人生はじめての田植え体験(田植え日 2021/5/1)
★らくご舎と田植え
2021年5月1日、この日は私にとって記念すべき日となった。
40歳を過ぎて、生まれて初めて「田植え」を経験したのだ。
茨城県は農業が盛んな土地だ。
それを示す統計も出ている。
・総農家数 全国2位(平成27年)
・農業産出額 全国3位(平成30年)
・野菜産出額 全国1位のもの…鶏卵(けいらん),かんしょ,メロン,ピーマン,れんこん,ほしいも,みずな,こまつな,切り枝,チンゲンサイ,芝,くり,セリ。
・同2位のもの…レタス,はくさい,日本なし,ごぼう,パセリ,らっかせい
・同3位のもの…ねぎ,にら,スイートコーン,もやし,しゅんぎく,しそ,らっきょう,みつば,そらまめ,マッシュルーム,こんにゃくいも
(野菜の農業産出額はすべて平成30年)
お米は産出額の約2割を占めていて、産出額は全国4位となっている。
その農業が盛んな茨城県に生を受け、長年住んできたにも関わらず、私は今まで田植えというものを経験したことがなかった(たぶん)。
他の人ならばいざ知らず、農業を仕事にしたことがあり、農家の取材を続けている私が、「田植え」を経験したことがないというのは、恥ずべきことではないか?(その代りと言っては何だが、米の田植え経験はないが、レンコンの田植え経験はある)
ならば、田植えをしようと思ったのが、去年のこと。
職場で「田植え体験」のイベントがあることを知り、参加を申し出る。
ついに私も田植えができるのか。
そう思ったのも束の間、コロナの影響でイベントは早々に中止になってしまう。
諦めるのはまだ早い。
友人H氏の親戚に田んぼをやっている家があるというから、手伝わせてくれと懇願する。
承諾を得て、田植え用の長靴を買って準備万端。
しかし、田植え実施の直前になって「天気が良かったから、もうやっちゃった」と連絡を受けた。
私は田植えに縁がないのかもしれない。
そう思わずにはいられなかった。
それから、一年。
今年は職場の田植えイベントの事務局に選ばれる。
コロナも落ち着き始め、イベントのチラシを作り、参加を募った。
よしよし、今年は嫌が上でも田植えを体験することになるだろう(しめしめ)。
だが、雲行きが怪しくなる。
コロナ感染者がまた増え始めたのだ。
田んぼを提供する生産者には「コロナの様子を見させてください」と言われてしまう。
これは、まずい。
今年も田植えができないかもしれない。
そんな時、友人H氏と電話をしていたら「明日(5/1土)、田植えを手伝わにゃならん」と言うではないか。
なに?田植えとな?そなた田植えと申したか今!
というわけで、急遽田植えを手伝わせていただくことになった。
★はじめての田植え
場所はH氏の親戚がいる栃木県芳賀郡茂木町。
のどかでとてもいいところである。
飛び入り参加ということで、H氏の親戚一同に挨拶をする。
親戚というのはH氏の母方の姉妹で、4姉妹が一同に会していた。
これはこれは、どうもどうも。突然無理行ってすみません。
いやいや、どうもどうも。手伝わせてすみません。
挨拶をそこそこに、田んぼに向かった。
田植えをする田んぼはそれほど大きくなかった。
田んぼの所有者に聞いても「わからない」と言う。
1反歩が約10アールで、1アールが100㎡だから、10m×10mの広さということになるのは、わかる。
だが、10mがどれほどの長さというのが、目視で測りかねる。
結局、「わからない」という結論に落ち着く。
田んぼには少しばかりの水が張ってあり、そこに苗がすでに植えられていた。
H氏のいとこが、早起きして機械で植えたのだという。
ならば、すでに田植えは終わりではないかとなってしまうが、そうではない。
機械の田植えでは荒が目立つ。
ところどころに植え漏れたところや、植え足りないところがあるという。
そういうところに、我々人間が田に入り、手で植える。
これを「補植」という。
さて、苗を持って田に入る。
素足ではないから、特別な感触はない。
レンコン農家で働いていた時に蓮田には入っていたが、その時は胴付長靴を履いてもっと深い田んぼに入っていたので、まるで違う感覚であった。
H氏の親戚たちと横一列に並び、田んぼの中を前進していく。
中腰の体勢で、苗が少なく植えられているところを探し、見つけたらそこに手でもって苗を植え足す。
一人で担当するのは手の届く範囲で4条ほど。
えっちらほっちらと植えていく。
この農作業でよくある「中腰」がきつい。
腰にとても「くる」ものがある。
私の場合、上背があるから余計である。
作業始めは良かったが、だんだんと腰を伸ばして休む時間が増えていく。
加えて、足元が泥だから一歩一歩に腿の筋肉を使うようで、しばらくすると太腿が痛くなった。
H氏の親戚たちは、H氏のおばにあたるから、当然私たちとはだいぶ年が離れている。
にも関わらず、澄ました顔で苗を植えていく。
そして、私よりもずっと作業が速い。
農家で働いていた時も、おばあちゃんたちの作業の速さに驚いた。
女性はやはり逞しい、と思い知らされる。
農家の人たちは、このような作業を毎日こなすのだ。
この日の私は「体験」「手伝い」で、「1日」の作業だったからまだいいが。
食べ物を作ることの尊さを、改めて学べた気がする。
今後の「いただきます」と「ごちそうさま」は、より気持ちが込められたものになるだろう。
小さな田んぼだったので、田植えは2時間ほどで終わった。
はじめての田植えを終えて、整然と植えられた苗を見て、心は達成感で満ち溢れた。
心は満たされたが、身体は腰の痛みと太腿の筋肉痛でひどい思いをした。
田植えをした後、H氏のおばの家に御呼ばれして、昼食をご馳走になる。
その後、お別れの際に「ぜひ、来年も」と声をかけられた。
「ぜひぜひ、私で宜しければ」と答えた。
年に1度なら、悪くない。
それどころか、心と身体に良い刺激を与えてくれる。
これが2度も3度もとなると、億劫だし、身体がきついが。
はじめての田植えから数日後、職場の田植えイベントの中止が決まった。
イベントは中止だが、田植えは行われる。
田植えには事務局を代表して一人だけ参加することになり、それが私に決まった。
2度目の田植えは、はじめての田植えから一週間後に行われた。
今年は田植えと縁があるようだ。