【茨城・アウトドア】御前山~大洗水族館カヤック50キロツーリング「沈」道中記(前編)

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人生初の「沈」を晩秋の那珂川で体験する那珂川ロング・ツーリング記(前編)

 

ストームフィールドガイド[Storm Field Guide]那珂川 – 茨城 那珂川 御前山 カヌー・カヤック&フィールド・ネイチャーツアー&アウトドアアクティビティのストームフィールドガイド[Storm Field Guide]※會說中文(北京話)的導遊在。需要中文導遊,麻煩預約時確認一下。 中国語の出来るスタッフが常駐しております。中国語でのガイドが必要な場合、予約時に、確認願います。

晩秋の「沈」事

2019年11月…の最終日。朝も早くから御前山に向かって車を走らせた。晩秋の朝から一体何事かって? カヤックですよ、川を下るんですよ、ということで、茨城県常陸大宮市にあるストームフィールドガイドさんでカヤック遊びを楽しむのが目的だ。

カヤックはいいけれど、何も冬直前のこんな時期にやるなんて。そんなことは百も承知だが、大恩のあるO澤親分に誘われたのだから行くしかない。カヤックに乗るのは今年8月以来で、今までにも何度か乗ったことがある。7年くらい前に仕事の取材で初めて乗って、それ以来は年に一度遊ぶかどうかのペースで、カヤックで那珂川下りを楽しんできた。

でも今まで乗ったのは全て初心者向けのコース。今回は御前山から大洗水族館までの約50キロをカヤックで下るというから、今までよりもぐっと難易度が上がる訳である。O澤親分に誘われたとはいえ、何故OKを出したのかは今の私ですらわからない。同行者の某ラーメン屋主人のO澤親分は、以前にこのコースにチャレンジして3回の「沈(ちん:転覆の意)」を味わったという。これはこれは恐ろしや。「沈」をしたということは、真冬直前の那珂川の中に身体まるごとドブン!と入るということである。え、それって死ぬんじゃない? と思ったが、O澤親分は今日も元気にラーメンを作っているから、そんなことはないのだと思う……が、やはり、怖い。

不安になって、前日にストームフィールドガイドの山本さんに電話してみる。

すると、「よく申し込みましたね」と山本さん。これまで何度か私のカヤックスキルと運動神経を目にしている山本さんからの言葉に、ひょっとしたら場違いなものに申し込んだのでは?と不安がよりいっそう大きくなった。

さて、不安を抱えながらも朝7時に御前山の「赤い橋」に到着する。紅葉した御前山は朝もやにかすみ、那珂川は温泉のように湯気を上げている。このロング・ツーリングの参加者は私を含めて7人。O澤親分はマグナム先生というマッチョなナイスガイを連れて先に到着していた。最近カヌーのインストラクターの資格を取ったというO澤親分の出で立ちは、如何にもこれからカヤックに乗ります、乗り慣れてますといった風である。マッチョなマグナム先生は暖かそうな格好をしているが、カヌーっぽくない。私もどちらかというと、川というより山に登るような服装である。他の参加者を見てみると、皆ベテランっぽい装備を身に付けている。やはり、場違いか? 装備の違いに、不安は増すばかり。だが、ここまで来て引き下がるわけにはいかない。これでも、屋久島の縄文杉トレッキングや日光男体山など、苦行のような山登りに耐え抜いた私であるから、やってできないことはなかろう。

そのような私の不安定な心境は、行動にも表れてしまう。いざ出発、さあカヤックに乗り込もうという段階で、行動食と水分を忘れたことに気付く。慌てて取りに戻るが、いきなりの失態で時間をロスし、迷惑をかけてしまう。先行き不安なスタートになったが、カヤックに乗り込んでしまえば今までの不安はどこへやら。川面に浮かんで眺める景色は、他では味わえない独特のものに映り、気分をリラックスさせてくれた。

