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城里町の高萩さん 取材記 Vol.15

ヒト取材記
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秋の夕暮れ、里芋を掘って思うこと(取材日:2020/10/3)

今月の高萩さん

里芋を掘る高萩さん

畑を歩いていると、心のもやがすうっと晴れていくのがわかる。
日常の嫌なことや不安なことが、すべてさっぱり頭の中から抜けて、土と緑の世界に溶け込んでしまう。
「あ~」と思わず声がもれるくらいに、気持ちがいい。
やはり人間は自然の中で生きるのが一番なのかもしれない。

城里町の高萩さんの畑を歩いて、そう思った。

これが、畑を眺めているだけだといけない。ここは農業が盛んな茨城県だから、畑なんていくらでもある見慣れた風景の一部でしかない。畑の中に入り、歩いたり、野良仕事をしたりしないとその「気持ちがいい」境地に達しない。
何事もそうかもしれないが、「見る」だけなのと実際に「体験する」では得られる感じがだいぶ違う。「取材」と称して、毎月のように畑の中を歩いて見学したり、野良仕事をしたりしている私は、とても特別で貴重な体験をさせてもらっているのかもしれない。

高萩さんに対して感謝せねばと思ったのだが、時すでに遅し。今日の差し入れはコンビニで買ったお菓子だった。どこかで気の利いたものを買ってくればよかった!と後悔する。

さて、本日のお手伝いは里芋の収穫である。
去年の冬は、里芋を掘り起こして別の場所に保管するという作業をしたが、この時はショベルで掘り起こした。これがなかなかの重労働であった記憶がある。野良仕事体験は貴重であるが、重労働となると話は別である。重労働は日々の仕事だけで充分だ。かといって、口実を作って作業から逃れるなんて今更できやしない。これは覚悟が必要だ、と思っていたが、高萩さんは進化していた。私が高萩家に到着すると、高萩さんがトラクターを整備しているではないか。どうやら、今回はトラクターを使って里芋掘りを行うらしい。

これは良い、やはり文明の利器は利用するものだ。早速アタッチメントを里芋掘り用に取り換えて、里芋畑に出向く。

トラクターで里芋を掘ろうとしたが。

トラクターでガタゴトガタゴト。ほうら、こんなに簡単に里芋が獲れた!…と、そう簡単にはうまくいかないのが農業である。アタッチメントの部品が思わしくなく、思うように里芋が掘れない。何度か調整をし直してトライしてみるが、やっぱりダメだ。

アタッチメントとトラクターの接続部の部品が合わず、うまくいかない。

今日はうまくいかないから、お手伝いはまた今度に…と、そう簡単には諦めないのが農家である。

高萩さん「じゃあ、ショベルで掘りましょう」

やはりそうなるか。

という訳で、去年同様に里芋をショベルで掘り起こす。里芋の周囲の土にショベルを突き刺し、テコの原理で土ごとぐいっと持ち上げる。この作業を、私と高萩さんがベッドの両脇から同時にやることで、地中に埋まっていた里芋さんが地表に現れた。

ぐいぐいぐい…と作業を繰り返す。一畝終えたところで、掘り起こした里芋を手でばらし、軽く土を払ってカゴに入れる。今年は二人で作業した分、かなり早く終えることができた。

高萩さん「二人で作業をすると、作業効率は倍以上になりますから」

このような作業の場合、1+1=2ではないらしい。難しいことはよくわからないが、早く終わることはいいことだ。一通り里芋を掘り終わった後、お茶をすることになった。

お茶を飲みながら、高萩さんに近況を聞く。

9月の高萩さん
・アスパラガスの収穫
・炭素循環農法の生姜の収穫始まる

炭素循環農法で栽培している生姜


・枝豆の収穫
今年は長梅雨のためキュウリが不作。オクラは良かったとのこと。
10月の高萩さん
・アスパラガスの収穫(ちょっとだけ)→今年のアスパラガスは終了。
・10月中旬にレンコンカラ狩り(去年よりもちょっと遅らせて)
・里芋の収穫
・落花生の収穫(直売所で人気。生のまま茹でて食べると美味)

マコモの生長が順調。管理がうまくいって2年株で雑草に負けることなく育っている。

紅芯大根

高萩さん「今年の秋は台風がうまいこと逸れてくれているので順調ですね」

思い起こせば去年の今頃は、令和元年東日本台風(台風19号)によって茨城県も甚大な被害に見舞われた。東日本台風の前にも台風15号によって、高萩さんの畑は被害にあった。

去年に比べると、今年は確かに台風が逸れてくれている。9月後半の台風12号もつい先日の台風14号も、茨城にはさほど影響がなく通り過ぎていった。この時期の農家さんは、それこそ天に祈るほか何の術もないだろう。

そんな話を聞きながら、コンビニで買ってきた差し入れを自らつまむ。こうして農家に直接会って、話を聞くのも貴重な経験なんだろうな。やはり高萩さんには感謝せねば。

高萩さん「では、もうちょっとだけ里芋を掘りますか」

はい!よろこんで!

私にはこれくらいしかやれることがない。居酒屋店員ばりに気前のいい返事をして、そのあと日が暮れるまで里芋を掘り続けた。