城里町の高萩さん 取材記 12

農家は農作業中に何を考えているのか?
城里町の高萩和彦さんの場合(取材日:2020/5/24)

 

コロナ禍の高萩さん

久しぶりの高萩さん

先日、実に3か月ぶりに城里町の高萩さんの畑にお邪魔してきました。

前回お伺いしたのが2月末ごろ。
それから新型コロナウィルスの感染が広がり、知人友人に会うことすら許されない日常が続き、やがて緊急事態宣言が発令され……。
個人(家族)経営者である農家の高萩さんに、新型コロナを(私を媒介して)感染させてしまっては大変ですから、会いに行きたくても会いに行けない日々が続いていました。

2020年5月14日、茨城県は緊急事態宣言の対象地域から解除。
(これを書いている現在(5/30)まで25日間感染者ゼロ行進が続いています)
ぼちぼち、高萩さんの様子を見に行きたいな、と思い、アポを取って城里町に行ってきました。

久しぶりの高萩さんは、顔に少々髭が生えていました。

「人に会う時はマスクをするので」

どうやらイメチェンではなく、無精ひげのようです。

気になるのはコロナの影響。
聞いてみたところ、直売所の売上には大打撃になるほどの影響はなく、
取引先の飲食店もテイクアウトに切り替えていたので注文はあったようです。

高萩さんの住む茨城県東茨城郡城里町は、未だ感染者ゼロですし、
農家という仕事上、「三密」になる状況はほとんどなく、世間一般を騒がしている新型コロナの影響はあまりなかったようです。

5月までの高萩さん
・アスパラガス…春の収穫を終えて、立茎の状態。7月の夏の収穫を待つ。
・レンコン…収穫は4月いっぱいまで。5月から植え付けを始め、もうすぐ終了!
・マコモ…6月~

ネギの植え付けを手伝う

ネギの圃場(植え付け前)

さて、取材日には久々に農作業をお手伝いしてきました。
作業内容は「ネギの植え付け」です。
到着するなりに、軽トラを走らせ向かったのは新しい圃場でした。

「大家さんが今まで他の人に貸していた畑が空いたというので」

着々と圃場拡大をする高萩さん。
これまで高萩さんの畑に訪問してきましたが、農家としてのレベルアップが感じられ、私も何だか誇らしく思えました。
(それに比べて私は……嗚呼)

お手伝いしたのは、育苗ポットに植えられたネギの苗を畑に移すという作業。

ネギの苗

この育苗ポットの苗には、ちょっとした工夫がされています。
ビニールハウス内でネギの種を発芽させた後、芽が揃ったくらいでハウス外に出すことによって、水やりをしなくても済むようにしていました。
これは、あした有機農園で教えてもらった栽培技術だそうです。

ネギの植え付けの際に便利な農作業具「ネギロケット」

植え付けの際に、土に穴を空けるのに使ったのがこの道具です。
その名も「ネギロケット」
先端のロウソクみたいな部分は位置を株間に合わせて調整できます。
これをブスッと地面に刺して穴を空け、上下に軽く揺さぶって穴を広げ(苗を入れやすいように)、場所を少しずらしてまたブスッと刺す…の繰り返し。
空いた穴に苗を入れていき、一つの「条」が終わったら、条間を空けてまたネギロケットを刺して。
これをしこたま繰り返していきます。

作業としては難しくない作業。

いわゆる「単純作業」というやつです。

14時頃に作業を始め、終わったのは18時頃。
約4時間もの間、この作業に没頭しました。

本日の植え付け終了。

慣れるまでは、コトを運ぶのにやや慎重になりますが、コツを掴むと如何に作業を速くするか、如何に疲れずに作業するかの2点にのみ意識がいきます。
更に慣れてくると、鼻歌交じりで作業したり、この後高萩さんに何を聞こうかと考えたり(いや、事前に考えて来いよ)。
他にも、仕事のこと(本職の)やら何やらを考えたり。

農作業をやりながら、意外といろいろなことを考えられるなぁと思いました。
そういえば、コミックエッセイ「百姓貴族」の3巻にも、
「肉体労働(農作業)の何が良いって、仕事中に脳みそ使えるところよね!」
と著者の荒川弘さんが言っていたのを思い出しました。
荒川さんは、農作業やりながら漫画のことを考えていたんですよね。

……では、高萩さんは何を考えているのだろう?