「いやぁ、気持ちいいっすねー!」

気分爽快。そういえば、今まで乗ってきたカヤックでは瀬(流れの急な場所)以外は穏やかな気分で漕いでいたっけ。今回も漕ぐ距離は長いだけで、激しい流れの場所はないのでは? O澤親分は沈したというけれど、それは数年前のことだしその頃はあまりカヤックに乗り慣れてなかったのでは? などと楽観的に思い始め、先ほどまでの不安はどこへやら。けれど、すかさず参加者のベテラン・カヤック乗りさんに釘を刺される。

「あと数時間後にはそんなこと言ってられないかもですよー」

数時間……。そうか、ゴール到着予定時間は16時ごろと言っていたから、8時間くらいはカヤックを漕ぎ続けることになるのか。それはそれで、辛いかも。

漕ぎ出して少しすると、小さな瀬がやってくる。「やってくる」というと、向こうからこちらへ進行してくることになって、実際はこちらから向かって行っているのだから逆の表現になるのだが、漕いでいるとあちらからこちらへ向かってくるように思えるし、実際にそう見える。恐怖の対象には、向かって行くというよりも、あちらからやってくるという心象が働くのか。

瀬は今まで経験したコースでも何度もあった。ざぶんざぶんと小さな波がそこら中に立ち、私たちの行く手を阻む。スリルがあって面白いという人もいれば、怖いという人もいる。ジェットコースターに乗れない私は、いわずもがな後者である。最初の瀬を何とか乗り切る。いつもより、バランスを崩してしまいがちで危ない場面があった。この瀬は今までも越えてきたレベルと同等くらいだったのに。嫌な予感。

それからまた少しして。山本さん、川の上で立ち止まって私たちに注意を促す。

「これから3つの難所があります、まず一つ目がこの先に。100メートルくらいの瀬があります」

100メートルとは、長いのか、短いのか。100メートルと聞いて、この時は何となく「長い」と感じた。そして、予備知識のなしで今回のツーリングに挑んだ私は、この先にあるという3つの難所の存在をこの時初めて知らされ(やはり、穏やかなままでは済まなそうだな)と不安が再びよみがえるのであった。しかし、不安でも気楽でも、もう後戻りはできない。このままその「難所」とやらに突っ込むしかない。意を決して皆の後に続く。先に行く人と同じコースを辿り、同じように漕いでいれば「沈」することもあるまい。

おおお、おおお、と波に揺られる度に声を上げつつ、難所1をなんとかクリア。さあて、一息つけると思いきや、すぐに次の難所がやってきた。

次の難所の前に着くと、山本さんが再び皆を呼び止め、注意を促した。

「この先に二つ目の難所があります。難しいコースと比較的易しいコースがあるのですが、難しいコースでは大抵何人かが沈します。難しいコースを進みたい人は私について来てください。いらっしゃいますか?」

マグナム先生が「難しいコースに行きなよ」と私をそそのかす。私の「沈」に期待しているのだろうが、そうはいかない。今朝の常陸大宮市の気温は氷点下3度。そんな中、冷たい水の中に飛び込むリスクを誰が好んで高めようか(ツーリングに来ている時点でリスクは爆上がりだけれども)。

しーん。

山本さんの問いかけに挙手した人、0名。ベテラン・カヤック乗りたちが嫌がるのに、初心者の私が行くわけがない。というわけで、みんな揃って易しいコースを漕ぐことになる。寒いですからね、沈したくないですよね、わかります。

しかし、この易しいコースが一つも易しくない。もとい、優しくもない。先程よりも激しい瀬。荒々しい波が私のカヤックにぶつかってくる。うわ、うわ、とその度に声を上げながら、どうにかこうにか下っていく。そこに来て、高低差のある段差がやってくる。これは、もはや、滝である(大げさ)。うわー!と叫びながら、その段差を下りて、難なく…ではなく、何とか着水。これはもうあれだ、某有名遊園地なんかにあるスプラッシュ何ちゃらとか、その域だ。規模は小さいけれど、こちらはリアルスプラッシュだから安定性と安全性が確保されていない。一つ間違えれば、冷たい川に投げ出されるのだから、スリルでいったらカヤックが数倍上である。

ほんとに、もう!こんなのに誘うなよ!O澤!と誘いに乗った自分ではなく、誘ったO澤親分を責める女々しい私である。そして、リアルスプラッシュをクリアしたと思った瞬間である。

晩秋の「珍事」ならぬ「沈事」が起きた。

段差を下ると横からの流れ。この流れにバランスを崩し、私の乗るカヤックは横転した。当然、私は川の中にドボン!

