赤塚公園を散歩した後に、凛々堂でフルーツ大福を買う(2024/04/07)
「今度の日曜は何するの?」
妻からこんなことを聞かれ、何も考えていなかった私は、その通り「何も考えていない」と答えた。
すると「最近手抜きだな」とぼやかれたので、何か企てねばならなくなった。
「じゃあ、つくばでも行くか。フルーツ大福を買おう」
以前、妻がその大福を食べたいと言っていたのを思い出し、咄嗟にそう答え直した。
フルーツ大福というのは、その名の通り大福の中にフルーツが入ったものだ。ただ、その入り方が良い意味でえげつない。大福の中に、果物がまるまると入っている。
「これじゃあ、フルーツと大福を別々で買えばよいじゃないか」
とその姿を写真で見た時、妻に苦言を呈すと、
「いや、それだけじゃないのよ、きっと」と言う。
元より「いちご大福」に目がない妻だから、このフルーツ大福に寄せる期待はさぞかし大きいのだろう。
そんなわけで、フルーツ大福を買うためにつくばまで行った。ただそれだけで水戸からつくばまで行くのも何なので、近くの公園を散歩することにした。
つくば市でフルーツ大福を売っているのは凛々堂というお店で、そのすぐ近くに赤塚公園という公園があるので、散歩にちょうど良いと思った。
赤塚公園には無料の駐車場があるので、そこに車を停めて園内に足を踏み入れる。公園内にはアカマツ林があって、花壇があって、芝生があって、桜の花が咲いていた。歩道やトイレなどの整備も良くされていて「都会の公園だな。さすがつくばだな」と思った。
散歩をする人、犬の散歩をする人、サイクリングをする人、ジョギングをする人、レジャーシートを広げて花見をする人……。
様々な人が、この公園で過ごしていた。駐車場も車でいっぱいだったから、地域の人に愛されている公園なんだろう。
「じゃあ、歩きますか」
あてもなく、園内を妻と二人で歩き始めた。そういえば、ここ最近はお互いに忙しく、二人でこうして散歩をする時間もなかった。
だからといって、特別なことを話すでもない。場所は変わったが、話す内容はいつもと変わらなかった。話す内容は変わらないが、会話をしていて感じるものはいつもと違うものがあった。
それは、園内が、きれいに整備された自然だったから。
そして、行き交う人々がどこか都会の風を纏っていたから。
だから、散歩していて自然と背筋が伸びた。
数分歩くと、すぐに公園の外に出た。道路をわたると、ヘルスロードと描かれた看板があった。地図によると、この道をまっすぐに進むといくつかの公園を貫いてつくば駅まで続いているらしい。この通りを、つくば公園通りという。
「よし、駅まで歩くか」
と妻に言うと、怪訝な顔をされた。
公園や通りにある桜の木が満開だったから、それを見ながら歩くのも気分が良いだろうと思ったのに。
洞峰公園まで歩くと「疲れた。お腹が空いた」と妻がこぼすので「よし、そろそろ大福を買いに行くか」と、そこで引き返すことにした。
妻にとっては、花より団子ならぬ「桜より大福」のようである。帰り道もまた、普段通りの会話をしながら歩いた。
凛々堂で買ったフルーツ大福は、家に帰ってから食べた。備え付けの糸で大福を真っ二つに切ると、中にはフルーツがぎっしりと詰まっていた。
食べてみると、ほんのり餡の味がした。
「なるほど」
大福の中には、フルーツだけじゃなく、白餡がこっそりと忍び込まれていた。これはなかなかうまい、と感心した。
妻が言うように「それだけじゃない」。
妻に餡が入っていることを伝えると、「え、そんなの入ってた?」と気付いていない様子。
餡のことなど気にもせずに大きく口をあけて大福を頬張る妻の姿を、あん(餡)ぐりと口を開けて見つめた。