茨城県日立市・竪破山にて

日立市の竪破山に登る(登山日:2021/11/28)

竪破山の烏帽子岩

半年ぶりに山に行く。
ブランクもあるし、日頃運動していないから、軽めの山に登ろうと思い、竪破山(たつわれさん)を選んだ。

竪破山は茨城県日立市にある標高658.3mの山で、市内で一番高い山にあたる。古くは角枯山(つのかれやま)、黒前山と呼ばれていたが、江戸時代にかの徳川光圀公が山にある大岩のひとつに「太刀割石(たちわれいし)」と名付けたことから、この山を竪破山と呼ぶようになったそうな。

竪破山には太刀割石の他にも大小様々な奇岩があり、七奇石などと呼ばれている。太刀割石、神楽石、甲石(堅破和光石)、舟石、胎内石、畳石(腰掛け畳石)、烏帽子石が七奇石にあたる。岩の他にも滝があり、奈々久良滝、剣滝、龍馬滝の三瀑、奇石と併せて七奇石三瀑なんて呼ばれているという。

奈々久良滝。もう少し草をどうにかすれば、けっこう映える滝だと思う。

中でも、山名の由来となった太刀割石が有名で、大きな岩を太刀で真っ二つに割ったような姿からこの名前がついた訳だが、この「太刀で大岩を真っ二つ」の描写が近年流行したアニメのワンシーンになかったっけ? ということで、茨城県ではにわかに話題に上がったこともある。

とはいえ、登山口駐車場直前にわずかな悪路があるためか、それともそれ以外の理由でか知らないが(登山をするには楽なコースだからとか?)、登山者で混雑するような山ではないようだ。

私が初めて竪破山を知ったのは、だいぶ前のアウトドア雑誌で紹介されていたから(Be-Palかヤマケイあたりだったかな)。太刀割石のインパクトは絶大だったが、登山としては楽だったなーという記憶があって、90分くらいで登下山できたような。それでも、中には何度登っても印象に残らない山もある中で、記憶に残っているということは素晴らしい山に違いない。

熟練登山者にとっては確かに物足りないかもしれないコースだが、登山初心者やファミリー登山にはうってつけの山だと思う。奇岩あり、滝ありで見どころがあって、危険なし、短時間で登れる、という手軽さがある。実際、今回久しぶりの登山で、子連れで登った私には最適な山だと感じられた。

太刀割石(2016年撮影)

竪破山に登ったのは5年ぶりだった。太刀割石は以前と変わらない姿で残っていて、見た瞬間子どもだけでなく私もはしゃいでしまった。

「見て見て! すごいでしょ!? 大きいでしょ? 炭次郎でしょ?」

続いてやってきた子らも、「おー」とうちの子にしては珍しくリアクションをする。「登りたい!」といって岩に登ってしまう始末で、あらら、この岩にそんなことしていいものなの? 神聖なるものじゃないの?と心配になる(けど、止めない)が、登った後は近くのほこらに子が進んでお参りしていたのでまぁいいかとなる。

今回、太刀割石もよかったが、そのあとの登山道がよかった。太刀割石から奈々久良滝へ向かう途中、軍配石があるあたり。

伐採地を歩く。森林限界を歩いているようで、気持ちが良かった。

木の伐採がされて、辺りは高木がなくなっていた。まるで高山の森林限界を歩いているような、そんな感じがした。

「死んだみたい」

ツレのM子が突然言った。

はて? どういうことか? とその言葉を理解するのに少し時間を要したが、「まるで死んだあとの世界のようだ」という意味だった。

なるほど、言い得て妙。確かに高山の森林限界地帯を歩くと、「異国みたい」「宇宙みたい」と非日常的な感動を得るから、この風景を死後の世界と例える気持ちはおおいにわかる。

しかし、M子よ。
女性であるならせめて「天国みたい」のようにもう少しかわいらしい表現にしていただけないだろうか。

そう言い放った矢先、ズビシ!と鋭いM子の手刀が私の脳天に突き刺さる。
頭が真っ二つに割れたような、激しい痛みが……。
あいたたた、これでは本当に死んでしまう。