刈払機と雑草

雑草を刈るならやっぱりこれ!
刈払機で広範囲の雑草を刈り取る。

 

雑草と呼ばないで

 
雑草……自然に生えるいろいろな草。また、農耕地で目的の栽培植物以外に生える草。
(広辞苑より)

「雑草」というと、辞書に載っている意味以上に、人間にとって「邪魔な存在」というイメージが強い。「雑草」と一緒に載っている言葉が「雑草防除」であるように、雑草は防除したり、駆除したりしないといけない存在、というのが、一般の人のイメージではないだろうか。

たしかに、雑草の悪いイメージよろしく雑草の中には毒を持っているものがある。他の植物の生育を妨げ、生態系を狂わせるものもある。けれども、雑草には数えきれないほどに種類があり、中には美しい花もあれば、人間が食べられるものだってある。

言いたいことは、雑草に対していたずらに悪いイメージを持ってはいけないということ。雑草とは辞書にあるように「自然に生えるいろいろな草」なのだから、日頃お世話になっている草だってあるのだ。

とある有名なカメラマンと同行した時のことを思いだす。それは東日本大震災の翌年くらいのこと。何かのスポーツの取材に、そのカメラマンと同行していた。同行中に地震について話していて、私が「自然災害」という言葉を口にすると、その人はこのように言った。

「災害というのは、あくまで人間側の立場で見た場合ね」

その人いわく、地震や台風は人間から見たら自然「災害」だが、そうでなければ自然「現象」だという。なるほど、何事も人間視点で捉えるのはどうかと思った。まぁ、言葉自体、そもそも人間が作ったものだけれど。

雑草という言葉もそれと同じで。
人によっては雑草が雑草でないかもしれない。その人にとっては、食べ物であるかもしれないし、鑑賞用の植物かもしれない……。

そんなことを考えながら、雑草を刈払機で刈りまくった。でも、小難しいことを考えながらできるほど草刈は軽作業ではない。刈っても刈っても刈り終らない。それに、刈り終えたとしてまたすぐに生えてくることがわかっている。雑草に対する綺麗事はすっぱりと忘れ、憎悪の対象に成り代わっていた。

 

 

刈払機の想いで

私がレンコン農家で働いていた時、夏の作業はもっぱら刈払機での草刈であった。そこのレンコン農家では、夏季はハウスでしかレンコンを収穫せず、路地栽培のレンコン田はひたすら管理作業をしていた。

管理作業と言えば聞こえはいいが、要は草刈りである。しかも、炎天下の中、一日中刈払機を振るって草を刈るのである。これはかなり堪えた。機械を使っているとはいえ、30分もやれば息が切れる。さらに長時間草刈をしていると、肩掛けバンドのせいで肩が痛くなり、左右に腰を絶えず動かしているので脇腹の筋肉が痛くなる。

しかも、真夏の屋外での作業だから、頭がくらくらして熱中症寸前の状態にまで陥ったこともある。ただでさえツライ草刈であったが、ツライだけでなく、危険も多かった。

斜面を無理な体勢で作業をしたり、スズメバチの襲来があったり。蓮田は水辺なので、マムシにもたくさん出くわした。普通、マムシは刈払機の音で逃げていくのだが、中には鈍感な(獰猛な?)マムシもいるようで。こちらが大きな音を立てて作業しているのに、一向に怯まないマムシがいた。

さて、これは困った。マムシが邪魔で作業が進まない。

マムシは怖いが、農家の親父も怖い。予定していた範囲の草刈が終わらねば、「何やってるんだ、遅いぞ」とどやされるに決まっている。このマムシさえいなければ、とマムシが憎くなり、刈払機でマムシに戦いを挑んだ。

これは私の数少ない武勇伝の一つとなり、今でも語り継がれている。

 

 

草刈りはやっぱりヘビィな作業

作業前の空き地

先日、三角ホーで草刈をした土地にだいぶ草が残っていたのを思い出し、残りの草も刈ることにした。

前回はセイタカアワダチソウの群れを三角ホーで刈り取った(汗だくになりながら)あとに、除草剤を散布したので周囲の草はキレイに枯れていた。今回のターゲットは、手が切れそうな葉を持つ草。

テキリスゲ? ミクリ? 調べてみたが、はっきりとした名前がわからない。改めて、植物の種類の多さに感心する。その草はだいぶ伸びていて、自らの重みに耐えられずお辞儀をしている状態であった。

さて、前回は三角ホーでだいぶ苦労した草刈だが、今回は文明の利器「刈払機」を利用しての草刈である。これさえあれば草刈なんて怖くない!何町歩だって草刈してやる!強力な武器を手に入れた私の鼻息は荒い。

混合油を入れてエンジンをかけると、うぃーーーーん!という喧しい音を立てて回転鋸が回る。肩掛けバンドを肩から通して刈払機を持ち立ち上がる。左足をちょっと前に出し、刈払機を右から左へ、地面と平行にして振り払う。すると、面白いように草が倒れていく。その後はリズミカルに、左足を一歩進めて、刈払機を右から左へ。20分ほどで、空き地の草を刈り終えた。

作業後の空き地

20分ほどの作業でも、終わった後はそれなりに疲れたし、汗もだいぶかいた。手にはまだ機械の振動が残っていて、そのあとに食べた蕎麦のお椀を持つ手がぷるぷると震えて困った。お椀を落としそうになるくらいに、手が震えていた。草刈りを終えた翌日には身体のあちこちが筋肉痛にもなった。
また、草の中には「ひっつき虫」を持つ草が混じっていたようで、これを服から取るのに苦労した。

今回はヘビと遭遇することはなかったが、やっぱり草刈はヘビィな仕事であった。