茨城県唯一の百名山・筑波山は、
何度登っても楽しい山だった。(登山日:2021/2/7)
★筑波山は楽しい!
筑波山は楽しい山だ。
今回久しぶりに筑波山に登ってみて、改めてそう感じた。
何が楽しいって、コースが楽しい。
表筑波と裏筑波といったコースが豊富にあるし、スタート地点によってはそれなりの距離も歩けるし、山頂付近の登りは急で登り甲斐がある。
前回登った「御前山」は「山散歩」という感覚で、「登る」というよりも「歩く」感じが強かった。
それが、筑波山だと「登山」している実感がわく。
今回のコースでいうと、登りのきつさ、岩の多さが、そう感じる要因だろう。
低山とはいえ、高度もそこそこあって、女体山山頂はちょっと危険な感じがいいし、展望もいい。
また、御幸ヶ原の存在も「楽しい」。
山の中腹に、レストランや茶屋、土産物屋があるのだ。
食料や水分が途中で足りなくなったとしても、御幸ヶ原に到着すれば調達できる。
RPGゲームで荒野を歩き、モンスターとの死闘を繰り広げて体力が残り僅かになってしまった後、町に辿り着いた感じに似ている。
御幸ヶ原のおかげで、冒険感がぐっと増すのだ。
ケーブルカーとロープウェイも楽しみの一つ。
観光している感がして、疲れていなくてもついつい乗りたくなってしまう。
そして、筑波山の美しさよ。
きれいに二つ並んだ山の頂。
そこから延びる稜線の美しさ。
関東平野の真っ只中にあるから、余計に映える。
「西の富士、東の筑波」なんて万葉集にも詠まれているらしいが、富士山と比較されるほどの景観である。
これは登っている最中よりも、登る前や登った後に感じる「楽しさ」だ。
まだ、ある。
筑波山にまつわるエトセトラだ。
古くは男女が集う場所であったとか、ガマの油売りの口上とか、奇岩の伝説とか、天狗党の筑波山挙兵とか。
さらに。
ガマランドのB級スポット感といったら!もう!
といった具合である。
一つひとつを掘り下げていったら、とんでもない長編になりそう。
という訳で、「楽しい山」筑波山に登ってきた。
★筑波山
標高:女体山877m 男体山871m
今回のルート:ロープウェイつつじが丘駅 → おたつ石コース → 白雲橋コース → 女体山山頂 → 御幸ヶ原 → 男体山山頂 → ロープウェイ → つつじが丘駅
コースタイム:ゆっくり歩いて往復4時間くらい?
特徴:茨城県唯一の日本百名山、双耳峰、雅称:紫峰
★筑波山に登って
今回はツレと子ども二人を連れてのファミリー・ハイキング。
普段ゲームばかりの子どもたちを、少しでも外に連れ出して遊ばせようという狙いがあった。
運動をしない子どもたちだから、あまりきつい山だと大変な思いばかりさせて「もう山になんて行きたくない」なんて言われそうである。
山の選定に困った挙句、前述した「楽しい山」という点で筑波山に軍配が上がった。
筑波山はなめてかかると痛い目にあう山だが、なめてかからなければ楽しく登れる。
登りが急な部分はあるが、もしもの時にはロープウェイやケーブルカーがある。
それらに乗るのも楽しんでもらえそうだし、御幸ヶ原でごはんが食べられるのも楽しみの一つ。
それに、そこそこきついから「山に登った」という達成感が得られやすい。
何より、子どもたちは(ツレを含む)茨城県民なのに筑波山に登ったことがないというではないか。
いかん、それはいかんぞ。
日本人なのに箸を使ったことがない、と同じくらいにまずいことである。
後学のためにも、筑波山に登らにゃいかん、という使命感を抱いて、今回の山行に挑んだ。
しかし、と一抹の不安がよぎる。
筑波山に登る前に、子どもたちが楽しみ尽くしてしまったらどうしよう。
今回はロープウェイを下りで利用しつつ、ガマ石などの奇岩も楽しんでもらおうと思い、スタート地点をつつじヶ丘駅に決めていた。つつじが丘にはガマランドがある。
ガマランドで子どもたちが満足してしまって、「山に登らくてもいいや、もう帰ろうよ」なんて言われてしまったら!
その不安は、杞憂に終わった。
ガマランドのガマ大明神を見ても、子どもたちは「へぇ」と言うくらいで関心を示さない。
え、うそ、そんなもん?リアクション薄くない?
見て見て!大きなカエルがいるよ!と興味を促しても、「ふぅん」といった具合である。
子どもたちの意外なリアクションに驚きつつも、気を取り直して筑波山登山を開始した。
登り始めて数分で、下の子どもがひいひい言い出す。
「疲れた」「休みたい」
そうだよね、運動嫌いだものね、そうなるよね。
けれど、ここで帰ってしまっては教育にならん。
頑張ろう、あと少しだから!(登り始めたばかりなのに)と大嘘をついて励ました。
これで少なくとも「大人は嘘つきだ」と学んだことであろう。
それから少し登ると、子どもたちは急に元気になる。
大人でも登り始めの30分はきつさを感じる。
それを過ぎると、案外平気になる。子どもたちもその状態になったのだろう。
弁慶七戻、母の胎内くぐり、といった筑波山ならではの奇岩スポットを体験させた後、女体山へ。
この日は晴れてはいたのだが暖かったせいで、ガスってしまって展望が悪い。
山頂からの眺めの良さを体感させて、「山ってすごい!」という反応が欲しかったが、またしても肩透かしを食らう。
続いて、ガマ石の口に小石を投げ入れた後、御幸ヶ原を素通りして、男体山頂へ。
ここの登りもまあまあきつい。けれども長くはない。
登山という視点から見た場合、筑波山はお手軽に「登山」感覚が味わえるという良さがある。
二つのピークを踏んだ後は、御幸ヶ原でごはんを食べ、展望台に登って、帰りはロープウェイ。
ちょっとハードな観光ではあるが、こういうテーマパーク的に楽しめる山は、貴重な存在だと思う。
帰りの車で、後部座席の子ども二人は夢の中へ。
初めての筑波山を楽しんでくれただろうか。
疲れ切って楽しむどころではなかっただろうか。
そんな風に不安に思っていたところ、ツレが一言。
「楽しんでたよ」
筑波山を選んでよかった。
そして、運動嫌いな子どもたちでも楽しめる筑波山は、改めて良い山なんだなと思った。
何より、自分自身がおおいに楽しんでいたのだから。
楽しく山に登って、心の掃除ができた一日だった(双耳峰だけに)。
茨城の山に登るなら…
山と渓谷社から出ている「改訂版 茨城県の山 (新・分県登山ガイド)」。
今回登った筑波山も掲載されている。
のんびりハイキングが楽しめる茨城の山を登るなら、ぜひこの本をお供に。