いわずと知れた「菌」漫画
私は「もやしもん」を読んで「ツナギ」を着て農業をしようと思った
ツナギ「で」農業の原点になった「もやしもん」
「野良の合間に本読みしてえんだよ」
野良本(1)で書いた通り、サラリーマン人生を送っていた私が「農業をやりたい」と思ったのは、黒田硫黄の漫画「茄子」のこの台詞に憧れを抱いたからである。そして、実際に農業を経験した(2年で挫折したけれど)訳だが、農業をやる際にどんな農業をやりたいかを考えた。
「茄子」に出てくるような茄子農家か。
「GREEN」の逆パターンで農家の娘を探すか。
「あしたの弱音」のように孤高の農家を目指すか。
最終的にたどり着いた「私の農業」は、「ツナギを着て農業をしたい」だった。考え抜いた割に、出した結論は何てことのないものである。
なぜ、私が「ツナギ」で農業をしたいと思うようになったのか。その理由は、やはり漫画にある。
「もやしもん」は、言わずと知れた「菌」漫画。菌が肉眼で見えるという主人公の農大生・沢木惣右衛門忠保が、農大生活をエンジョイするおはなし(ざっくりしすぎな説明)である。
この沢木君が、個性豊かな仲間たちと共に繰り広げる、ちょっと変わったキャンパスライフ。その仲間たちというのがこれまた美女揃い(一人はゴスロリ女装だが)で…。くー、うらやましいぞ!沢木!
キャンパスライフ未経験の私にとって、沢木の生活がうらやましくて、うらやましくて。あまり羨望するものだから、沢木の身なりを真似てみようかと。この漫画内で主人公の沢木らが実習で着ていたのが「ツナギ」であったので、それを着て農業をすれば「もやしもん」的な生活が待ってるかもしれない、なんてことを考えた訳で。
「もやしもん」を読むまでは、「ツナギ」というと整備士などが着るものと思っていた。「ツナギで農業」という図式は、私の頭の中にはまるでないものであった。ツナギで農業って、何だか格好が良いぞ、そんな風に思うようになった。
そうして、実際にツナギを着て農業をしてみたところ、なるほどなかなか格好が良い気はする。けれども、案外動きにくい。それに、トイレ(大)をする時にいちいち上半身を脱がないといけないのは面倒くさい。まぁ、それでも「もやしもん」ごっこができるならいいかと思い、しばらくはツナギを着て農業をしたが、やがては機能性に優れたジャージなどを着るようになった。
いつしか、ツナギで農業をしたいという熱意だけではなく、農業という仕事自体への熱意も冷めてしまい、私の農業ライフは2年という短期間で終わってしまった。そしてまた、サラリーマン生活へと戻っていった。
ツナギ「で」農業ではなく、ツナギ「の」農業になってしまった。
もやしもんの魅力的
さて、この「もやしもん」だが、ちょっとしたブームを巻き起こした。
漫画雑誌イブニングの連載からスタートした「もやしもん」は徐々に人気を集め、コミックス化、アニメ化、ドラマ化と様々な媒体で展開をした。
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菌がキャラクーのように描かれていたため、「ドラマ化は不可能」と言われていたが、その不可能すらも可能にしてしまった「もやしもん」。
「もやしもん」はなぜ、こんなにも人気が出たのだろうか。
勝手に考察してみた。
菌がかわいい
石川雅之氏が描いた菌たちは、デフォルメされていて、実にかわいらしい。キャラクターとして魅力があった。このかわいらしい菌たちは、ぬいぐるみやフィギュアとなって市場を醸し出す。
かくいう私も、オリゼーのぬいぐるみやヨーグルティらのフィギュアを一番くじで引き当てた。当時、いくら一番くじに金を注ぎ込んだかは恐ろしくて思い出したくない。
菌、食、農、酒造りなどの分野が深掘りされていて勉強になる
また、かわいらしい菌とは対照的に、書かれていることがマニアックであったり、社会問題を取り上げていたりと、意外とシビアだったのも人気の要因に挙げられるだろう。
発酵についてのあれこれや、食料自給率の問題について、日本酒作りについてのあれこれ、食の多様性について…。
果てには、沖縄行って泡盛の20年古酒をサルベージしようとしたり、フランス行ってワイン造りに触れたり、アメリカ中を駆け回ったり。
こんなにも広く深い学びがある漫画は、今までにあっただろうか(いや、ない?)。
コマいっぱいを使って長々とした説明を始める樹教授と、それが始まると同時にそそくさと逃げ出す沢木たち、の場面はお約束であった。かわいい菌たちも、菌についての難しい説明をすることがしばしば(私はそのへんを読み飛ばしていた派)。
もやしもんを一冊隅々まで読もうとすると、ちょっとした小説を読むくらいの時間が必要になる。つまりはそれだけ中身が濃い。
こんなにも濃ゆい漫画を描くには、相当な取材努力が必要なはず。いつもゆるゆるな取材しかしてこない私と比べると、作者の石川雅之さんの努力は雲泥の差がある。石川さんの取材努力に敬意を表したい。
女子キャラがきゃわゆい
「もやしもん」といえば、前述した通りかわゆい菌が魅力である。
だが、かわゆいのは菌だけではない。登場する女の子たちがみなかわゆい。
いや、もはやかわゆいを通り越して、きゃわゆい。
ムトー・長谷川・及川の主力3人娘。蛍(ただし、男)・金城・マリーの「ドッペルゲンガーは3人いた」娘たち、アヤ・はな・キャサリン・西野…と、これでもかときゃわゆい女性キャラがたくさん登場する。11巻ではミス農大落とし(現ミス農大のムトーがミス農大に相応しくないとされ、新たなミス農大を誕生させようとするイベント)でまるまる一冊使っているくらいで、おそらく作者もきゃわゆい女子キャラたちを活躍させたかったに違いない。この巻は菌だの農だのとはかけ離れた内容になってしまっているが、ご愛嬌。
ちなみに私はムトー推し。オクトーバーフェストが日本で広まったのって、「もやしもん」の影響でかいと思う。
……とまぁ、もやしもんの魅力を語るとついつい長話になるのは「禁」じ得ないことで。「菌」漫画だけに……。