第5回 古内茶 庭先カフェ with 古民家の陶器市@城里町

晩秋の茶の里で、食と芸術と散歩を楽しむ(2022/11/27)

★第5回 古内茶庭先カフェの概要

晩秋の茶畑(城里町・古内地区)

2022年11月27日、茨城県の城里町で開催された第5回「古内茶(ふるうちちゃ) 庭先カフェ with 古民家の陶器市」。コロナ禍もひと段落(感染者は増えているけれど、ウイルス弱体化)して、2022年は6月に続いて2度目の開催となった。

茨城県3大銘茶のひとつであり、水戸黄門ゆかりのお茶である「古内茶」の産地、城里町古内地区の茶園等8か所が会場となり、新茶の試飲や販売、パンやコーヒーなどの販売、さらに今回は秋の開催とあって島家住宅(国登録有形文化財)で陶器市を開催(芸術の秋)。城里町在住の作家による陶器が、古民家で展示・販売を行った。

他にも……前回から引き続きのチンドン屋「三浦屋」さんが参加し「古内茶揉み音頭」を演奏、水戸黄門御一行に扮した人が古内地区を漫遊し、小さなマジックショーの開催……などもあり、今まで以上に「イベントっぽい」演出が施された。

鮮やかな紅黄に染まった里山に囲まれ、いつもはひっそりとした城里町古内地区に人々が集い、歩き、話し、茶を飲み、茶の里の風情を楽しんだ一日となったようだ。

※主催:チャレンジしろさと、古内地区地域協議会、古内茶生産組合

★チャレンジしろさと代表・城里町の高萩さんのお話(庭先カフェ開催後)

交通誘導をする城里町の高萩さん。

城里町に住む有機農家・高萩和彦さんは、古内茶 庭先カフェの主催団体の一つである「チャレンジしろさと」の代表である。5回目の開催を終えた庭先カフェだが、運営の一人としてどのような感想を抱いているのだろうか。高萩さんに聞いてみた(LINEで)。

●今回で5回目の庭先ですが前回までと比べて変化した部分は?

秋開催ということで、秋ならではの特色を出しました。島家住宅で町内初の陶器市を開いたり、お茶農家さんに収穫した米や野菜も積極的に売ってもらいました。

●今回の目玉は何だったでしょう?

前述の陶器市や、チンドン屋三浦屋さんによる伝統民謡、古内茶揉み音頭の完全復活などがあげられます。また、水戸黄門ご一行を演じる劇団の方がいらっしゃって開催エリアを漫遊してくださいました。

●古内茶 庭先カフェに来ている方は、どんな目的で来ているのでしょうか?

茶畑の散歩やお茶農家さんの庭先でのお茶や会話。美味しい食べ物を目的に来てくださっているようです。
他のイベントにはない、地域密着の人とのふれあいを楽しんでいただきたいです。

●今回の来場者数はいかほどでしょうか?。

新茶の時期だった前回より若干少な目だったかもしれません。その分、ゆったりと楽しめたのではないでしょうか。

●最後に5回目の「古内茶 庭先カフェ」を終えた感想と次回に向けた意気込み、今後の展望をお聞かせください。

庭先カフェをきっかけに、古内地区や古内茶に関心を持ってくれる人が増えたり、関係者同士の繋がりが強まっていると感じます。古内茶にも若手の後継者候補が現れ、産地存続にも希望が出てきました。今のボリューム感を維持しつつ、より内容の濃いものにバージョンアップさせていきたいと考えています。

★秋の古内散歩

「古内茶って知ってます?」

食への関心が高い人々が集まった、職場の会議で聞いてみた。

会議の場は静まり返り、幾人かが「……知らない」とポツリと答えたのみだった。

え、マジで、嘘でしょ? と思ったけれど、当然声には出さない。食への関心が高くて、茨城県に住んでいる人にも「古内茶」はまだ伝わっていなかったことにショックを受けた。

古内茶の魅力を伝えようと始まった「古内茶 庭先カフェ」は、今回の開催で5回目となる。今までに新聞等のメディアにも何度か取り上げられるなどしてきたが、まだまだ周知はされていないようなので、庭先カフェ広報担当(自称)の一人としては何とも歯がゆく、寂しく、情けない。