沈(ちーん)。

やってしまった!と思うやいなや、冷たい川の水にすっぽりと身体全体が、頭までまるごとすっぽり覆われる。

つ、冷たい、溺れる、し、死ぬ!なんていう、こんな時に咄嗟に思い浮かびそうな言葉すら浮かんでこず。
実際には、○×△☆□※…! 要するに、言葉として感情を表現することすらできない状態である。

言葉は思い浮かばずとも、身体は自然と浮かんできた。ライフジャケットなるものを身に付けた私の身体は、すぐさま水の上に強制的に戻されたのである。

ぶはぁと水面から頭を出すと、あぷっあぷっ!としか言えない。あぷっあぷっ!突然の出来事で、頭の中はパニックだし、いきなり冷たい水の中に入った身体もびっくりしたのだろう。助けて!と大声で叫びたいくらいだが、あぷっとしか声が出ないのである。ジタバタともがいているうちに、ライフジャケットのおかげで放っておいても体勢が立ち直る。そのまま立ち泳ぎの状態になって、心も少し落ち着きを取り戻すと同行者のマグナム先生の姿が見えた。マグナム先生はからかい上手であるから、ここで慌てふためいていては後々笑い者にされてしまう。冷静に対応せねば!

ああ、そういえば。

ここで、幾度となく受けて来たカヤックの初心者講習で教わったことが思い出される。

「沈したら慌てずに浮かんでてください。暴れてしまうと助けられないので」

それを思い出した私は、流れに身を任せてプカプカと浮かぶことにした。沈してから時間が経つと、身体も川の水の温度に慣れてそれほど冷たくなくなる。いや、むしろ心地よいくらいである(言い過ぎか)。そのまま背泳ぎの体勢になり、バタ足しながら空を見上げると、澄みきった秋の空が広がっている。

ああ、なんてきれいなんだろう、なんてノンビリ構えていたら、山本さんが大丈夫ですかと手ではなく、パドルを差し伸べてくれた。「捕まってください」と言われて、山本さんのカヤックの後部先端に捕まり、足の届くところまで引っ張ってもらう。

(助かった!)

陸に上がると安堵とともに笑いがこみ上げてくる。あははは!なんて豪快に笑えれば、こいつ大物だなんて思われそうだが、寒さでがたがたと身体が震えるものだから、ちゃんと笑うことすら困難である。その後は、濡れた衣服をとりあえず脱いで、救助のスタッフが到着するのを川岸で待つことになった。

季節は晩秋というか、初冬。時刻は朝8時くらいだろうか。そんな中、ほぼ全裸になって(履いていたのはカヌー用のスパッツのみ)ずぶ濡れになって外にいる私を、一般の人が見たら奇人変人の類にしか見えないだろう。ガタガタ、ブルブル。当然、猛烈に寒い。山本さんらスタッフの方やベテランのカヤック乗りの方々が、優しい声や暖かい衣服や温かい飲み物をくださって、平常心に…と思いきや、一部から笑い声が。主は当然、O澤親分とマグナム先生である。

「江頭だ!江頭!」

上半身は裸、下はタイツ。短髪に富士額、ギョロっとした目。

しかも、最近少し痩せたものだから、なるほど、江頭かもしれん。笑い声の意味に妙に納得しつつも、寒くてそれどころではない。O澤親分からタバコを頂戴し(持ってきていた自分のタバコはずぶ濡れに)ガタガタ震える手で吸っていると、今度は違う意味を含んだ笑い声が。

「タバコじゃない、やばいものを吸ってるみたいだ!」

えーい、もう何とでも言ってくれ! 嘲笑するなら暖をくれ!

「沈」した後の「沈静化」にはしばしの時間が必要だった。

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