大子を歩く~水郡線を一区間(袋田~常陸大子)散歩~【水郡線駅舎アートコンペティション】

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駅舎アートコンペを見物がてら、大子の道と街を歩いてきた(2021/8/22)

水郡線を「一駅歩く」

大子町・久慈川と奥久慈の山

「今日は一駅歩こうかな」なんて、東京に住んでいた頃は鉄道の一区間を歩いたものだ。いつもと違う景色が見られて、気分転換にちょうどいい。けれどもそれは、都会だから、鉄道が発達しているから、一区間の距離が短いから気軽にできるというもので、こと田舎になると「あり得ない」行動である。

例えば東京山手線内の場合、一区間の距離が一番短いものでわずか500m(日暮里~西日暮里)、一番長くても2.2㎞(田町~品川)である。これが、常磐線になると、水戸駅~赤塚駅で6㎞。約3倍~10倍以上も違う。ちなみに日本最長の駅間距離は、奥津軽いまべつ駅(青森県)と木古内駅(北海道)間の74.8㎞だとか。

茨城県に長年住んでいるが、この「一駅歩く」という行為はほとんどやったことがない。私の記憶が確かならば、まったくやったことがないかと思う。山に登れば5㎞や6㎞はちょちょいのちょい距離だし、千波湖2周の距離だからそんなに遠くもないのだが、茨城において「一駅歩く」は何故だかまったくやる気がしない。

だが先日、茨城県に住んでおそらく初めて、この「一駅歩く」をやってきた。

コロナが過去最大に猛威を振るっている2021年8月。茨城県では、県独自の非常事態宣言に加え、国の緊急事態宣言が発令され、飲食店は20時までの営業、海水浴場は駐車場閉鎖、水族館も開いてなければ動物園も開いていない、という状況である。加えて今夏は天気の悪い日が多く、しかも土日に雨が降る、というのが続いていて悪循環極まりない。

ようやく、日曜に雨の降らない日がやってきて、ならば少しはおでかけしよう、そうしよう、ということになって、でも先述したような状況だからどこにも行けないようなもので、というかそのせいで夏休みもろくに出かけてないものだから余計に出かけたい気持ちが強く、どこかないかと探していたら偶然訪れた道の駅で一枚のチラシを見つけ、それには「水郡線駅舎アートコンペティション」と書かれていて、その内容はというと2019年の台風19号による被害で一部不通になっていた水郡線が今春に再開したことを祝してJRとavexと大子町がコラボして水郡線の3駅舎(上小川・袋田・常陸大子)にアーティストの作品を展示して、なおかつスタンプラリーをして景品差し上げますよ、という内容で、これならば密になることもあるまいし、何よりも面白そうだと思い、参加してみようと思い行ってみた。

 

袋田駅のアート作品。

上小川駅、袋田駅は車で移動したが、袋田駅に到着してスタンプを押してアート作品を見てベンチに座って小さな袋田の滝を眺めながら、ふと思う。

「常陸大子駅まで歩こうか」

こうして、水郡線袋田駅から常陸大子駅までの散歩が始まった。

 

袋田駅から歩いて、国道118号まで出たのだが、ここまでの道がなかなか風情があって良い。どこにでもある田舎風景なのだが、近くに久慈川が流れていて、セミの声がうるさくて、ちょこちょこと民家があって、そこから住人がひょっこり顔を出していて、こんにちは、と挨拶をすると、向こうもこんにちは、と返してくれた。私が住む水戸から遠く離れているとはいえ、同じ茨城県内であるのに、大子に来ると旅情を催す。それだけ、日常とは世界が違うのだろう。

国道118号線を歩く。

国道118号まで出ると、あとは国道沿いにひたすら歩いた。車通りはそこそこあって、先ほどまでの道とはだいぶ違う印象である。風情のようなものはない。だが、久慈川の流れは清らかだし、あたりには奥久慈の山々が連なっているのが見える。あれは生瀬富士かな? と適当に山座同定を済ませる。見た目でわかるのは、長福山と男体山くらいか。

ぐんぐん国道を歩いていると、時折日差しが出てきて、暑さを感じ、汗をかき、夏を感じる。夏に大子の国道を歩いて夏を感じるなんて。ちょっと夏らしくない夏である。

やがて、大子の道の駅の手前で曲がる。国道を歩くのに飽きたから、違う道を選んでみる。久慈川沿いを歩いて、常陸大子の駅を目指すことにした。

久慈川

久慈川の川べりまで下りて、水をちゃぷちゃぷして涼をとる。水がとてもきれいだ。少し離れた場所では、アユ釣りをしている人たちがいる。胴付長靴を履いて(着て?)、川の中ほどまで行って釣りをしている。
その姿、とても優雅なり。久慈川沿いを歩いていると、私たちと同じように散歩をしている人が何人かいた。若者の姿もあった。駅舎アートのスタンプラリーをしているのかもしれない、と思うと少し焦りを感じる。何故って? スタンプラリーでもらえるオリジナルマスクは先着300名というから、もし先を越されて私たちのマスクがなくなったらどうしよう!と思った訳だ。

