「釣って、食べて」が手軽に楽しめる釣り堀(2023/6/18)
県道28号(大子那須線)の看板があるところを右に折れると、デコボコした細い道がしばらく続く。県道にあった看板には、釣り堀まで3kmと書いてあったはずだが、体感3㎞を過ぎてもまったく釣り堀に着く気配がない。細い道にはところどころに「釣り堀この先」と書かれた小さな看板があるが、どれだけ走っても「この先」に辿りつかない。
デコボコした細い道を運転し続け、疲れ切った頃にようやく釣り堀に到着する。グーグルマップで計測したところ、なるほど3.3㎞と表示された。
平林鱒養魚場の駐車場は、車でいっぱいだった。せっかくここまで来たのに、満車だからといって引き返す訳にもいかず、そのまま待機していたら、すぐに帰る人がいて何とか駐車することができた。
ここ、平林鱒養魚場(平林釣り堀)は、釣った魚(マス・イワナ)をその場で焼いてもらうことができ、食堂スペースで食べることもできる。しかも、ご飯とみそ汁をつけたり、さらには小鉢セットをつけたりも可能なので「食堂」としての機能も存分に備わっている。
釣りの方は、竿・糸・針・餌はすべて無料で使うことができるが、釣った魚はリリース不可。その場で食べるか、持ち帰るか、いずれにしても釣った分の魚は「お買い上げ」となる。
管理釣り場のようなルアー・フィッシングではなく餌釣りだから、誰でも簡単に釣ることができるので、ファミリー層に人気のようだ。私が訪れた日も、小さな子ども連れが多かった。
釣った魚をその場で焼いてもらって(サイズによっては刺身も可能)、その場で食べる、というのは、子どもにとっても大人にとっても、大変貴重な自然体験になるだろう。「魚の命を弄ばない」「命をおいしくいただく」という観点を子どもに学ばせる絶好の機会である……などと、以前はルアー・フィッシングでキャッチアンドリリースばかりしていた私がのたまってみる。
加えて、ロケーションもなかなかである。山道を車でガタゴトと長い間(といっても実際は3㎞だが)走らせて来ただけあって、釣り堀は山奥に位置する。釣り堀の傍には川が流れ、池には人口の滝があり、あたりは木々で囲まれている。このような場所で、竿を立ててのんびりと魚がかかるのを待っていると、仙人にでもなったような気分になる。
実際のところは、池の中には養殖の魚がわんさかといて、しかも餌釣りだから容易に釣れるから、「のんびりと釣り」を味わう前に魚がバンバンかかってしまう。釣った魚分はお金もかかるから、釣りの方はそこそこに、といった感じである。
……という伝聞のもと、いざ釣りを始めてみたが、案外釣れない。予定では、私がささっと釣った後に子どもたちに釣り方を教え、釣りを楽しんでもらう、というものだったが、まったく釣れない。場所が悪いのか、餌の付け方が悪いのか、狙う層が悪いのか。とにかく魚がツレナイ(釣れない)。
隣の家族はひょいひょいと釣り上げ、早々に食堂の方に向かって行く。私たちよりも後から来た家族も、同様にひょいひょいと釣って、先に来た私たちよりも早く食堂へ。子どもたちの竿は餌だけ食われてしまい、私が餌を付けても付けてもすぐにまた新しく付け直す、といった具合だった。
ややや、これは何たることや。父親としての威厳を見せるためにここに来たというのに。
食堂からは既に釣りを終えた家族たちが、私たちを見ている。
(あはは、あの人たち全然連れていないよ、パパ)
(そうだねぇ、なんだろうねぇ、ヘタなんだろうだねぇ、笑っちゃうねぇ。あははは)
そんなやり取りをしているのではないか、なんて良からぬ妄想が膨らんでいく。
すると、長男坊がひょいと一匹釣り上げた。
釣り堀の餌釣りで一匹釣っただけなのだが、やんややんやの大喝采。続けざまに長男坊がもう一匹、二匹と釣り上げて、奥方も一匹釣り上げる……が取り込み失敗。
残るは釣り初体験の次男坊と私のみ。私は長男坊から竿を取り上げ、一心不乱に魚と格闘する。少しして念願の一匹を釣り、すぐあとにもう一匹釣る。これで威厳が保てた……と思ったのも束の間。
最終的に、ボウズは一番下の坊主だけになってしまい……。釣れなかった坊主は、その後ツレナイ態度になってしまったのは致し方ないことか(悲)。
けれどもまぁ、釣りは楽しかったし、その場で食べる魚もおいしかったので、また行きたい。
平林鱒養魚場(平林釣り堀)
茨城県久慈郡大子町大字上野宮2537
0295-77-0118
10:00~17:00 冬期10:00~日没まで 年中無休
ニジマス(生1㎏1,700円)、イワナ(生1㎏2,000円)、食事800円 ※焼き料金100円