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君は宇宙を感じたことがあるか@つくば市・JAXA筑波宇宙センター

コト
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JAXA筑波宇宙センターと宇宙食に、はしゃぎ過ぎた夏(2025/8/11)

2025年8月。お盆休み。

40代半ばのおじさんは、宇宙兄弟を読みふけり、宇宙を夢見て宇宙に恋をした(伊藤せりかさんにも恋をした)。挙句に、宇宙にまったく興味を示さない家族を無理矢理連れ出して、茨城県つくば市にあるJAXA筑波宇宙センターに出かけた。

おじさんは、筑波宇宙センターには以前に一度来たことがあった。そこのスペースドームという展示室内にはISS「きぼう」の模型やら、人工衛星の模型やらが展示されていて、にわか宇宙好きのおじさんをおおいに興奮させたものだった。ここに来れば、宇宙への興味ゼロの家族だって、はしゃいでしまうに違いない。そう、踏んでいた。

「おお、すごい! ISSだ! はやぶさ2だ! これを見て!」

スペースドームではしゃいだのは、家族ではなくおじさんだった。宇宙兄弟を読んだばかりだったおじさんは、スペースドームのすべてに感動した。おじさんは、ISSとはやぶさとH2ロケットくらいしか知らなかったが、それでもそのスケールに圧倒され、その溢れるロマンに魅了された。

宇宙に関する巨大模型が、ドーム内いっぱいに押し詰めてあって、おじさんにとってそれは夢と浪漫が詰まった宝箱のようなものに見えたのであった。

「ここ見よう、次はあそこ見よう」と妻の手を引いて歩いたが、その後も家族はまったく展示物に興味を示さなかった。それでも、おじさんはそんなことは意に介さず、スペースドームを堪能した。

「好きな人にとっては、すごく楽しんだろうねぇ」

妻は冷めた感じでそう言った。

その反応に、おじさんは落胆した。

宇宙に興味がない妻や子どもたちでも、この場所に来れば興味を持ってくれると思ったのに!

いや、でもまだある。次の場所に行けばきっと。おじさんは期待を込めて、プラネットキューブに向かった。

JAXA筑波宇宙センター内にある「プラネットキューブ」には、宇宙関連のグッズが購入できる「UNiBO(ユニボ)」がある。ここではJAXAやNASAのロゴマークが入ったTシャツやタオルやバッグ、宇宙飛行士のキーホルダー、下敷き、クリアケース、ボールペンなどを買うことができる。宇宙兄弟のグッズも売っていて、どれもこれも、他ではなかなか手に入らないJAXAならではのグッズばかりで、宇宙ファンや宇宙兄弟ファンにとってはたまらない店だ。

しかし、宇宙に興味がない家族がJAXAやらNASAやら宇宙兄弟のグッズに興味を持つわけがないのは明白。おじさんが「これならば、うちの家族もきっと」と期待を込めたのが「宇宙食」だった。

宇宙食。それは、無限に広がる宇宙の中に浮かぶ、重力の働かない船の中で過ごす人々が食べるものである。
プラネットキューブ内のUNiBOには、宇宙食が売られているのだ。

銀色のパッケージに中身がちょこんと少量だけ入っているのが、いかにも宇宙食っぽい(宇宙食って、コンパクトサイズになっているイメージ)。真空パックになっているのも、いかにも宇宙食。アイスが常温なのも、宇宙食だからか? 宇宙食ならではなのか? と思わせる。

宇宙兄弟の中でもおいしそうに宇宙食を食べるシーンが何度も描かれていたっけ。おじさんはそのシーンを思い浮かべながら、宇宙食が並ぶ棚を眺めた。

「宇宙食? なにそれ、食べてみたい」

この宇宙食に、家族の中で唯一長男が興味を示してくれた。食いしん坊の長男は、食べられるものならば何でも一度は食べてみたいと思うタチだった。家族の一人が宇宙に興味を持ってくれた(正しくは宇宙食に)ことに、おじさんはとても嬉しくなった。

「どれがいい? 何でも買ってあげるよ」と財布の紐を思い切り緩めた。

そうして、宇宙食のたこやき、いちごアイス、カレー、チョコレートパン、グミ、ようかん(私の好物)を購入した。

他に、JAXAの手ぬぐい、宇宙兄弟のクリアケースを購入し、宇宙グッズが当たるガチャガチャを一回だけやって、筑波宇宙センターをあとにした。おじさんはとても幸せな気持ちになった。長男以外の家族は「やっと解放される」と、幸せそうだった。おじさんは、結果的にみんなが幸せならばそれでいいような気がした。

それから、数日後。

おじさんは家族と宇宙食の試食会を開催した。

まずはチョコレートパン。「宇宙のパン」と書かれた缶詰に入っていて、なかなかオシャレだ。フタを開けると袋が入っていて、その中にパンが詰め込まれている。

「どう?」

おじさんが妻と長男に感想を聞く(次男は参加棄権)。

長男「何とも言えない」

妻「パンだね」

おじさんも、似たような感想だった。普通のパンを食べている感じで、特別な宇宙食のパンを食べている感じにはならなかった。それが果たしていいことなのか、悪いことなのか。地球で日常的に食べているパンを、宇宙でも食べられることは、とてもすごいことなのかもしれないのだが、「宇宙食」という夢のワードが期待値を膨らませすぎてしまい、味のハードルを上げてしまっているのかもしれない。

次は、たこやき。

長男「カタイ。タコがカタイ」

妻「カタイね。たこやきというか、たこやきのお菓子だね」

おじさんも同じ感想だった。

続いて、いちごアイス。

長男「おいしくない」

妻「(一口食べて)もういらない。何か口直しするものない?」

そう言って、二人は部屋を出ていった。

おじさんは、二人が残した分のいちごアイスも食べた。

確かに、おいしくはない。それに、なぜにこれが「アイス」なのかわからない。冷えてもいないし凍ってもいない。普通のスナック菓子のような形状に食感。見た目も温度帯も味も、どこをどうとっても私たちが普段食べている「アイス」ではない。

とても不可解で、不条理だとおじさんは思いながら、残ったようかんとグミを頬張る。こちらは地球で日常的に食べているそれらと何ら変わらないものだった。グミは歯ごたえがあるし、ようかんは甘くてべたべたする。
どちらも、グミらしく、ようかんらしくあった。

先に食べた宇宙のパンも、パンらしい形と味であった。たこやきは、たこやきらしい味ではなかったが、たこやきらしい形状をしていて、たこやきのお菓子のような味はした。

でも、このいちごアイスだけは違う。不思議である。不可解である。

少し考えて、おじさんは(そうか)と独り納得する。

(この不思議さや不可解さこそ、宇宙そのものではないか。すなわち、いちごアイスこそ宇宙食の中の宇宙食なのかもしれない!)

おじさんは、いちごアイスに宇宙を感じた。そして、納得できないことに納得した。

 

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