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第10回 古内茶 庭先カフェ

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2025年6月8日、茨城県東茨城郡城里町の古内地区で「第10回 古内茶庭先カフェ」が開催された。

水戸黄門こと徳川光圀公が栽培を広めたと言われている、茨城県3大銘茶のひとつ「古内茶」。「古内茶庭先カフェ」は、その古内茶の産地、茨城県東茨城郡城里町の上古内地区・下古内地区のお茶農家の庭先で、お茶を飲んでマッタリしたり、出店であれこれと食べたり、いろいろな体験をしたり、辺りを散歩したりするという、何とも長閑なイベントである。

イベントの目的は、古内茶の産地振興と地域活性化。2018年11月25日にプレイベントを実施した後、翌年の2019年6月2日に第1回古内茶庭先カフェがスタートし、初夏(6月上旬)と晩秋(11月中旬~下旬)の年に2回開催されている。

6月開催時の庭先カフェは、新茶の時期にあわせて開催しており、出店しているお茶農家では新茶の試飲や販売が行われている。2025年6月の会場は14か所。お茶農家の庭先、民家(宮司)の庭先、古民家の庭先&飲食店などが会場となった。

また、水戸葵社中「縁団☆水戸黄門」が扮した水戸黄門御一行と一緒にウォーキングルートを歩く「御老公とゆく!茶畑ウォークツアー」を初開催。お茶農家の高安園から古民家・島家住宅まで、チ茶畑とあぜ道を歩きながら、ルート上の会場を巡った。

第10回 古内茶庭先カフェの会場一覧

ふぉれすたーずりびんぐ … 米粉のシフォンケーキの販売
ご飯屋さん寧々 … としちゃん農園(野菜販売)、My World store(ハンドメイドアクセサリー販売)
高安園 … 野菜販売、茶もみ体験、GEN’s cafe(ソフトクリーム等の販売)
旧古内小学校跡 … 古内地区地域協議会(ほうじ茶作り体験) ※メイン駐車場約50台
加藤園 … LAX STORE(ホットドッグ等の販売)、時由地材&Kocchi(古物雑貨・古着・つまみ精工アクセサリーの販売)、風のとおり道(骨盤矯正・カイロプラクティック)
初梅園 … 米の販売、笠間茶屋(米粉ドーナツやカレーの販売)
いも山商店 … つぼ焼き芋の販売、染め物ワークショップ
時沢園 …山野草・野菜販売、昭和レトロ小物展示、ジェノヴァ(古内茶生パスタの販売)
大坪園 … 新米・野菜の試食販売、かまど調理のじゃがいも等の試食・販売、小物雑貨販売
鯉渕園 … M’s Tea Room(古内和紅茶アイスティーの販売)
鯉渕晴人宅 … まつぼっくり(手作り雑貨・布小物の販売)、お菓子処ひろせ(お菓子販売)
一茶園&しろさと紅茶らぼ … 緑茶・紅茶の試飲販売、オリジナル和紅茶ブレンド体験
島家住宅 … 古内茶・島家住宅くらぶ(ほうじ茶作り体験)、cafeいちごや(からあげ等の販売)、Calico(ハンドメイドアクセサリー販売)、8ten-ya(アフリカ布雑貨)、CLOVER inc.(巨大三輪車体験)、養蜂家長島哲也(茨城県産蜂蜜等の販売)、吟遊紙人(切り絵、折り紙、水引アクセサリー、缶バッチ作りワークショップ)、はにわくん(陶芸作品の展示販売)
パン教室Kuche … 天然酵母パン・焼き菓子・自家製ドリンク

主催:茨城県・城里町・古内地区地域協議会
後援:城里町 協力:城里町立常北小学校・茨城県立水戸桜ノ牧高等学校常北校

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古内の庭先1 島家住宅

私の10回目の庭先カフェは、「古内茶・島家住宅くらぶ」のお手伝いとして幕を開けた。

今までは「取材」と称して、適当な時間に来て、適当に会場を回って適当に話を聞いて写真を撮って、文章をブログに書いていた(この場合の適当は「ちょうどよい具合」の意味)。趣味でやってる範囲のことだったから気楽な面もあったけれど、今回はいわゆる「中の人」に近い立場になってしまったので(飛び入りだけれど)、そうもいかなくなってちゃんと「仕事」をこなした(つもり)。

仕事といっても、島家住宅に来た人に「ほうじ茶作り体験やってますよ!」と声をかけ、体験代の200円を徴収する、くらいのもので、他にやったことといえば、島家で採れた梅を販売したり、ボランティアの高校生がお昼休憩をする時に、代わりに体験コーナーに立ってほうじ茶作り体験のやり方をレクチャーしたり、隣のブースで陶器を販売していた小学生とおしゃべりしたり、たまに作品を売り込んであげたり、といったところで、これまで私が歩んできた人生で経験したことを生かせば、このあたりのことはお茶の子さいさい、のつもりだったのだが、いざやってみると案外うまくいかない。

