ちょっと不思議な動物園に行ってきた@茨城県行方市(2026/7/5)
コンクリ打ちっぱなしの建物は、一見ここに動物が住んでいるようにはとても思えなくて、中に入るとぐるりと歩いてまわる構造になっていて、なんだか美術館のような感じがして、ここがいわゆる動物園のようにはとてもとても思えなかった。


「どうぶつとみんなのいえ」を設計した高橋一平さんは、いろんな建築物を手掛けてきた建築家さんで、数々の賞も受賞していて、2025年度にこの動物園で日本建築大賞の大賞を受賞しているとか。という、ウィキで調べただけの情報を、改めてここに記しておきたくなるほどには、この建物だけ見てもすごくすごく良かった。
良かったのは建物だけではなくて、動物との距離の近さとか、豊富な餌やり体験とか、飼育員の人たちの佇まいとか対応とか。その素晴らしさは、もはや園内を飛び抜けてしまい、近くにある直売所や、霞ヶ浦や、玉造のタワーとか、そのへん一帯が全部良いものに思えてしまうほどで、思い返してみると、とても良い休日を過ごせたのではないか、と、この「どうぶつとみんなのいえ」に家族で行くことを提案した自分を褒めてやりたくなるくらいである。いや、それからしばらく経った今も、その日の私の決断を自画自賛し続けている。
動物を愛し動物に愛されるナウシカのような長男と、用事がなければ動かない、いや、用事があっても滅多なことでは動かない、ナマケモノのような次男、そして、愛らしくて恐ろしくもあるライオンのような妻を連れて、茨城県行方市にある「どうぶつとみんなのいえ」に行ってきた。
受付で会計を済ませると、最初に出迎えてくれるのは動物ではなく、壁に書かれた文章であった。

ここは、動物や自然を通し
私達の暮らしや地球のことを考え
未来へ届けるための遺跡です
広告コピー好きな私は、このコピーに、ずきゅんと胸を打たれる(撃たれる)。いきなりこの衝撃かよ、と、今から巡るこの施設に期待で胸が膨らんだ。
更に、私たちを驚かせたのは、次に出くわしたビーバーのかわいらしさであり、その次に出くわしたペンギンの超かわいらしさであり、さらにその次に出くわした施設内を所狭しと闊歩するキリンさんの足の長さであった。胴長短足の私からしてみると、キリンさんに対して抱いた感情は、可愛らしさではなく、妬ましさだった。

手を伸ばせば触れられるほどに、動物たちはいた。この距離感が素晴らしい。ほんの目と鼻の先に、動物たちが歩いている、泳いでいる。ペンギンなどはほとんど止まっていた。
でも、園内の「動物には手を触れないで」的な看板の指示に従って、そんなことはしない。そんなことをしたくなるのだが、やってはいけない。やってはいけないとわかっているからこそ、やってみたくなるのだが、以前に似たようなことを試みて、妻から思い切り力の込められた肩パンをくらい悶絶した記憶が蘇り、そんなことはできない。
「あ、あれ見て」
ナウシカ長男が指をさす。
「何?」
「チュロドッグ」
「?(新手の犬種だろうか?)」
と指さす方を見てみると、「チュロドッグ」と書かれた食べ物の宣伝用ののぼりが2階に見えた。
「食べたい」
動物を見て、「食べたい」と言うならおぞましいが、チュロドッグののぼりを見て「食べたい」と言うなら、まあ健全である。けれども、ナウシカ長男にはチュロドッグではなくて、もっと動物を見てほしいのだが。
いや待てよ。ナウシカ長男は最近いろんな肉を食いたがるようになった。猪肉やら鯨肉やら、昆虫やら。なんだかいつの間にかとてもワイルドなものを食べたいと言うようになっていた。長男の心境としては、動物を見ていたら肉を想像して腹が空いたのかもしれない。そう思うと、怖いのは怖いが、たくましくもある。
いやいや、やはりビーバーやペンギンを見て食欲が出たという想像力の方向性は、人間としては間違っているのか。いやいやいや、人間も所詮は動物。ひょっとしたら動物としては自然な衝動なのか。動物が好きすぎて、それこそ「食べちゃいたいくらい」なのかもしれない。
「あ、俺も腹減ったな」
常に空腹なハラペコおやじで糖尿病歴10数年の私は、ナウシカ長男の食欲につられた。では、順路通り歩いてチュロドッグの店を見つけたら食べることにしよう、となる。けれども歩けど歩けど飲食店はなくて、代わりにあったのは動物への餌やり体験コーナーだった。人間様の餌よりも、動物の餌が先である。そりゃあ、餌やり体験をウリにしている動物園だから当然か。

