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城里町の高萩さん Vol.33 マルシェで有機野菜を販売する

ヒト取材記
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わかな保育園の子ども食堂「わっかな食堂」で、野菜マルシェ開催(2025/2/8)

茨城県東茨城郡城里町で有機野菜を栽培している高萩和彦さん。

「自分が作った有機野菜を地域の人に食べてもらうこと。それが本当の有機農業の姿だ!」と常日頃から話していた高萩さんの目指すものは「究極の地産地消」。自分が住む城里町の人々に、自分が作った野菜を食べてもらいたい、という想いが、2021年の「野菜の駅プロジェクト」として表現されたのだが、いかんせん、城里町の人口は少ないから、販売できる野菜も限られてしまう。

近年の高萩さんは、作る野菜の商圏を水戸市周辺に広げた。やはり、食べる口は多い方がいい。野菜も売れるし、有機野菜の広がりも大きくなる可能性がある。けれども、いくら食べる口が多くとも、作れる野菜が少なければせっかくたくさんある人々の胃袋満たすことができない。

そこで募った仲間たちが「いばらき ぴーすふるファーマーズ」。「いばらき ぴーすふるファーマーズ」は、茨城県のとあるスーパーで「栽培期間中農薬・化学肥料不使用」の野菜販売コーナーを作った、というのが前回のお話

今回は、その「いばらき ぴーすふるファーマーズ」の新しい活動をご紹介する。それは、保育園の子ども食堂で規格外の有機野菜を販売する、という活動だ。

2025年2月8日、水戸市根本にある保育園「わかな保育園」で開催された子ども食堂「わっかな食堂」では有機野菜のマルシェを同時開催した。このマルシェで、高萩さんたちぴーすふるファーマーズは有機野菜を販売した。

>ぴーすふるファーマーズのインスタグラム

● わかな保育園について

人でにぎわう「わっかな食堂」

子ども食堂は地域の子どもから大人までに、健康的な食事を安価でふるまうという活動で、近年日本全国に広まっている。会場となった「わかな保育園」では、初めての子ども食堂の開催であり、300円で有機栽培の野菜が入ったカレーが提供された。

「わかな保育園」は、普段から「食」への意識が高い保育園で、オーガニック給食の取り組みを実施中。添加物に気を配り、アレルゲン主要8品目を除いた食材を取り扱い、有機野菜を献立に取り入れている。

だが、有機栽培で作った野菜の仕入れ先を探すのに苦労していた。有機農家の多くは個人経営で、栽培する野菜の量は小規模。おおぜいの園児たちのお腹を満たすほどの量を作っている有機農家が、なかなか見つからない。

>わかな保育園のホームページ

>わかな保育園のインスタグラム

● JA水戸有機農業研究会について

「わっかな食堂」で有機栽培の野菜マルシェを開催

そんな時に出会ったのが、JA水戸有機農業研究会だ。2024年1月に発足したこの会は、その名の通り有機農業を志し、学ぶ人たちが集まっている。メンバーは、有機栽培を実践している農家はもちろん、現在は慣行栽培をしているがこれから有機栽培に切り替えようとしている人や、非農家で有機栽培を学びたい人などもいる。城里町の高萩さんも、研究会のメンバーだ。

「有機農業を広め、野菜の販路を確保したい」

そのような想いから、JA水戸有機農業研究会が立ち上がった。その後、水戸市の学校給食に有機野菜を使用することが決まり、安定した供給が期待できる販路の確保に成功。同時に、まとまった量の有機野菜が必要のなった。生産する量が多くなれば、その分規格外の野菜も多く生まれてしまう。給食向けの規格は市場よりも緩いとはいえ、それでも生産量が多くなれば、規格外が発生する量も必然的に増えてしまう。この規格外野菜をどうするか? それが悩みの種であった。

「規格外をお金に、農家の手取りの底上げをしたい」

有機野菜を買いたいわかな保育園と、有機野菜を売りたいJA水戸有機農業研究会。互いのニーズが合致し、子ども食堂で規格外の有機野菜を使ったカレーをふるまうことになった。

● 子ども食堂「わっかな食堂」

わかな保育園2階で開催された子ども保育園「わっかな食堂」

わかな保育園の子ども食堂「わっかな食堂」は、開催と同時にたくさんの人がやってきて、有機野菜入りのカレーを食べて、マルシェで野菜を購入した…らしい。

「らしい」というのも、私が会場に到着したのは12時30分。その時、駐車場は既に車でいっぱいで、会場となった保育園は人でいっぱい。

到着するなり高萩さんの姿を探したが、1階のマルシェ会場には見当たらない。野菜を販売していた生産者に尋ねると「2階でカレーを食べてますよ」と教えてくれた。

2階の子ども食堂会場に行くと、高萩さんが家族と一緒にカレーを食べていた。2階も人でいっぱいだった。

「どーもども、お疲れ様です」と高萩さんに挨拶をして、私もさっそくカレーを食べようと職員らしき人に声をかける。

すると、困った表情を浮かべて「もう残り少なくて。あとはスタッフ用のがあるくらいで」。

開催からわずか1時間半で、メインのカレーがなくなるほどの盛況だったようだ。

「ちょっと厨房に行って聞いてきますね!」

職員さんが聞きに行ってくれている間に、園長先生を捕まえて話を聞いた。

らくご舎(以下:ら)初めて子ども食堂を開催したとのことですが、やってみていかがですか?

