城里町の高萩さん Vol.22 ある日、やさいの駅にて

野菜の無人販売所をにぎやかに(取材日:2022/1/29)

「やさいの駅」のおてつだい

やさいの駅にポップを張り付ける高萩さん。

城里町の高萩さんが駅長を務める「やさいの駅 石塚駅」でポップ貼りの手伝いをしていると、散歩をしている人に「こんにちは」と度々声をかけられた。

中には「高萩さん、この間の野菜おいしかったよ」なんて励ましの声をもらったり、「今、学校の方まで歩いてきた帰りでね」なんて話が始まってそれから20分もおしゃべりが続いたり、なんてこともあった。

「城里町でも案外人が歩いているもんだな(田舎なのに)」なんて失礼なことを思うと同時に、「高萩さんも町に馴染んでいるな」と思った。

その町に住んでいても、地域の人と交流がないことなんてザラにある。かくいう私もそうである。住んでいても、地域の活動に参加せず、平日はしこたま仕事、休日はどこかにお出かけ、なんて生活をしていると地域に馴染むシーンがない。つまり、近所の人との交流がない。

その点、高萩さんは違う。家のすぐそばで畑をやっているし、地域のイベントに参加したり主催したりしている。

家の近くに「やさいの駅」なんていう有機野菜の無人販売所も作ってしまったし、地域に溶け込んでいる、というか、地域を盛り上げるのに一役買っている。

この日は、「やさいの駅」を利用しやすくしよう、ということで平賀石材店のフェンスを利用してポップを貼る作業をした。売り場の「にぎやかし」である。

ワタクシ、こう見えても元書店員だったので、ポップ貼りはそれなりに経験がある。なるほど、高萩さん。私の過去の経験を買って、一緒にポップを貼ろうと思ったのか。

「Kさん(私のこと)、背が高くて目立つから、いい宣伝になるかと思って」

なんだそれ! わしゃ、広告塔かい!

とにかく、作業をしていると散歩中のおじいさんに声をかけられた。

「あんた、大きいねぇ!」

高萩さんの思惑ずばり、である。

おじいさんや他の散歩中の人と話して思ったことがある。

高萩さんは有機野菜を地域に広めるために、この無人販売所を作った。たしかに珍しいし、新鮮な地場・有機野菜を手頃な値段で購入できるし、販売所のポップは手作りで親しみやすいし、売上も安定してきているというから、高萩さんの狙いもあながち間違いではない。

でも、それだと「物」の魅力がカギになる。というか、その物を通してしか町の人と接点ができない。
それだけじゃ、もったいないと思った。

これが有人ならば。

「人」の魅力も武器になる。直接話ができるから、有機野菜の魅力も高萩さんの想いも直接伝えることができる。話を重ねていれば、その人がいるから話したいからという理由で販売所にやってくる人も出てくるだろう。

この日は私の友人Hも来てくれた。左の女性は平賀石材店の平賀さん。

そのことを高萩さんに話すと、「私もそう思ったところです」と言う。

そして、「今度、本も販売所で売ってみようと思うんですよ」と続けた。

「やさいの駅だからと言って、野菜だけ売っているのじゃつまらないし、限界があると思ってたんです。そこで何を一緒に売ればいいか考えたとき、本があるなと」

野菜があって、本があって。
名前は高萩さんの好きな電車にちなんで「駅」とつけて。

この店に来れば、高萩さんという「人」の一端を見ることができる。
野菜だけじゃなくて、高萩さんの好きなことやモノに触れるコトができる。
高萩さんという人だからこその、オリジナリティのある「やさいの駅」ができる。

それって、すごく面白そうじゃないか!

というか、待てよ。本ですと?
私も元書店員だし、今でも「週末本屋」をやってみたいと思っている。

「あのー。それ、私も出店していいですか?」

「もちろんです!」

という訳で、近々夢が叶いそうだ。

この取材を続けてきて、「ほん(本)と」に良かった。

普段は無人のやさいの駅も、この日はいろいろな人が来て賑やかに。

今月の高萩さん

トーマスのヒロ(だと思う)とやさいの駅

2021年8月31日(野菜の日)にオープンした「やさいの駅」のその後はいかがでしょうか?

「少し持ち直しました。売上も底堅さが出てきたので、少しずつ支持してくれる人がでてきたのかなと。近所の人で立ち寄ってくれる人がいるんですけど、その頻度が増えた気がしますね。顔なじみの人が増えてきました」

ポップ作業をしている時も、何人もの人に声をかけられていましたものね。

「さっき立ち寄ってくれた女性の方は『おいしいって評判だよ』って言ってくれてました。『売上どうですか?』なんて気にかけてくれる人もいるので、認知はされているのかなと」

それはよかったですね~。

「オープンしたばかりの時は、目新しさから来店してくれてましたけれど、そこから先は商品力や親しみやすさなど、条件が整わないといけないですね」

ここからが試練ですね。

「そうですね。これを乗り越えられれば、人におすすめできるようになります。今は社会実験の段階ですが、成功すれば本を出せますよ(笑)。すぐに真似をできるような仕組みなので、農業の一つの選択肢になるのでは」

やさいの駅で売られている高萩さんがつくった有機野菜。

オーガニックな加工食品も売っています。上のしめ縄はマコモで作ったもの。

さっき作業をしていて面白いなと思ったのが、有人の面白さが垣間見れたというか。

「無人販売所のデメリットを感じましたね。手間が省けるというメリットはあるけれど、その分お客さんがなかなか広がらない。いくらポップ作ってもSNSをやっても、伝わらない場合もあるんですよね。やっぱり人対人の対応が決定的に欠けてしまいますよね、無人販売所だから当然ですけど。そういう場面はこれから意識的に作らねばと思いました」

高萩さんちの干し芋。

野菜の方はいかがでしょうか?

「アスパラはお休みの季節なので、冬は干し芋作りがメインですね。今年はスロースタートでいつもよりも遅く作り始めましたが、その分質の良い干し芋ができていますね。あとは冬野菜の収穫。人参、白菜、キャベツ。そしてレンコン」

蓮田にて。

今年のレンコンはいかがでしょうか?

「今年収穫量が少ないです。去年品目を増やし過ぎてレンコンまで手が回らなくなったので、その反省点としてこれからは自分が求められている野菜を一つ一つ丁寧に作っていこうかなと思いました」

なるほど。レンコンだけに、先を見通せた訳ですね。

 

高萩さんの野菜が買えるお店

道の駅かつら

つちっこ河和田

有機農家が作ったオーガニックの店

生活クラブ

野菜の駅プロジェクト(インスタグラム)

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