冬のコテージ泊

フォレストピア七里の森でコテージ泊@茨城県城里町(2023/1/1)

2022年の大晦日。私はスーパーの食材売り場で肉やら野菜やらを買い込んだ。翌日の元日は初めてのコテージ泊である。城里町にあるフォレストピア七里の森のコテージに家族で泊まり、そこでバーベキューをするのだ。

新年早々泊りがけのバーベキューとは、我ながらなかなかウキウキしてしまう素敵な予定を立てたものだ。そのウキウキは宿泊日が近づくにつれて大きくなり、キャンプ場に向かう車の中ではもはやソワソワに変化して、到着と同時に小躍りしてしまうほどに達していた。旅先で未踏の地に足を踏み入れる時に味わう、あの高揚感と似ていた。

フォレストピア七里の森のコテージには、エアコンがあり、キレイなトイレがあり(ウォシュレット付き)、シャワーも付いていた。部屋もキレイで2段ベッドがあって、1泊15,000円くらいで4人泊まれて(コテージ小の場合、シーズンによる)、寝袋やバーベキューなどの道具はレンタル可能。寝る時に床に敷くマットが部屋にあって、炊飯器も電子レンジも冷蔵庫も備わっていた。これは快適、山にいながら街の暮らしができてしまう。アウトドア初心者にもってこいのプランである。

15時にチェックインして、部屋に荷物を置くなり早速バーベキューの準備にとりかかる。バーベキューは数々やってきたが、私はいつも人任せでもっぱら食べる係りであったから、火を起こすのに手こずってしまう。火が木炭に定着しない。じりじりと赤くはなっても、燃え上がるほどではない。されど、買ってきた牛肉は既に鉄板の上である。

「お肉焼けないんじゃない?」とツレのM子さんも不安顔だ。

そこで城里町の高萩さんとやった焚火を思い出す。あの時はたしか、火元に向かって団扇で仰いだり口でふうふうと息を吹きかけたりして、空気を送り込んでいたな……。その通りやってみたら、炭についた火の勢いが増した。

このチャンスを逃してはならんと、火種の周りに小さな木炭をくべて、大きな木炭をその近くにそえて、火種を絶やさぬようにとあれこれしてみると、ジューという肉の焼ける音が聞こえてくる。今だ今だと次々と肉を焼き、焼いてはその場で食べ焼いては食べを繰り返す。息子Uと私で火の当番、息子Kが肉を並べ、M子さんは焼けた肉を皿に載せて焼肉のタレで味をつけ、私たちの口の中にほいほいと肉を運んだ。

座ってのんびり食べるなんてできやしない。正月の山の夜だから、火の回りにいないと寒くて仕方ない。
初心者の私たちは焚火を用意するなんて気の利いたことができる訳もなく、バーベキューの火の周り集まって寒い寒いといいながら火に木炭をくべて息を吹きかけ、次々と肉を並べて次々に口に運ぶ……というだいぶ慌ただしい食事をすることになった。

違う、だいぶ違う。イメージしていたバーベキューと違う!予定ではのんびり肉を焼いて、焼きあがったものから皿に載せて椅子に腰かけのんびりとした野外の食事を楽しむはずだったのに。

イメージとは違うが、このような忙しないバーベキューも家族皆での共同作業といった感じでなかなか面白くもあり、子どもたちも楽しんでいたので、まぁよしとするか(するしかない)。

忙しないバーベキューを終えて、後片付けをしてコテージへ戻る。シャワーを浴びて着替えると、もうやることがない。子どもたちはここへ来てもゲーム三昧(おいおい)だが、私たちオトナどもはテレビもないし本も持ってきていないから手持無沙汰になってしまう。やることがないなら散歩にでも行こうと思い、皆を連れ出してコテージから受付の小屋までの短い距離を歩いてくることにした。

再び外へ出ると、キンと冷えていた。エアコンで温まった身体が、一気に冷める。寒い寒いと身を寄せ合う。ふと遠くを眺めると、山のシルエットがでんと構えている。城里町付近に大きな山はないのだけれど、その黒い山々はとても大きく偉大に見えて圧倒された。

コテージに帰ると寝袋に入って寝ることにした。身体は冷えたが、エアコンもあるしヒーターもある。エアコンの設定温度が最初は30℃になっていて、さすがに暑いから24度くらいに下げたのだが、深夜になって30℃になっていた理由がわかる。

山の夜はとても冷えるのだ。あまりの寒さに起きてしまい、設定を30℃に戻した。朝起きると「寒かった」と皆が口をそろえて言った。

軽く朝食を食べると、私は一人で炭の片付けをするのに外へ出た。ついでに、施設内を軽く歩く。冬の、しかも正月の朝のキャンプ場内は静まり返っている。木立の中に一つ二つのテントが張られていたが、他は皆コテージかキャビンに泊まっていたようだった(やっぱり寒いからだろうな)。

昨晩に眺めた山を、朝になってまた眺める。稜線がはっきりとしていて、空との境界がくっきりとしている。夜の山は黒くて威圧感すらあったが、朝に見ると優しい感じがした。こうした何気ない自然の風景に、私はとても感動してしまう。

時折、冷たい風がふぅっと吹く。ハラハラと粉雪のようなものが宙を舞う。今、空を舞う、粉雪を溶かすように。「冬のファンタジー」を思わず口ずさむ。何ともロマンティックに思えるが、風に舞っていたのは私が持ってきた灰だった。

帰りの車中で、M子さんに「どうだった?」と尋ねた。「うーん、震えた」とM子さんは言う。「感動して心震えたの?」と聞くと「いやいや、寒さで身体が震えました」。

確かに夜は寒かったけれど。その震えの半分は、感動から来ているのだよ、きっと。

 

 

フォレストピア七里の森の受付小屋

宿泊したコテージ(小)

私たちのバーベキュー場

手前が共同の炊事場、奥が共同のBBQハウス

カラフルなケビン

肉を焼く

レンコンも焼く。正月だし、茨城だし!

夜の散歩

朝の山