城里町の高萩さん 取材記 Vol.17 ~Who is your farmer?~

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「農家にしかできない仕事に集中したい」
高萩さん、究極の野菜販売方法「セルフ収穫」について語る(取材日:2021/3/5)

★焚火

薪を運ぶ高萩さん

「今日は焚火なので気楽にいらしてください」

取材日当日、高萩さんからLINEが届いた。
焚火だ、嬉しい!
確か、去年の今頃も高萩さんと焚火をしたっけ。

焚火=嬉しいのは何故か知らん。
炎を眺めていると、ぼうっとしてきて、何だか心地よい気分になる(私はひょっとして「やばい人」なのかもしれない)。

高萩さんの家に到着すると、既に焚火の準備は整っていた。
畑の近くのイチョウ林には穴が掘られていて、そこに本日燃やす材料の伐採された木がくべられ、僅かばかりの火が付いている。
高萩さんは焚火の燃料となる木を集めていた。

早速私もそれを手伝う。
木を運び、木をくべて、燃やし、眺める。
それだけなのに、とても楽しい。

夕方になると雨が降ってきたので、屋根のある場所に移動して高萩さんの話を聞いた。

★農家にしかできない仕事に集中したい

焚火の様子

2月の高萩さんの主な仕事は、レンコンの収穫と干し芋の加工・出荷、ネギ・ニンジン、そして里芋の収穫だった。
子どもができたこともあって、年末は忙しく、レンコンのカラ狩りができなかったが、そのため栄養価が外に逃げずにおいしいレンコンが出来上がったという。
笠間にある「有機農家がつくったオーガニックの店」でも、高萩さんのレンコンの売上は好調らしい。

ひょんなことから、話は出荷作業の「袋詰め」に及ぶ。
収穫した農産物を出荷するために袋に入れる作業・袋詰め。
この作業が、案外手間らしい。

「バラで出荷できたら、もっと農作業に集中できて出荷量も増やせるんですけどね」

高萩さんが本音を漏らす。

「袋詰めして出荷に行って……時間がけっこうかかるんですよ。時給に換算すると500円くらい。農家として独立してやっていくなら時給1,000円で仕事をしないと効率が悪いんです」

昔から、高萩さんはよく農作業の効率や時給換算の話をしていた。
なるほど、高萩さんが作る野菜は有機減農薬(もしくは無農薬)。
ただでさえ手間暇かけて作っているのに、袋詰めなどの作業は確かに余計な作業かもしれない。

「農家にしかできない仕事に集中したいですよね。そうすればもっといい野菜が作れるのに」

この問題は、今の農家全体に言えることかもしれない。
人々はは安心・安全な野菜を求めるが、安心・安全でおいしい野菜を作るには時間がかかるのだ。

もっとも、袋詰めをしないで出荷できる場所もある。
市場や契約している飲食店がそれだ。
だが、市場は価格変動が激しいし、基本的に買い取り価格が安い。
飲食店はいい値は付くが、出荷量が少ないからまとまったお金になりにくい。

★セルフ収穫

火の番をする高萩さん

「お客さんに収穫してもらうのが一番良いって、最近わかりました」

ある日、お客さんが高萩さんにマコモを頼んだ。
しかし、その日までにマコモの収穫が間に合わず、高萩さんの家にマコモを取りに来たお客さんに対し「勝手に収穫していってください」と頼んだという。
すると、その人は喜んでマコモを収穫した。
収穫という体験が得られ、自分で収穫する野菜が選べる。
その上収穫を自分でする分、少し安く購入もできる。
高萩さんとしても、収穫の手間が省け大助かりだったという。
しかも、お客さん自身が選んで収穫するから、ノンクレームだ。

「近所の人が昨日も来たんですけど、やっぱり自分で収穫してもらいました(笑)」

これを高萩さんは「セルフ収穫」と名付けた。
消費者側は安く購入できて、自分で欲しいものを選べ、収穫体験ができる。
生産者側は収穫の手間と時間が省け、野菜作りに専念できる上に、クレームを受けずに済む。
「セルフ収穫」ならばWin-Winの関係が構築できる。

「収穫も誰でもできる作業なんですよね。収穫や出荷の手間が省けたら、その分安く販売してもいい。こちらは野菜を作ることに集中できるので」

これは、農作業に限ったことではないかもしれない。
他の仕事でも、あれやこれやと仕事があれば、意識が分散する分その一つひとつの精度や質は落ちるのが普通である。
「いい仕事」をする上で、シンプルなことは重要なことだ。

★Who is your farmer?