川沿いを歩き終えて、少し街中に入る。空き家があったので「住みたいなぁ」なんて言うとツレに「嫌」と即答された。もう少し歳をとれば、この気持ちわかってもらえるのか、そうでもないのか。

常陸大子駅のアート作品

そうして、常陸大子の駅に着いた。近くにはSLが停まっている。駅舎に入り、天井のアート作品を眺め、写真を撮る。川のようであり、星空のようであり、山々のようであるその作品を見て、アートについてまるで知識も感性も持たない私でも、何だか素敵なものを見た、くらいには思った。

これにて、4.7㎞の散歩が完了。水郡線を「一駅歩く」ことができた。

常陸大子駅周辺を歩く

常陸大子駅前の商店街入り口

一駅歩いた後は、一息つきたいというもので。
常陸大子駅周辺を引き続き散策した。

常陸大子駅には駅前商店街が二つの通りにある。そこをぐるりとすると約1㎞。一息つくためのお店を探しに、また歩きだした。

駅前にある大子商店。大子のいいものがたくさん売られている。

やはり、シャッターが閉まっているお店が多い。だが、シャッター街というと過言である。まばらではあるが、空いているお店もちょこちょこある。お店はあるが、飲食店が少ないのが難点か。車がすれ違うのがやっとくらいの広さで、車自体の通りは少なくて、歩いて見て回るように設計された商店街である。このような昔ながらの商店街を見て回るのは、新鮮さすら感じる。大子のようなこじんまりとした街の商店街の風景というのは、茨城では意外と少ない。水戸駅や勝田駅前は通りが大きすぎてそれらしくない。土浦駅も日立駅も同様。

daigo cafe。

daigo cafeに入ろうとしたが、只今満席と店先に表示されていて断念。そこからもう少し歩くと、植物が店先に並ぶお店があって、看板を見ると「ファッションシューズ」と書いてある。花屋ではなく、靴屋らしい。

話が逸れるが、この駅舎アートコンペのスタンプラリーは2段構えになっていて。一つは駅舎を三つ周ると先着でマスクがもらえるもの。もう一つは、駅周辺の指定のお店でスタンプを更に3つ集めると、抽選で「大子町のいいもの」が当たるというもの。

閑話休題。その「大子町のいいもの」スタンプの指定店にこの花屋のような靴屋はなっていて、そのスタンプも集めていたから店の中に入ってみた。すると、高齢のおばあちゃんが出てきた。年齢を聞くと90歳を超えているというのだが、まったくそうは見えない。しっかりと歩いているし、受け答えもしっかりしている。10や20は若く見えると言っても……過言ではない。

スタンプをしっかりとゲットした後、スタンプだけ押して店を出るのは何だか間違っている気がして、その靴屋で何か買えるものはないかと探す。靴はちょっと高額だから、もうちょっと値段的に抑えられたものがいい、と思い店内を眺めていると、この靴屋、植物も売っている。ちょうどいいと思い、植物を買うことに決めた。植物を選んでいると、男性が店に入ってきた。どうやらお店の人のようで、おばあちゃんの息子さんだろうか。せっかく大子に来たのもあるし、地元の人との交流は旅の醍醐味のひとつである。ちょっとお話してみたいと思い、話しかけてみることにした。

大子の商店街に来てから、ちょっと気がかりなことがあった。

大子町の人口は1万5千人ほど。町の面積を考えると、かなり少ない。それなのに、駅前の商店街は二つの通りにある。昔はそれだけにぎわっていたということか。後程調べてみてわかったが、大子町の人口は昭和45年には人口4万4000人もいたという。今はその約1/3だ。近年の人口減少数は、県内で1番。さらに、65歳以上の割合は47.7%(令和3年)、15歳未満はわずか7.5%だから、超高齢化も進んでいる。

店主にそのことを聞いてみると、

「昔は今ほど車社会じゃなくて、水郡線が開通したころはこの町も賑やかだったんですよ」

人々の交通手段が変わったことで、町が変わってしまったようだ。

「それでもね」

店主は続ける。

「今は、この町がいいと言ってくれる若い人たちもいて。大子でお店を開いたりしてるんですよ」

この靴屋にも、若者が間借りして何かやっているという。そういえば、商店街の中でもオシャレなお店がいくつかあった。先のdaigo cafeもその一つか。人口減少・少子高齢化という日本が抱える問題をこの町に来て直面し実感させられた。だが同時に、そうした問題に抗う人々の存在も感じることができた。

水郡線に乗る

水郡線

結局、一息つけないまま大子の商店街を一周してしまった。仕方なく駅まで戻ってきて、駅前にある蕎麦屋に入る。ここのお店のお姉さまがまた気さくな人で。蕎麦を食べ終わった後に、少しばかりおしゃべりをした。袋田の駅から歩いて来たというと、たいそう驚いていた。コロナ禍じゃなければ、袋田の駅まで送って行ってあげたのに、と言ってくれもした。