農家は農作業中に何を考えているのか?

ネギを植える高萩さん

というわけで。作業後に高萩さんに聞いてみました。

「農業を始めた頃は、井上陽水の『少年時代』が脳内BGMとして流れていましたね。意識していなくても、勝手に『少年時代』が脳内に流れていました(笑)」

なるほど、では農作業に慣れた今ではどんなことを考えていますか?

「次の作業を考えながらとか、時計を見ながらあとどれくらいやるかとか。作業の段取りですかね。あとは庭先カフェのこととか。農作業中にアイデアが浮かぶことも多々あります」

庭先カフェ・ツアー・イン・城里町(第2回 古内茶 庭先カフェ取材記)
茨城県城里町古内地区の庭先をダッシュで巡る

やはり!
農作業はアイデア発掘にもいいのかもしれない!

「他には野菜の状態を見ながら作業していて、野菜の状態が良いと嬉しいですよね。野菜が元気な時はオーラを出しているんですよ。『元気ですよ!』って。野菜から元気を貰っています」

ふむふむ。何か農家さんらしい答えでいいですな。

「どんな作業もなるべく『楽しもう』と思ってやっています。義務感ではやりたくないので。つまらない仕事を減らす努力はしていますね。『一生この作業をやりたいか?』と自分自身に問うんです。そこで、『やりたくない』と思ったら違うやり方を考えています」

おお、さすが高萩さん。
すべての仕事に通ずる格言めいた言葉が!

「農家は自営業なので、ルールは自分で作れますから」

そう話す高萩さんの表情は、自信と誇りに満ち溢れていて、それでいてとても楽しそうでした。

 

いばらき新規就農者ネットワークのこと

高萩さんに直接お会いするのは3か月ぶりでしたが、その間もLINEや電話でやり取りはさせて頂いていました。
やり取りの内容は、「いばらき新規就農者ネットワーク」のチラシのこと。

「いばらき新規就農者ネットワーク」とは、高萩さんが所属する(しかも、副会長として)、非農家出身の新規就農者の集まりです。
「非農家出身」ということで、代々続く家族経営の農家のように身近に頼れる存在がいません。
そこを、ネットワーク内のメンバーで励まし合い、協力し合って頑張っていきましょう!というもの。
ネットワーク内では圃場見学をしたり、販売会をしたり……他にも飲み会(たまーに私も参加)をしたり。

面白いのが、メンバーの前職。
営業をやっていた人もいれば、WEBクリエイターだった人もいる。
放送局に勤めていた人もいれば、スポーツ企業に勤めていた人も。
果ては、農家をやりながら飲食店をやっている人もいたりして。
いろいろな前職を持った人が、それぞれのスタイルで「農家」として自立しています。

そんな素敵な「いばらき新規就農者ネットワーク」の紹介用チラシを依頼していただきまして。
苦節数か月、ようやくそのチラシが刷り上がりました。

表面(クリックで拡大)

裏面(クリックで拡大)

高萩さんの野菜が買えるお店

道の駅かつら

那珂川に御前山、懐かしいみんなの田舎、道の駅かつらです。
道の駅かつらは、茨城県の北西、那珂川の辺の豊かな自然のロケーションです。山紫水明の茨城県立自然公園御前山と清流那珂川を望む素晴らしい景勝の地に立地しております。地域で生産された新鮮な農産物や加工品・工芸品などの産地直売品をはじめ、常陸秋そばなどの郷土料理の提供など、地域活性化の拠点として設置されました。

つちっこ河和田

つちっこ河和田(上中妻地区農産物直売所)
Tweet 新鮮な野菜が並ぶ人気ショップ 2000年10月に設立した通称つちっこ河和田は岩間街道沿いにあります。年6回の感謝セールの開催だけでなく、消費者と生産者とが親交を深めようと始まった交流会ではイチゴ狩りや、そば打ち教室などを行ってい