっぱり山は楽しいのだ。四阿山の山頂を踏んでいなくたって、他の山の楽しみを味わって山に来てよかった、と思えればよいじゃないか。

目の見えない登山者さんに、山の楽しみ方を改めて教わった。

山頂まで辿りつけなくなって、山を歩いているだけで楽しいってことを思い出させてくれた