【第3話】猫とメロンのおはなし

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鉾田市の農家・方波見さんの作るメロンがおいしい理由は、
猫の癒し効果が関係しているかも?

 

おはなしをしてくれた農家さん

方波見 洋一 さん(方波見農園) (1980生まれ)
地域 茨城県鉾田市安房
農作物 メロン、中玉トマト
農地面積 約2ヘクタール

 

方波見農園のメロン

方波見農園のメロンはおいしい。
濃厚な甘みと芳醇な香り。
海外からも注文があるほどの人気ぶりだ。

果たして、その美味しさの秘密はどこにあるのか。

小まめな温度調整。
BMW技術によって生成された有機肥料。
長年培った経験と知識。
そして、方波見さんのメロン作りにかける想い。

それらが重なり合うことで、おいしいメロンが作られるのだろう。
でも、実はそれだけではないと思っている。
おいしいメロンを作り出す本当の秘密は、猫にあるのではないかと。

 

チー VS 半野良(はんのら)

方波見農園では猫を飼っている。
猫の名前は「チー♀」という。
方波見農園で飼っている猫はチーだけとのことであるが、実際のところ、他にも猫がいる。

たわし、はなじろ、はらじろ、とら(すべて♀。2015年当時)。

これらの猫も、方波見さんに餌をもらい、家の周辺をうろちょろとしている。
これを、方波見さんに言わせると「餌付け」しているらしい。
「飼っている」のでは決してないという。
この半野良(半分野良猫の意)たちとチーは、仲が良いのかと思えばそうでもない。

チーは半野良の猫たちに、ひどく弱いのである。
半野良たちに餌を横取りされてしまったり、苛められたり。
「飼い猫」たる威厳はどこへやらである。

その理由は、チーの出生にさかのぼる。
方波見農園の方波見さんは、野原ファームの野原さんからチーを譲り受けた。
野原さんが飼っていた猫に子供が数匹生まれ、その中で「一番鈍くて、捕まえやすかった」というのが、チーである。

数匹いた猫の中でも一番大人しい性格だったというチーは、その性格をそのまま成猫になってからも引き継いでおり、逞しい環境で育ってきた半野良たちに、してやられてしまう訳である。

それでもチーは、「飼い猫」であるから、半野良たちとは少々待遇が違う。
半野良たちに苛められたら、ご主人さまたちが守ってくれるし、家の中にあがることだってできる。
それにより、すんでのところで「飼い猫の威厳」は保つことができている。

 

猫の手は役に立たない?

そして、放し飼いであるから猫らしく自由である。
雨の日などは外で体を泥だらけにして家にあがり、方波見さんたちを困らせる。
方波見さんが農作業中でも、「餌をよこせ」「かまってくれ」と体を摺り寄せる。
ビニールハウスのベッド(植え付け床)をベッド(寝床)にしてしまう。
そうして、土だらけになった体のままで家に上がり込む。
当然、家の中は大騒ぎになる。
メロンのアンテナ(T字型のつる)を折ってしまい、商品価値を下げてしまったこともある。

農繁期だってお構いなしだ。
血眼になってメロンを箱詰めしている際にも、「餌をくれ、構ってくれ」とやってくる。

家の中でも同じく。
食器棚に好物の鰹節が入っているのを知っているから、扉を開けるとすぐ傍の椅子に座って、「よこせ」という顔をする。

「猫の手も借りたいほどに忙しいことは多いけれど、実際の猫の手が役に立つことはないね」と、方波見さんは笑う。

 

チーの仕事

だが、チーが役に立つことだってあるのだ。

ネズミやヘビを口に咥えてきて、「どう? すごいでしょ?」と見せつけてくる。

(しかし、ネズミやヘビを見慣れない方波見さんの奥さんや子供たちを驚かせ、大騒ぎになってしまう)

農作業が終わりの時間になると、「お前ら、今日はもう終わりだぞ」と迎えに来てくれる。

(本当は、腹が減っているだけかもしれないが)

「わかったよ。もう帰るよ」

方波見さんがそう言って家に帰ろうとすると、そのすぐ後ろをついて歩いてくる。
てくてく、てくてくと方波見さんの後を、短い尻尾をふりふりしながらチーは歩く。

果たして、お迎えに来てくれたのか、それとも餌の催促に来ただけなのか。
どちらにしろ、自由気ままな猫の振る舞いに、方波見農園の人々がとてつもない「癒し」を得ていることだけは確かだ。

頭をなでているだけで、心が和む。
家族の話題の中心にもなっている。
いつの間にか、チーの持つ「癒し」の力が、家族の和を取り持つ存在になっている。

農家とは、家族の助力なしでは成り立たない仕事である。
その家族の和を支えているのが、チーなのである。
チーの癒しが、家族に伝わり、メロンに伝わる。

そうして、美味しいメロンが出来上がるわけだ。

 

方波見メロン|万農王国いばらき
人に求められるメロンを作り続ける

執筆日:2015/3/30 らくご舎