茨城県東部の自然と町を歩く(2024/5/4)
● 涸沼自然公園を散歩(茨城県東茨城郡茨城町)
予定が急になくなってしまった日曜日。妻を連れて散歩に行くことにした。
せっかくだから、どこか遠くの町でも歩こうか。でも、遠くまで行くのが面倒くさい。
ならば近くでいい感じのところを探して歩こうか。でも、そんなところはもう歩きつくしたし探すのも面倒くさい。
そんなぐうたら夫婦が行き着いたのが、茨城町にある涸沼自然公園だった。
管理所の建物が立派すぎて、一見すると有料のように見えるが無料で歩ける。無料と知りつつも実は有料なのではないかと勘繰ってしまい、どきどきしながら管理所を抜けた。
園内に入ると分岐があったので、森の方へ向かって歩くと、妻が嫌がる。
「虫がいるじゃん」
普段、家の中に侵入した虫を平気な顔をして退治する人間が言うことか。
「大丈夫、大丈夫」と言って無理やり連れて行くと、早速小さな虫が飛び交っていた。「いやー」だのと年甲斐もなくはしゃぐ妻を、そのまま無理やり連れて歩く。
太陽の広場を抜け、展望広場へ。茨城が誇る汽水湖・涸沼が見える。まぁ、なかなかな景色か。「絶景」とまではいかないスケールの小ささが、茨城らしくて良い。「どう?」と妻に聞くと、「どう?って何が?」と全く興味を示さないのはいつものこと。
そのままわいわい広場の脇を通り過ぎ、せせらぎ広場の中を歩く。小さな水の流れがあって、子どもたちがそこで水遊びをしている。家族で来ている人々は、ビニールシートを地面に敷いて、持ってきたお弁当を食べている。
川があって森があって遊具もあって。子連れのピクニックにはちょうど良い環境だ。
お弁当を食べている家族を見て、妻が「お腹空いた」と言う。花より団子、自然の風景よりご飯な妻である。じゃあ、ご飯を食べに行くか、と言いつつも、せっかく来たのだからと思い、さりげなくあじさいの谷まで連れて歩く。
あじさいの谷にはアジサイは咲いていなかった。だが桟橋がかかっていて、湿地帯のような場所の上を歩くことができた。桟橋の先には、キャンプ場があって、キャンパーたちがテントを張って寛いでいた。
「いいなぁ、キャンプ」と言うと、「え、テントはイヤダ」と妻が言う。「なんで」と問うと、「虫がいそう。寝れなそう」と妻が答える。妻を連れて行くなら「コテージ泊」が限界か。
再び管理所が見えてきた頃、近くの広場で小さな子どもが網を片手に蝶々を追いかけていた。子どもは必至に追いかけ網を振るうが、蝶々はひらりひらりと優雅に舞って、まるで捕えられそうにもない。
その様子を見た妻は、「かわいい」と言った。自然の魅力には感心がない妻でも、このような人々の姿には感心があるらしい。
この涸沼自然公園には、自然の魅力だけではなく、そこに集う人々の過ごし方にも魅力があるようだ。
涸沼自然公園
茨城県東茨城郡茨城町中石崎2263
時間 午前9時 ~ 午後5時
定休日 4月 ~ 10月・無休 11月 ~3月・月曜(祝日の場合、次の日)12月28日 ~ 1月4日
料金 無料
● 鉾田散歩(茨城県鉾田市)
昼食は「ドライブインあさひ」でお腹いっぱい食べた。このお店、盛りが良い。私はから揚げ定食を食べたが、大きなから揚げがたっぷりと入っていて、それでいてお値段980円と割安。お値段以上、あさひである。満腹になり過ぎたので「このままでは夕飯が食べられない」と妻が言うから、では腹ごなしに散歩をしようとなる。
新鉾田駅の近くに車を停めて、適当に歩いた。グーグルマップを見ると、近くに川が流れていたので、何となく川まで歩いてみようと思った。