園長の大橋さん(以下:大橋さん):むちゃくちゃ楽しかったです!

ら:それはそれは良かったです。どんな人が来ているのでしょうか?

大橋さん:卒園児、他の保育園に通っている子の親御さん、おじいちゃん、おばあちゃん。他にも、茨城大学からは先生と生徒が手伝いに来てくれました。職員の子どもや友人も来てくれて。『ここに来よう』と思って実際にここに来てくれたことがすごくうれしいですね。30人くらい来てくれたらいいな、と思っていたのが、来場者は200人から300人くらい来ていたのではないでしょうか。

ら:そんなに人が来たんですね。広報はどのようにされたのですか?

大橋さん:インスタとフェイスブック、公式LINEのみで、チラシは配布していないんですよ。特に大々的な広報はしませんでした。

ら:それなのに、たくさんの人が来てくれたんですね。次回の開催は考えていますか?

大橋さん:本当にありがたいですね。今後は月に一度開催できたらいいな~と思っています。でも、3月は端境期だというので、次は4月かも。

大橋園長から話を聞き終えた後、カレーが運ばれてきた。

有機野菜入りカレー(300円)

カレーには、大根、ニンジン、長芋、さといも、白菜、長ネギなど、水戸市近郊(城里町含む)で採れた有機野菜がふんだんに入っていた。JA水戸の有機農業研究会の人々が作った野菜だ。

「wakananiwa」Tシャツ。欲しい。

調理担当者によると、

「『重ね煮(かさねに)』で作りました。コンセプトは『からだにいいもの、健康にいいものを』ですね。具材を煮てから カレー粉、発酵ケチャップを入れて。豚肉は農業実践学園のものを使っています」

とのこと。

「重ね煮」とは、砂糖や化学調味料を使わずに、具材を決まりごとに従って層のように重ねて煮る調理法。野菜などの素材が持っている自然のおいしさを引き出すことができる、と言われている。

カレーをひとくち食べてみると、やさしい味が口の中に広がる。これが、余計なものが入ってない、野菜の自然な味なのだろう。食べながら室内を見回すと、お子さんを連れた若い男女の姿が多くあった。

この子ども食堂をきっかけに、これらの若い人々が「食」や「農」、そして「地域」というものへの意識を高めてくれたら。いや、既に意識が高いからここに来ているのかもしれないけれど。

>わかな保育園のホームページ

>わかな保育園のインスタグラム

● 「輪っか」ができた「わっかな食堂」

カレーを食べ終えて1階に降りると、高萩さんが「生絞り人参ジュース」の試飲対応をしていた。有機栽培で育てた人参を丸ごとミキサーにかけて、ジュースにしたもの。甘味料はもちろん、水すら入っていない純粋な人参ジュースなので、けっこう贅沢な代物である。飲んでみると、確かな「甘さ」を感じた。砂糖が入っていなくても、人参というのは本来甘いものなのだ。

「わっかな食堂」の1階玄関アプローチでは、いばらきぴーすふるファーマーズによる野菜マルシェが開催されていた。

この時、私はぴーすふるのメンバーと初対面。笠間市の「みち農園」さん、那珂市の茅根さん、水戸市の「フクスケオーガニックファーム」さん、城里町の「ろじベジファーム」さん。そして、同じく城里町の「たかはぎ有機農園」さん。他に、JA水戸有機農業研究会の顧問・松岡先生が「つぼ焼き芋」を販売。

つぼ焼き芋

「生産者もこのようなイベントに参加することで、子どもたちから元気と活力がもらえました」

とJA水戸の営農課の方が話す。

イベントの最後に、生産者と保育園の職員が集まり、ミーティングが行われたのだが、私もひょっこり参加した。そこで、大橋園長が「次回も開催したいと考えているのですが、いかがでしょうか?」と生産者に問うと、生産者一同「参加したい」と返答した。

城里町の高萩和彦さん

また、今回の出店を終えて、城里町の高萩さんから話を聞いた。

「野菜もほぼ完売で賑やかなイベントとなりました。生搾りニンジンジュースの試飲が大変好評で、想定を上回る150杯以上をお配りすることができました。有機野菜の美味しさを体感してもらえたのではないでしょうか。ちょっと奮発しすぎて、販売用のニンジンも使ってしまいましたが(笑)。今回のイベントは作る人(農家)、食べる人(保育園関係者)、つなぐ人(農協)が同じ場に集ったことに意義があったと思います。有機農業の本質はローカルであること、地産地消であることだと思います。水戸を中心とする県央地域は農業も盛んで一定数の人口もいます。これをきっかけに地域一体となった、持続可能なオーガニック経済圏、自給圏を築いていければと思います。まだまだ小さな取り組みですが、皆んなで楽しみながら活動の輪を広げていきたいです」

200人以上の人々が来場した今回の「わっかな食堂」。来場者、保育園、生産者がつながり、見事な「輪っか」ができたようだ。

>ぴーすふるファーマーズのインスタグラム

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