その歯がゆさは、全巻揃っていたはずの漫画がいつの間にか歯抜けになっていて、どこにいってしまったか分からない時と似ていて、その寂しさは仕事関係の人に久しぶりに会った時に、その相手に私の名前も存在すらも憶えていてもらえていなくて「誰さんだっけ?」と言われた時に似ていた。

またその情けなさは、駐車スペースにバックで停める際にうまく停められず何度も切替している最中に、後ろから駐車待ちの人が「はよせい」といった顔で見られている時に味わうものと似ていた。

歯がゆく、寂しく、情けないが事実だから仕方ない。今回の古内茶庭先カフェ取材記事でもって、ドンとひと花咲かせて古内茶の認知度アップにつなげようではないか、ついでにブログの収益アップ&アクセスアップにつなげようではないか! なんて不埒なこと書いているから、認知度が上がらんのだろうか。

そうこうしている内に11月27日がやってきて、我が家の御妃様(M子様)を引き連れて、今回も庭先カフェに行ってきた。

城里町の古内地区に到着すると、地区内がいつもと違う賑わいを見せているのがすぐにわかった。はためくのぼり、お茶農家に停まる車の数、県道をゆく車の数と歩く人の数が、普段の古内地区のそれらとは違う。
「何かやってるな」と思わせる。

それはとても大事なことで、庭先カフェの開催を知らずに通った人がぶらりと立ち寄るきっかけになるし、立ち寄るまではいかなくても城里町で「何かやってるな」と思わせることができれば、一つの成果なのではないか、と自称広報担当の私は思うのであった。

私たちは県道51号を茂木方面へ走り、一番遠くの会場「ふるたす」の近くの駐車場に車を停め、そこから散歩を始めた。そう、今回の私たちの目的は「散歩」だった。

何を隠そう我が家の御妃様は地域の特産品や地域貢献、文化、芸術などにとんと興味がない。そのような御方を庭先カフェに連れ出すには、その人の好きなモノやコトで釣るしかない。御妃様は「散歩」が好きなものだから、「いい散歩コースがあるんだよ」と言って連れ出した訳である。

そんな妃を連れて、駐車場から「ふるたす」まで歩く。少しの距離だが、城里の自然がひしひしと感じられる。里山の紅葉、小川、田畑。日常生活でも見ることのできる風景であるが、いつもは車で通り過ぎる際に眺めるだけ。

こうしてのんびりと歩きながら眺めると、その風景と一体化するような感覚に陥る。それはただ単に車での移動と比べて視認する時間が長いからというだけではなく、肌で風を感じ空気を感じ、足で地面(舗装されているけれど)を踏みしめることで感じられる特別なものである。

「ふるたす」

「ふるたす」は本ブログでも取材した「DOOKIE&FURUTAS」のことで、城里町の県道脇に佇む雑貨屋である。アメリカ雑貨をメインに扱い、他にも古内茶をはじめとした地域の特産品や陶器も扱っているお店で、まさしく「雑貨屋」である。

「裏原宿」などの言葉が流行した時代に、こうした雑貨屋も流行した。私も代官山や原宿までわざわざ行って雑貨屋めぐりをしたクチだから、「ふるたす」のような店に行くと懐かしさを覚える。青春時代に戻ったような感じがして、当時のことを思い出し……、ああ、もっと勉強すればよかったと後悔する。

店の外では飲食店が店を出し、古着屋なんかもあって、休憩スペースでくつろぐ人が何人かいた。店主の方に軽く挨拶をして、いそいそと店を出る(何も買わなかったから)。

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ふるたすを出ると、元来た道を戻って島家住宅を目指して歩く。すたすた、てくてく、とことこ、ぽこぽこ、ぴょこぴょこ? 歩く表現は何かないかと試みたが、最後はカエルになってしまった。かえるぴょこぴょこむぴょこぴょこ。道中草木が生える場所などあったが、季節柄カエルの姿はそこにはなくて、トンボがフラフラと漂うのみであった。

島家では高萩さんが交通誘導をしていた。忙しそうなので軽く挨拶をして、島家に入る。島家にもいくつか出店があったが、失礼しかまつってそこは素通り。島家の中の陶器の展示を見る。

島家住宅の中

島家内で展示・販売された陶器

城里町に住む陶芸家の作品が、国の有形文化財である古民家の中にずらり並ぶ。薄暗い古民家の中は、芸術品をこれこそが芸術であると私のような庶民に見せつけるに相応しい雰囲気を醸し出し、あれこれと眺めているうちにどれもこれも欲しくなってきたので何も買わずに外へ出た。