鉾田の街並は、古い家が多く、その中に新しい家もぽつりぽつりとあって、それはお店も同様で、小さな個人のお店と大手のお店が混在していた。意図的に人が整理したというよりは、住む人によって自然とそのような姿になっていった印象を受ける。「古い」といっても、江戸時代からあるような建物も見た感じでないことはないが、昭和頃に建てられた家がほとんどな様子。だが、令和の時代に昭和の時代の建物は、それなりの古さと風情を感じさせてくれた。
地方都市の多くは、幹線道路沿いに大手のお店が並び、昔栄えた町中は閑散としてシャッター街になっている。
茨城県の県庁所在地・水戸市もその傾向にある。働く場所や観光地があっても、そのような状態になってしまっているのが、日本の地方の現状ではないか。
それが、鉾田という小さな町で、小さな個人のお店が元気よく営業している姿を見て、まだまだ鉾田も捨てたもんじゃない、と思った。恐らく、町外からわざわざ鉾田の小さな店で買い物をするような人は少ないだろう。すると、この町に住んでいる人に、小さなお店は買い支えられていることになる。
鉾田を散歩していて、人々の生活の息遣いを感じられたのは、このローカリズムのせいだろう。ローカルで、町の一部の経済が循環していると考えると、鉾田は割と先進的な町のようにも思えてくる。
といっても、やはりというか、廃業してしまいそのまま廃墟になっている店も多かった。以前にガソリンスタンドや旅館を営んでいた建物を、歩いていてちらほら見かけた。
中でも、旅館の廃墟が目に留まった。鉾田の町に、廃業した旅館がひとつではなく、いくつかあった。
旅館やホテルは、観光地やビジネス都市にあるイメージだが、鉾田に旅館? と考え込む。旅館が既に廃業しているということは、今より昔、昭和などの時代に鉾田に外客を迎え入れる魅力・理由があったということ。はて、その時代の人々は鉾田に泊まって、何をしたのだろうか。
茨城県鉾田市は、農業が盛んで野菜区分の産出額が平成26年から令和4年まで9年連続日本一になっている。中でもメロンは全国一位の産出額で、その他イチゴやサツマイモ、大根、ニンジンなどの生産も盛んだ。かくいう私も、鉾田のメロン農家で働いていたことがある……というのは余談。
でも、農業がすごいからといって、人が全国から泊りにやってきたのかな? (来ないんじゃないか)メロン狩りなんてやっているところもあるけれど、わざわざ泊まるものなのか。
その他、鉾田市周辺の観光資源としては、涸沼、太平洋、霞ケ浦、北浦がある。これらの自然資源を活用したアクティビティは、釣り、海水浴、ウインドサーフィン、サーフィン、SUPなど。霞ケ浦は全国2位の広さを誇る湖だし、太平洋はすぐ近くにあるし、アクセスを考えると鉾田に泊まる気持ちにもなるかもしれない。
そんなことを考えながら、鉾田を歩いていると、こじんまりとした美容室の前に、おばさまが一人座って草取りか何かをしているのに遭遇した。おばさまの髪の色は。ピンクだか紫だか忘れたが、とても素敵な色だった。
「こんにちは」と挨拶をすると「こんにちは」とおばさまが返してくれた。
その美容室を通り過ぎて。
「田舎の美容室のおばちゃんてさ、奇抜な髪色していることが多くない?」
私が偏見じみたことを妻に言うと。
「いや、私の家のおばあちゃんは、美容室勤めじゃなくても奇抜だったよ」
やはり偏見だったとわかる。
そうして、目的としていた川=鉾田川に到着した。川沿いに小高いコンクリートの土手があったので、二人してよじ登って土手に沿って歩いた。コンクリの幅が狭いので、歩く時には平均台を渡るように腕を少し広げて歩いた。
すると、途中すれ違った車の中の人が、こちらを見て笑っていた。
鉾田市
面積 207.60km2
総人口 44,445人(推計人口、2024年5月1日)
人口密度 214人/km2
主な産業 農業