思っていたほどに梅は売れなかったし、ほうじ茶作りのレクチャーもうまくいかなかった。「私の人生って何だったんだ」と少々ショックを受けた。

それでも、「中の人」ならではの来場者との交流は楽しいものだったし、他の出店者に絡むのも楽しかった。特に、試しに自分で作ってみたほうじ茶を飲みながら、島家住宅の縁側に座って来場者とお話をする時間は、シチュエーションも相まって特別な時間となった。

「常陸太田から来ました」というおじ様方がいた。

城里町からは離れた場所にある町で、わざわざこのイベントのために城里まで足を運んでくれたのか、と思うとうれしくなった。

「いい場所ですよね、ここ。自然がたくさん残っていて」

常陸太田のおじ様方がそう言うものだからちょっと驚く。

確かに、城里町は自然がたくさんあっていいところだと思うけれど、常陸太田は城里以上に自然が多く残っていて、素敵な街ではないか。鍋足山があるし、プラトー里美があるし、鯨が丘の街並は素敵だし。日本の田舎らしさが残っている、という点では、常陸太田市は城里町に引けを取らない、どころか勝っている気がするのだが。

そんな感じのことをおじ様に言うと、

「いや、常陸太田とはまた違った風情があってよいのですよ」と言う。

そんなものか、と思い、ほうじ茶をすすりながら島家の縁側から見える風景を眺める。鬱蒼と茂った緑の向こうに、県道があって、そこを車がひゅん、ひゅんと通っている。県道から少しだけ歩いたこの場所に、江戸時代に建てられた民家があって、令和の時代では「島家住宅」と呼ばれるその古民家の縁側に座って、地域で採れたお茶「古内茶」を飲む。

縁側から立ち上がって少し歩いて後ろを振り返り、島家を正面から眺めてみると、茅葺の屋根に古びた木材で建てられたその全容が見え、家屋の後方にはこれまた鬱蒼とした森がでんと構えていた。

何となく、ふらふらと島家の中に入ってみる。

現代の住宅にはない土間があって、竈があって、囲炉裏があって。タイルがところどころ剥がれた風呂釜があって。畳部屋には烈公・義公の肖像画が飾られていて、天井からぶら下がった裸電球からは、心もとないけれど温かみのある明かりを放っていた。

島家住宅の囲炉裏

島家住宅の竈

かつて、この家には人が住み、竈や囲炉裏や風呂を使い、生活を営んでいた。その痕跡をなぞるように、家の中を見つめた。

かつての住人も、今の私たちのように縁側に座って、お茶をすすりながら庭の梅の木を眺めていたかもしれない。いや、きっと眺めていたに違いない。

「今日はいい天気だね」「そうですわね」「おかーちゃん腹すいた」なんて感じに、一日一日をこの家とともに、家族とともに、風景とともに、大事に暮らしていたに違いない。当時の食事はどんなものだったろうか、子どもの遊びはどんなだったろうか、仕事は何をしていたのだろうか……そんな風に、遠い昔の島家住宅での出来事を妄想してみたら、おじ様の言う「風情」というものがわかったような、わからないような。

何だかよくわからない、ぼんやりとした輪郭を持つものが、風情なんだろう。

イベントの手伝いを終えて、他の庭先に行こうとした頃に、ちょうどイベント事務局の岩野さんが黄門さま御一行と一緒に島家へやってきた。岩野さんは法被を着て、忍と描かれたハチマキをして、もじゃもじゃのかつらをかぶり、古内茶・庭先カフェののぼりを持っていた。

「忍者の恰好に坂本龍馬のかつらをかぶって、古内茶生産組合の法被を着てみました。よくわからない格好になってしまいました」と岩野さん。

確かに何だかよくわからない。ならば、岩野さんの恰好もまた、風情のひとつなのかもしれない。

 

事務局の岩野さん

水戸黄門御一行

城里町の養蜂家・長島さんのはちみつ

巨大三輪車

桜ノ牧高校常北校のボランティアさん(めっちゃ優秀)

岩野さんの陶芸教室の生徒さんによる作品の展示販売

 

古内の庭先2 一茶園&しろさと紅茶らぼ

島家住宅を後にして、向かった先が一丸さんのいる一茶園。高齢化する古内茶生産組合の中で、唯一の若手生産者。現在は和紅茶の生産をしている。

一茶園入口

古内茶生産組合の一丸さん。

古内の庭先3 大坪園

毎度、かわいらしい自作の看板を掲げている大坪園。まさしく農家の庭先といった感じがとても良い感じ。ここではおいしいお茶の他にも、毎回お米や野菜の販売・試食を行っていて、お腹も満たせるところがうれしい。

