根本樹弥さんのインタビュー・プロローグ(取材日:2020/10/25)
根本樹弥さんの魅力
城里町は、茨城県東部にあるごくごく小さな田舎町である。
小さな田舎町だけれども、この町には面白い若者がたくさん住んでいる。
当ブログで紹介している高萩和彦さんや、陶芸家兼雑貨屋DOOKIE&FRUTASの岩野さんの他、若手農家さんもたくさんいるし、アーティストの方もいる。また、女性が多く活躍している町でもあって、女性酪農家、女性イチゴ農家、女性だけの農園などなど、小さな田舎町に、よくもこれだけの才能が集まるものだといつも感心している。
今回取材してきた根本樹弥(たつや)さんも、その面白い人の一人だ。
根本樹弥さんは、城里町に生まれ、高校まで城里町に住んだ。大学からは県外に移り住んでいたが、2年前からまた城里町に戻り、自然農で野菜を作りながら生活を送っている。また、農業の他にも以前の仕事で会得した料理や、イベントのプランニングなど、多岐にわたる才能をこの小さな町で発揮している。
根本さんにお会いするのは、何度目になるだろうか。
一番初めは、古内茶・庭先カフェで。
その次にお会いしたのが、根本さんが働いていた茨城町のオーガニックマルシェカフェ「ひ・ら・く」に食事に行った時。
去年開催された「夏の朝採れ野菜クッキング」でもお会いしたっけ。
最近では、先日フォレストピア七里の森でのツリークライミング体験の時に、偶然ばったり。
過去に4度お会いしていて、今回が5度目? そんなもの?
もっとお会いしている気がしてならない。
その理由は、根本さんのお話を方々で聞いていたからかもしれない。
草っぽ農園やDOOKIE&FRUTASの岩野さんを取材した時に、根本さんの話が出た。
いつも取材している高萩和彦さんのところでは、何度も根本さんの話題が出ている。
先日のナイトマーケットで頂いた野菜スープも、根本さんの自然農法で作った野菜だった。
取材の度に何度も「根本樹弥」に遭遇していたのだ。
そのせいか、今回根本さんの畑にお邪魔した際は、とても気楽な感じだった。慣れ親しんだ友人に会いに行くような、そんな感じ。でもその最たる理由は、根本さんの人柄にあったのだろうと、取材を終えた今では思う。
取材日当日は、根本さんの魅力が如実に表れた日であった。その日、根本さんの家に訪問したのは私以外にも2組もいたのだ。
「この間食べた(根本さんの作った)青ナスの味が忘れられなくて」
そう言って、わざわざ土浦市から根本さんの畑を見に来たご婦人たち。
「根本さんの料理を食べてみたくて(根本さんは毎週末フォレストピア七里の森の飲食店で働いている)」
と、根本さんの料理を食べにきた近所のご婦人たち。
お昼の時間には、私を含む3組の訪問者(計5名)が根本さんの家の中庭でランチをするという、予想だにしない状況になっていた。
こちらとしてはびっくり仰天な出来事でも、根本さんはいたって落ち着いていた。土浦から来たご婦人たちに畑を案内し、採れた野菜を使って自ら調理をして、後からやってきた近所のご婦人たちにもその料理をふるまう。そして、その合間やご婦人たちが帰った後に、私の取材にも対応してくれた。あたふたしてしまいそうなスケジュールでも、根本さんは慌てる素振りも見せずに、ゆったりと丁寧に、訪問者に接していた。
そんな根本さんを見ていて、懐の深さを感じた。どっしりと構えている、という風ではなくて、温かみがあって、包み込むような「深さ」である。その「深さ」はとても安心感があって、頼ってしまいたくなる感じ。
これが根本さんの魅力だろうか。
人を惹きつける力がある。
人を喜ばせる力がある。
はて、その源はどこにある?
根本さんにインタビューして、それがわかった気がする。
「農を通じて、人を元気にすることがしたい」
根本さんは、穏やかに、けれども力強くそのように話していた。自然農・飲食店・イベントと実に様々なことに携わる根本さんであるが、それらに通じるのが「人を元気にすること」。自然農法で作った野菜とそれらを使った料理は、人々に安心と安全、そして健康を与え、イベントでは人々を心から楽しませ、笑顔を与えている。
この日の根本さんの姿は、その言葉をしっかりと体現していたのではなかろうか。
では、「人を元気にしたい」と思うようになったきっかけは?
そもそもどんな人生を歩んできたのか?
ぐいぐい引き込まれるように、根本さんについて知りたくなってしまうのも、根本さんの魅力の一つであろう。私はすっかり、根本さんという人間の「深み」にはまってしまったようだ。