日本最大級の稲田石の採掘現場(笠間市)石切山脈にて(2022/6/19)
「石切山脈」と呼ばれる山地一帯は、東西約10km、南北約 5km、地下1.5kmに及ぶ岩石帯で、明治32年から100年以上続く「稲田石」の日本最大級の採掘現場です。
ここから採掘される「稲田石」は、約6,000万年前に海底深くで長い時間をかけ冷えて固まった花崗岩の一種で、世界でも類を見ない際立った白さから別名「白い貴婦人」とも呼ばれています。
美しい光沢と優れた耐久性を兼ね備えているため、日本橋や東京駅、国会議事堂、最高裁判所など、全国有数の歴史的建造物に使用されてきました。
公式石切山脈観光サイトより(2022年6月)
茨城県笠間市にある「石切山脈」は、かねてから気になる場所だった。
「山脈」というから「山」なのだろう。「山」ならば無料で歩けるに違いない。ちょっと近場の山に散歩でも、という気軽な気持ちで行ってきた。
……が、まんまと思惑は外れた。
石切山脈はハイキングを楽しむような山ではなかった。
歩ける範囲は限られており、石が切り出された山を少し離れた場所から眺める程度のもので、山歩きを期待していた私たちは面喰ってしまう。「登る」「歩く」という経過がなく眺める山の風景に少々興が削がれた。
……が、見方を変えると思わぬ収穫があった。
それは、アートとして石切山脈を楽しむという見方である。
周辺には稲田石で作られたアート作品が展示されている。これらは過去に開催された「いなだストーンエキシビジョン」というアート展示会で展示された作品たちであった。「いなだストーンエキシビジョン」は、日本を代表するグラフィックデザイナーと笠間市が誇る稲田の石職人がコラボして、アート作品を制作するというもの。この作品群が真新しい感じではなく、少し寂れた感じがして、それがたまらなく、いい。
これらを眺めているうちに、私が抱いていた石切山脈のイメージ・目的が、ハイキングからアート鑑賞に変わったのだった。
すると、先ほど見て興が削がれた石切山と「地図にない湖」の風景が、途端にアートに見えてきて、素晴らしいものだと感嘆した。周囲にある廃墟のような工場すらも、アート作品に思えてきた。名物のモンブランも、スイーツという見方ではなくアートと思うとその値段に納得した(プレミアムモンブランコーヒー付きで1,800円である)。第2展示場の奥にある壁画は神秘的に映り、思わずその場に佇んでしばらく眺めてしまった。
一通り鑑賞し終わった後は、山登りとは別の満足感があった。
うーむ、これはなかなかどうして良いではないか。どうだった?
と、ツレのM子に感想を聞く。
「暑い!」
この日、笠間市の最高気温は6月半ばなのに30℃を超えた。
暑さに怒るツレを車に乗せ、石切山脈のアート鑑賞を終えた。