島家から先は、県道から外れて農道のような細い道を歩く。県道と違って車の通りはまったくなく、時折水戸黄門さま御一行とすれ違うくらいで、人もほとんど歩いていない。プライベート・ビーチならぬプライベート・農道である。

ウォーキングコース

水戸黄門御一行

目の前に広がるのは田んぼと小さな山、そしていくつかの民家と茶畑。県道を通り過ぎる車の音以外に音がしない。そんな場所を延々と歩く。その間、ほとんど何も考えていないことに気付く。頭の中を空っぽにして、ぽかーんとして、ただただ歩いた。

「いやぁ、気持ちがいいねぇ」

なんて言葉が思わず口からこぼれる。仕事仕事の毎日で、溜まってしまったストレスやら不満やら鬱憤やらが、すぅっと身体から抜けていく気がした。「そお?」と我が妃はこの素晴らしい光景に何の感動も示さないが、恐らく、きっと、たぶん、内心は「気持ちがいい」と思っている……だろう(希望的観測)。

途中のM’s Tea Roomで軽くお菓子を食べて、そのまま私たちは農道を歩き続けた。晩秋の里山と茶の里が生み出した自然のアートを眺めながら。

高安園。

農道を端から端まで歩くと、高安園に出る。高萩さんの家に行く際に通る道路沿いに高安園はあるので、古内茶を買う際はよくここで買っている。この店は平時でも客が来ればお茶やお茶菓子を出してくれて、店の中にある椅子に腰かけ、お店の人と話をしてのんびりと過ごせる。いわば、常に「庭先カフェ」のようなことをしている。

本日は店先でたこ焼きやらお茶やらを販売していた。腹が減ったのでたこ焼きを頼むと一緒にお茶が出てきた。当然、古内茶だ。ほんのり苦くてほんのり甘く、後味はすっきり。今までも何度も飲んだお茶だが、散歩の後だと更においしく感じた。

チンドン屋の三浦屋さん

その後寄った初梅園ではチンドン屋の三浦屋さんが演奏をしていた。いつしか高萩さんに聞かせてもらった「古内茶揉み音頭」だった。ちょっとアレンジがされていて、それが沖縄民謡のようで、聞いていてとても心地よく心に響く。

歌を聴いている時も、日常を忘れられる。余計なことを考えず、心が浄化される。昔聞いた歌の場合は、その時付き合っていた友人や彼女のことを思い出し、センチメンタルな気分になる。古内茶揉み音頭の場合は……沖縄旅行に行った時のこと、その旅行に一緒に行った友人と疎遠になっていることを思い出し、やはり少しおセンチな気分になってしまった。

時沢園にて

最後に時沢園に行き、外のベンチに座って茶畑を見ながらパスタを食べてお茶を飲んでぼんやりと過ごす。
そこでお茶の販売をしていたお茶農家にちょっと話を聞く。ああ、そういえば。庭先カフェの醍醐味は散歩だけじゃなくて、こうした地域の人、お茶農家とのふれあいにあったのだと思い出す。

地域の伝統農産品「古内茶」と、地域が生み出す陶芸、伝統民謡。そしてその地域で育った人々と、その人々が育んだ里山の風景。「古内」という地域全体にふれあうことで、その地域に興味と愛着がわき、特別な存在になる。

「また来たい」

何度来てもそう思えるこの「古内茶 庭先カフェ」は、私にとって既に特別以上の存在で、それはもはやこのイベントに来ることが習慣のようで当然のようで、すっかり私の人生の一部になっているというか。

そう、ファンなのだ。私は古内茶庭先カフェのファンであり、古内茶の、古内地区の伝統や風景や住人のファンなのだ。ファンだからもっと応援したくなるし、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。

なんなら古内茶Tシャツとか、ステッカーとか、キーホルダーとか、マウスパッドとか、茶揉み音頭のCDとか、そういうの作ってくれれば買うのにな。ゆくゆくは古内地区を舞台にした小説やら映画やらアニメやら……。ガルパンに対抗して戦闘機もののアニメとかもいいな……(勿論萌え要素あり)。

この日買った古内茶の和紅茶を飲みながら、そんな妄想を抱いた。

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