城里町にも梅の花が咲いていた

「人の作ったシステムは安心できないですよね」

高萩さんは話を続ける。

「直売所も市場出荷も、宅配もネットもそうなんですが、他人が作った仕組みを利用すると、契約が切られたら終わりとか、リスクを背負うことになりますから」

なるほど、おっしゃる通りかもしれない、と思った。
でも、自分で販売や流通のシステムを作るなんて。
私では到底思い浮かばない。
そもそも高萩さんは、どうしてこの「セルフ収穫」のアイデアが思い浮かんだのだろうか。

「ヒントは意外と身近にあったりします」

と高萩さんは笑った。

例えば、城里町でレンコンを作ろうと思った時は隣の田んぼのおじさんに「空いている田んぼでレンコンでも作ってみれば?」と言われたのがきっかけだったという。
マコモダケを栽培するようになったのは、常連のお客さんが苗を持ってきたのが始まり。
セルフ収穫のアイデアは、先に挙げた通りである。

どれも、偶然の産物といってよい。
そして、自分の周囲で起こった出来事を取り入れている。

「最近は、ローカルを大事にしようと思っています。有機野菜を作っていても、届けているのは水戸などの離れた場所の人ばかり。近所にも人はたくさん住んでいるのに、その人たちに届けられていないんですよね」

高萩さんは、セルフ収穫の他に自宅の庭に野菜BOXを作るアイデアもあるという。
どちらも極々身近な範囲……というか、目と鼻の先ほどの距離である。

「笠間市で新規就農した、はだし有機農園の夫婦が、Who is your farmer?という言葉を掲げて農業をしているんです。貴方の農家は誰ですか?って意味だと思うんですけれど、自分専属の農家さんみたいなものでしょうかね。いわば、かかりつけのお医者さんみたいな存在に農家もなれれば面白いと思うんです!」

生産者と消費者の距離感。
それを縮めようとする動きは近年多く見られる。
農家の写真を野菜販売コーナーに掲げたり、雑誌やWEBサイトで農家の記事を掲載したり(あ、このサイトもか)。
それでも縮まらないのが、この二者の距離である。

おいしくて安心安全な物を食べたい。
でも、あまり高価では買えない。
虫が食っているような野菜は嫌だ。
もっと量が欲しい。
形がきれいでなければ嫌だ。

消費者の要望は、現場を無視したちぐはぐなものばかりだ。
それが、ケーシーさんの言葉の通り、消費者にとって農家が身近な存在になれば。
全ての人の食への意識が変わることは間違いない。

少し壮大な話になったが、農家としてやっていくにはやはり収入の安定が目下の目標となる。

農家が安定した収入を得るには、それなりの量を作らねばならない。
量を作るためには、効率よく仕事をしなければならない。
そのために、機械化を図ったり、人を雇ったりするのが一般的だ。

でも高萩さんはそれでは「つまらない」と言う。

「ひとり農家として始めたのは、なるべく人に関わりたくなかったから。一人で最低限の収益を上げるには、セルフ収穫はぴったりのシステムなんです」

いわずもがな、農家は個人事業主である。
だから、高萩さんがしきりに効率を気にして、時給換算したがるのも当然である。
神経を尖らせ、時間や経費を切り詰めないと、生活が成り立たない。
私のようなのほほんとしたサラリーマンとは、まるで違う人種である。

「サラリーマンはこれ以上はいらないと思っているんです」

ぐさり。
でも、この言葉は以前にも高萩さんから聞いていた。

「個人事業主を増やしたい。何ならみんな個人事業主になってしまえばいい」

個人事業主とは、自分の考えで行動できる人。
例えば、いくら税金を取られているとか、自分の頭で考えている人だという。

「個人事業主は自分の能力をフル活用しないとやっていけないですから」

能力をフル活用していれば、いろいろと社会の矛盾に気づく。
政治にも関心を持つ。
世の中の問題に対して、真剣に考えるようになる。

そうすれば、世の中は良くなる。
というのが、高萩さんの考えだ。

「あ、そういえば皿回しを始めたんです」

そう言って、高萩さんは席を立った。

え、皿回し?
あの棒か何かでお皿をくるくる回す?
いや、話の流れからして違うだろう。
ビジネス用語や農業用語で「皿回し」という言葉があるのかもしれない。

突然の言動に呆気に取られていると、高萩さんは皿と棒を持って帰ってきた。
そして、その棒を持って皿をくるくると回し始める。

え?え?

何なんすか?これ?

しかし、うまいもんだ。

いや、そうじゃないだろう。
何で皿回し?

「それはまた次回にでも」

消火器もちゃんと準備。

社員ゼロ! 会社は「1人」で経営しなさい (アスカビジネス)

 

高萩さんの野菜が買えるお店

道の駅かつら

つちっこ河和田

有機農家が作ったオーガニックの店

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