大坪園入口

大坪園の様子

古内の庭先4 高安園

普段から独自にイベントを開催しているお茶農園兼お茶の販売店。今回の庭先カフェでは茶もみ体験を実施。高安さんは現・古内茶生産組合の組合長さん。

高安園の店舗

 

古内茶庭先カフェ 運営から開催を終えて

黄門様とゆく!ウォーキングツアー

岩野一弘さん(事務局、古内地区地域協議会・会長、陶芸家)

「黄門様とゆく!ウォーキングツアー」はウォーキングルートの利用促進や、各会場の駐車場不足の緩和と言った観点から企画したツアーです。黄門様御一行以外でも14名ほどの参加がありました。茶畑や田んぼに隣接したあぜ道や農道など自然豊かな古内の風景を感じながら気持ちよく歩く事が出来ました。長時間徒歩でご参加いただきましてありがとうございました。

順路は出発地の高安園からスタートし、ご飯屋さん寧々、いも山商店、時沢園、島家の順で巡る予定でしたが、少し予定を変更して時沢園の後、大坪園、鯉渕園(M’s tea room)、鯉渕晴人宅(鹿島神社)にも立ち寄った関係上、各会場滞在時間も含めると全体で2時間半程の行程となりましたが、各茶園さんを含めて色々な会場をご案内出来て良かったです。

庭先カフェは大きな駐車場が少ない事もあり、年々ウォーキングルートを使用する人が増えています。今回の開催では、駐車場が全くない「いも山商店」でも150名程の来場があり、歩いて庭先を巡る人が多いことがわかります。

ご飯屋さん寧々さんのすぐ右のウォーキングルート入口から島家まで徒歩で直行する場合は、健康な大人の方であれば30分もあれば着きます。今後、庭先カフェにご来場いただく場合は是非徒歩での周遊もご検討いただければ幸いです。

今回は駐車場不足で一部の方にはご不便をお掛けした部分があり、お詫び申し上げます。町とも協議の上、改善は図って参りたいと考えておりますが、運営人員の不足や駐車場用地不足などの現状があり、すぐには解決出来ない部分が多々ありますが、どうかご容赦いただけますと幸いです。

加藤裕章さん(古内地区地域協議会)

私は今回、旧古内小でほうじ茶体験作りを担当しました。旧古内小学校はこれまで駐車場として利用してきた場所ですが、そこで体験イベントをやってみて、手応えと今後の課題が見つかる良い機会となりました。初めて体験してくれた人たちが自分でほうじ茶を作り、その香り、美味しさに驚く様子を見るのは、体験担当者冥利に尽きます。

ボランティアとして手伝ってくれた桜の牧常北高生達は、最初こそ緊張気味でしたが、中盤以降は自分たちで役割分担を柔軟に対応しながら動く様子を老眼気味の目に眩しく感じたのは日差しのせいだけではないはず。

このイベントに携わるようになってから「地域の魅力=お客さんを含めた関係者の魅力」なのではないかと考えるようになってきました。回を重ねる度に各会場が自分たちで考え、工夫して来てくれた人に楽しんでもらおうと行動している点はイベント当初想定しておらず、良い循環が地域内で廻りだしています。

次回は11月開催を予定しています。変わる季節ごとの風景、変わらない人との交流。そして「また来ちゃったよ」と言われる事を目標にして、お待ちしております。

※旧古内小学校について(岩野さんより)

旧古内小学校は明治8年、太古山尋常小学校として開校したのが始まりで、平成23年青山小学校、小松小学校と統合して常北小学校が開校するにあたり廃校となるまでは、夏祭りの前夜祭として町指定無形文化財にもなっている地域の伝統芸能「古内大杉ばやし」の演奏したり、やぐらを組んで盆踊りをするなどの催事を行っていました。

地元には古内小の卒業生がたくさんいらっしゃいますので、相談の上、可能なら古内小祭りの復活を目指していきたいと考えています。

高萩和彦さん(事務局、古内地区地域協議会、農家)

今回の庭先カフェの来場者は、延べ人数3,000人弱で過去最高を記録しました。駐車場をある程度広げたので、来場者が多くても大きな混乱がなくできたのではないでしょうか。

また新しい出店者の人、若い人も増えて、イベントとしての裾野が広がったように感じています。お茶農家以外が庭先カフェに関われる可能性が広がってきましたね。

もともとは古内茶と古内地区の振興のために始めたイベントですが、いろいろ想定外の新しいプレイヤー(出店者)が加わって、ドキドキやワクワクが想像を超えて広がってきたので、ますます面白いイベントになってきました。古内茶庭先カフェがひとつの生命体みたいに動き出し、成長し始めています。

だから今後の庭先カフェがどう転がるかは私にもわかりませんが、今回初めて海外からの来場者(オーストラリア)がいて、インバウンド需要も取り込めるようになったので、城里町の外の人から見ても魅力的なイベントになっているな、と自信を持って言えますね。