城山公園の彼岸花【栃木県・茂木町】

城山公園へ彼岸花の群生を見にいく(2022/9/25)

お彼岸に墓参りに行くと、決まって赤い花を見かける。彼岸花(ヒガンバナ・曼珠沙華)である。

その姿、あまりに可憐であまりに儚く、あまりに幽玄でこの世のものとは思えないほど美しいのだが、そんな花が田んぼの隅にちょこちょこと生えている。怪しげな美しさを放つ花にしては、咲く場所があまりに庶民的である。

しかしこの彼岸花、見れば見るほどに美しい。しかも大抵いくつもの数がまとまって咲いているから、美しさが増すというもので。

ならばもっと大量の彼岸花を見てみたいと思い、彼岸花の群生で有名な栃木県は茂木町・城山公園へと車を走らせた。

茂木町といえば、ツインリンクもてぎ。ここで行われる花火の素晴らしさはちょいとばかり有名である。茂木町は私がよく行く城里町からほど近く、水戸市の中心から車で行くと1時間もかからないで着いてしまう。

彼岸花の咲く時期は城山公園の駐車場は使えないようで、少し離れたグリーンパークの駐車場へ車を停めて、茂木の町を散策しながら城山公園へと向かう。少し寄り道しようと思い、ちょいとメイン通りを外れると、まんまと道がわからなくなり、慌てて文明の利器を使って現在地を調べるとあさっての方向へ進んでいることに気付く。

でも、怪我の功名で茂木町を散策できたので、良しとするのは私の勝手で、ツレにはまた道に迷ったのか、歩き過ぎて足が痛いだのとボヤかれてしまう。茂木町は小さな町ではあるが通りには商店が並び、それらは決して賑やかではなくどちらかというと寂れた風合いをしているが、それがまた風情があって良い散歩になった。

山腹が彼岸花で赤く染まっている。

城山公園は遠くからでもそれとわかった。何故なら斜面に赤い花が咲いているから。遠くからでもそれとわかるほどの数の彼岸花が咲いている訳であるから、心躍る。

城山公園に到着すると、真っ赤な彼岸花の群生が出迎えてくれた。ちょうど見頃くらいだろうか、満開といってよい見事な咲きっぷりで、それがあたり一面に広がる様はやはりこの世のものではないと思える。
その数およそ55万本という。

城山公園の彼岸花群生地を散歩。

彼岸花は曼珠沙華、地獄花、幽霊花、火事花、灯篭花…など1000種以上の呼び名があるという。

自然美に鈍感なツレでさえ「地獄にきたみたい」と呟いた。表現としては美しくはないが実感がこもっているし、彼岸花には「地獄花」という別名があるから意外に的確な言葉選びである。

城山公園の彼岸花は群生といっても自生したわけではなく、人工的に植え付けたらしい。春だけではなく、秋にも城山公園に訪れてほしいという想いから植えたという。彼岸花の妖美な姿とは裏腹に、ポップな理由からこの群生は生まれた訳である。

斜面に咲く彼岸花

彼岸花が咲き乱れる斜面を登り終えると、公園があった。そこには桜の木が多数あり、春になるとたいそうキレイな花を咲かせる桜の名所だそうな。

そこからの見晴はよく、茂木町や近くの山々を見渡せた。私たちが車を停めた場所が意外とすぐ近くにあることがわかり、随分歩いて来たように感じたが、実際はこんなに近かったのかと唖然とした。

公園には少し冷たい秋の風が吹き付けた。この日は気温が上がり、斜面を登ってきた私たちは息を切らし汗をかいていたから、その風がとても心地よく、しばらくそこで涼むことにした。

山に登り汗をかき、花を見て心震わせ、風を浴びて涼む。

ふうっと思わずため息が出た。