【蕎麦屋】そば切り 一兵衛【笠間】

芸術の森すぐ近くにある蕎麦屋で、
芸術の田舎蕎麦を食す(取材日:2020/7/26)

店舗詳細

住所 茨城県笠間市笠間2490-10
営業時間 11:30~18:00
定休日 毎週月曜
値段 盛り蕎麦…840円(白雪は945円)
   かき揚げ天…1100円(白雪は2405円)
   天ぷら(竹)…1415円(白雪は1520円)
   天ぷら(末)…1730円(白雪は1835円)
   生ゆば天せいろ…1300円
   蕎麦大盛り…+315円

特徴 麺がせいろ・田舎・白雪の3種類から選べる
   ※白雪は限定10食

田舎蕎麦・生ゆば天せいろを食す

私はいつからか、蕎麦屋を巡るのが好きになっていた。

親父の親友がやっている蕎麦屋に、子どものころからよく連れていかれたから?
昔の職場の近くに、盛りのいい蕎麦屋があって、よくそこに通ったから?
茨城県は、「常陸秋そば」が作られる蕎麦の産地だから?
落語を聞くようになったから?

理由はいろいろと思い当たるが、恐らくどれか一つではなく、その全てであろう。

どこかに出かけて、名物があればそれを食うが、名物らしい名物がなければ迷わず蕎麦を食べに行く。
そんなわけだから、先週「マクロビオティックって何?」の講座を笠間に聞きに行った時も、講座の前に蕎麦屋に行った。

行ったのは、茨城県陶芸美術館の駐車場そばにある蕎麦屋「そば切り一兵衛」。
下調べをネットでしていて、「ちょっと太めの田舎蕎麦」というキーワードに心惹かれた。

到着したのは11:30。
オープン時間丁度である。
それなのに、すでに店の前には行列ができていて、車もあと1台、2台停めるスペースが残っている程度。
どうやら人気店であるらしい、と到着してから気付く。

メニューを見ると、値段的には普通な印象。
麺が「せいろ」「田舎蕎麦」「白雪」の3種類から選べるようで。
「白雪」とはなんぞや?
「限定10食」と書いてある。
これはきっとレアに違いない、頼みたい。
だが、今日は「田舎蕎麦」を食べにきた。
「ちょっと太め」な蕎麦が好みなのだ。
葛藤の末、「田舎蕎麦」の「生ゆば天せいろ」を注文した。

混んでいたせいか、蕎麦が到着するまで時間がかかった。
その間は、店内をじろじろと見まわす。

壁には有名人のサイン色紙がずらり。
「林家たい平」師匠の色紙もある。
その色紙の横には故・談志師匠に似た似顔絵があったが、そこにも「たい平」師匠の名があるような(座った席からは遠くてよく見えない)。
はて、あれは誰だろう?
明らかにたい平師匠の顔ではない。
談志師匠に似ている気もするが、落語は好きでもにわかであるため、そこまで詳しくないから定かでない。
たい平師匠は似顔絵とか書いたっけ?
などと疑念を抱き、スマホで調べるなどして時間をつぶす。

厨房近くの張り紙には、蕎麦の食べ方が書かれていた。
「麺を半分つゆにつけて、音を立ててすすって食べる」みたいな内容であった。

「ずるずるずる!」みたいな感じか、それとも「ちゅるちゅるちゅる」か。
落語「時そば」の食べる所作を思い出し、どんな音を立てるのが江戸前か?などと考える。
私はどちらかというと、音をあまり立てずに食べるほうで。
「するっ、するっ」みたいな。
あれ、違うか?
「ずっ、ずっ!」かな?
擬音語って難しい。

さて、そうこうしてる間に周囲の客に蕎麦が届く。
白雪を注文する人も多い。
やはり、「限定10食」の言葉に惹かれたか、それともそれだけうまいのか。
白雪はその名の通り、白い麺であった。

先に蕎麦が届いた人の中には、小気味よく音を立てて蕎麦を食う人がいた。
「ずるずるずるっ! ずるずるずるっ!」
ああ、蕎麦を食っているんだな、この人は、とその姿を見ていなくてもわかる音だ。
あんな風に食べるのが江戸っ子風なのだろう。
よし、私もあんな風に食べたい。
生粋の水戸ッぽだけれど。

そして、ようやく私たちの蕎麦が届く。
うむ、蕎麦はほどよく太い。
麺を大盛りにしたから、盛りもなかなか。
生ゆばの天ぷらもボリュームがある。
天ぷらは、生ゆばの他に人参、ナス、ピーマンなどがあった。

ではでは、肝心の蕎麦を食べるとしよう。
勢いよく、音を立ててだな、こうして……「つるっ、つるっ!」
あれ? うまくいかない。
よし、もう一度……「つー、るーっ、つーっ、るーっ」
やはりうまくいかない。
これでは、「時そば」ではなく「つる」になってしまう。

私は音を立てて食べるのを諦め、麺を黙って食べた。