蕎麦屋で一息ついて、帰りのことを考えねばならない時がきた。袋田駅に車を置いてきたから、そこまで戻らねばならない。また歩いて帰るのはおっくうだ。では、水郡線に乗って帰るといっても、次の電車の時間まで1時間ほどある。袋田駅から常陸大子駅まで歩いて約1時間かかったから、歩きでも電車でも車に戻る時間はほぼ同じ。ツレは歩いてもいいと言うが、私が嫌である。せっかく水郡線のイベントに来たのだから、水郡線に乗ろう!ということになり、常陸大子の駅舎で電車が来るのを待った。

電車が来るのをただ「待つ」という時間を過ごす。何をする訳でもなく、ただ待つ。歩いていれば、少しも前に進めるがそうではない。駅舎のベンチに座り、1時間という時を待つだけである。一つ場所にこれだけの時間を、何もせずに待つというのも、これはこれで非日常。駅舎から見える山々を眺めながら、また駅舎に置いてあった旅行パンフレットを眺めながら、時を過ごした。

やがて、電車がやってきた。シルバーの車体に黄と青系の色が差し込まれていて、なかなかポップである。

ボックス席に2人で座り、私は靴を脱ぎ対面のシートに足を投げ出した。

水郡線駅舎アートコンペティション

水郡線と2019年の台風19号について

2019年10月、台風19号が猛威振るう。茨城県大子町では久慈川にかかる橋が流出するなどの被害を受けた。その影響で、水郡線は常陸大宮以北で運転を見合わせた。2020年7月。袋田―常陸大子の1駅間を除いて運転を再開。そして2021年3月27日、約1年5カ月ぶりに全線再開した。 

駅舎アートコンペティションについて(HPより抜粋)

東日本旅客鉄道株式会社とクリエイター・アーティストのエージェントを行うavex art agency project、そして大子町が協同し開催されたイベント。2019年の水害により被害を受けたJR水郡線とその駅舎を賑やかにし、人々の交流を促すアートを募集。その結果、選定された3名のアーティストによる作品が、常陸大子駅・袋田駅・上小川駅で展示される。

駅舎アートコンペティション・イベント概要(HPより抜粋)

水郡線・上小川駅

水郡線・袋田駅

水郡線・常陸大子駅

水郡線の常陸大子駅、袋田駅、上小川駅の3駅に設置してあるスタンプを全て集めると、第1弾と第2弾の各期間それぞれ先着300名に、アーティストがデザインしたオリジナルマスク(全3種)がもらえる。
さらに、駅周辺のスタンプ設置店舗のスタンプを3つ集めて応募すると、抽選でペア宿泊券や季節の特産品などの「大子町のいいもの」が総勢50名に当たる。

水郡線駅舎アートコンペティションのスタンプ。かわいい。

第1弾 2021年7月3日(土曜日)から9月30日(木曜日)まで
第2弾 2021年10月1日(金曜日)から12月19日(日曜日)まで
景品 オリジナルマスク 各期間 先着300名
   ※全3デザインの中からランダムで1種類。第1弾と第2弾でマスクの色は変わります。

   大子町のいいもの 各期間 抽選25名 ※ペア宿泊券や季節の特産品などを予定。

オリジナルマスク。既に2種類しかなかった…。

スタンプ設置駅 常陸大子駅、袋田駅、上小川駅

オリジナルマスク引換所 常陸大子駅窓口 (午前9時30分から午後4時まで)上小川駅窓口 (午前9時から午後4時まで)

スタンプ設置店舗でもらえたステッカー。

抽選スタンプ設置店舗
【常陸大子駅周辺】 久慈屋、山田文具店、こいずみ、サンロ-ラン、サイトウ、一日カフェゆらぎ、咲くカフェ、memeguru、daigo cafe、吉見屋、小﨑陶器店、魚作、大子商店、大子ドレメ美術館
【袋田駅周辺】 菊池商店、椎名酒店
【上小川駅周辺】 竹内商店、砂川商店、渡辺酒店
※店舗の詳細は各駅に設置しているスタンプ台紙をご覧ください。

参加方法
【オリジナルマスク】 作品が展示されている3つの駅(常陸大子駅、袋田駅、上小川駅)で、専用台紙にスタンプを集めます。常陸大子駅か上小川駅の窓口で交換印をもらい、マスクを受け取ります。
【大子町のいいもの】 駅周辺のスタンプ設置店舗で、専用台紙に3店舗分のスタンプを集めます。オリジナルマスクの景品交換印が押してあることを確認し、必要事項を記入します。応募用紙部分を点線に沿って切り取って、作品が展示されている3つの駅(常陸大子駅、袋田駅、上小川駅)にある応募箱に入れます。抽選の結果は、景品の発送をもって代えさせていただきます。

その他  先着配布の景品が終了した場合はご了承ください。
     スタンプ台紙は期間中通して使用できます。
     抽選スタンプラリーには3駅のスタンプと景品交換印が必要です。