そこは部屋になっていて、部屋の中には動物たちが放し飼いされていた。その中に、人間が混じって入っていく。動物たちの家にお邪魔する感じ。鳥やらマーラやらリクガメやらナマケモノやら。おやおや、うちの次男坊がこんなところに。
「Kちゃん(次男)がいるよ」とウケを狙って言うも、誰も反応しない。それなのに、カメを見るなり、子どもたちが「まーくん(私のこと)がいるよ」と言って笑う。妻も一緒になって「仲間がいるよ」と言って笑う。私の家族は、偉大なる亭主である私のことを「亀に似ている」と日ごろから言う。眠くなって半目を開けている表情が、カメそっくりだそうだ。

当の本人は自分がカメ似だなんて思ったことすらないし、それまでの人生で他人からそのように言われたことは一度もない。こやつらの目は節穴としか思えないが、似ていると言われると愛着がわく。カメの背中をつるりと触ってやると、不思議と満足した。
「餌やりなよ」
長男をうながすと、「うん」と言って私の手から200円を受け取る。楽しそうにマーラに餌をやる長男。その脇からマーラをつつくカラフルな鳥(オニオオハシか?)。突然の攻撃に慌てて飛びのくマーラ、それに驚いて後ずさりするナウシカ長男。一連の光景を見て笑う私。やっぱ動物は面白いな、突拍子もない行動がたまらんな。

好奇心旺盛なナウシカ長男は積極的に餌をやるが、めんどくさがりのナマケモノ次男はここでは餌をやらなかった。続くカピバラのところでは恐る恐る餌をやっていた。何でも経験だ、いろいろやってせいぜい立派な大人になりなさい。私のようになるではないぞ。
ゆく先々で動物に餌をやりながら、回廊のような園内を順路にそって歩く。途中、妻が「くさいくさい」と喚きたてる。
「そりゃあくさいでしょうよ。てか、声でかいて」
「くさいくさいくさい」
周囲の目など気にせずに、小学生のように喚く今年47歳の妻である。

屋外スペースにはヤギやらヒツジやらアルパカがいた。ここでも餌やりができたので、餌をやる。ここでは妻がヤギにスカートを噛まれる。よくも「くさいくさい」なんて言ってくれたな、と園内の動物たちを代表して、ヤギが復讐したのだろう。
「きゃあ」
なんて、20代のような悲鳴をあげる今年47歳の妻。それを見て、今年47歳の夫(私)は声高に笑ってしまう。笑った仕返しに妻から肩パンをくらうかと思いきや、妻も一緒になって笑っていた。よかった(妻が喜んでくれて)、よかった(殴られなくて)。
施設の最後にある売店で、ナウシカ長男が欲しがっていたチュロドッグが売っていた。私は迷わずチュロドッグの購入を決める。自慢じゃないが、人の意見に流されやすいのだ(えへん)。
「何食べたい?」
ナウシカ長男に念のため聞く。チュロドッグだろ?チュロドッグが食べたいって言ってたもんね。
「たこ焼き」
まさかの返答に「えぇぇぇ」。なんかこう、期待を裏切られた。

そんなこんなで、行方市の「どうぶつとみんなのいえ」を遊びつくした。いやはや、楽しかったな。本当に楽しかったな。客は小さな子どもを連れたファミリーが多かったけれど、若者がデートで来ていたり、熟年カップルも来ていたりで、大人も子どもも楽しめる場所だった。
「何が一番かわいかった?」
帰りの車で妻に聞く。
「Kちゃん(次男)」
「は?」
「餌やりしているKちゃんが一番かわいかったな」
親バカ丸出しの妻に、呆れた。獅子の子落としならぬ、ナマケモノの子甘やかしである。
霞ケ浦 どうぶつとみんなのいえ
茨城県行方市玉造甲1234

