茨城随一の難キレットあり!篭岩展望台~篭岩山へピストン登山
篭岩山
所在地:茨城県久慈郡大子町北富田 付近
※篭岩展望台まではGoogleMapで途中までのルートが出ます。
標高:501.4m
今回のルート:篭岩展望台付近の道の行き止まりに駐車 → 篭岩山頂 → 篭岩展望台 → 駐車場に戻る
コースタイム:ゆっくり歩いて往復3時間くらい?
特徴:2つのキレット、篭岩展望台、展望台近くの岩の穴
篭岩山のキレット
篭岩山に登る前から、篭岩山のキレットには恐怖を抱いていた。
「10mくらいの落差があるキレットがあってね。角度はほぼ垂直なんだ」
今回の山の同行者・Oさんに、事前にそのような案内を受けたためだ。
10m?
垂直?
私は耳を疑った。
そんな急峻な場所が、茨城の山にあるなんて。
鎖が苦手(特に下り)な私は、Oさんの言葉に恐れをなし、今回の山行を見送ろうかとも思った。
でも、篭岩山に登ってみたい。
過去に篭岩展望台までは登ったことがあったが、篭岩山には登ったことがなかったのだ。
ピークを踏んでいないという中途半端感。
茨城の山を踏破したいという秘かな(そして小さな)野望。
そして、篭岩山のキレットとはどんなもんじゃい! という怖いものみたさ。
「行きましょう、篭岩山へ!」
というわけで、キレットへの恐怖心よりも篭岩山を踏破したいという気持ちが打ち勝ち、予定通りに篭岩山への山旅が始まった。
ルートは、篭岩展望台付近の駐車場所(というか道の行き止まり)からスタートし、篭岩山へ登り、帰り際に篭岩展望台を見て戻ってくるというもの。
いわゆるピストン登山で、周辺の上山や奥久慈男体山といった縦走ルートには目もくれず、ひたすら篭岩山の山頂を目指す。
序盤のゆるやかな登りが20分ほど続いたあと、篭岩山のキレットは目の前に現れた。
キレットの淵に立って見下ろしてみると、大きな木の根っこと、そこに鎖とロープがぶら下がっている。
高さも角度も、Oさんが言っていた通りで、大体10mくらいでほぼ垂直である。
でも、意外に、そこまで怖くはない。
角度は確かに急ではあるが、垂直とまではいかない。
切り立った岸壁という訳でもなく、木の根に鎖、ロープに岩、土と掴みどころや足の置き場はいくらでもある。
過去に山で遭難しかけた時(亀ヶ淵)も、道なき道を進んだことがある。
それに比べたら、ルートは程度わかりやすい。
加えて、過去に何度も篭岩山に登ったことがあるOさんがいる現状は心強かった。
キレットは、三点支持を心掛けるとひょいと下りられた。
登る前に、あれだけ恐れていたのがウソのように。
だが、山慣れしていない人からすると、そうでもないようで。
私たちの後から来た登山者一行は、このキレットを上から覗くと、「ああ、これは危険だ」とばかりに引き返していった。
「キレット」なので、下りがあれば登りもある。
でも、下りよりは登りは楽なもので、こちらも難なくクリアする。
篭岩山にはこの後「第2キレット」と呼ばれる難所もあったが、「第1」ほどの苦労はなくクリア。
そして、ピストンなので同じ二つのキレットが下山時も待っているわけだが、登り時と同様に三点支持を心掛ければそれほど問題はない。
終わってみれば、篭岩山のキレットはスリル満点で楽しいものであった。
しかも、それが行きと帰りの二度味わえたのだから、歩行時間の短さを補って有り余る満足度である。
しかし。
篭岩山のキレットの本当の恐ろしさは、キレットを通り過ぎた後に待っていた。
下山時の二つのキレットを通り過ぎた後、歩いていると靴底に何かが当たる感触がする。
最初は気のせいかと思っていた。
だが、その後も歩いていると明らかに違和感がある。
これは、おかしい。
歩行時に靴底がザックに当たっている?
いや、そこまで足を上げてはいない。
靴底に何か付いている?
いや、靴底を見ても何も付いてはいない。
もしや。
靴底に何か「憑いて」いるのか?
篭岩山のキレットは、恐れていたほどではなかった。
でも、そこは確かに危険な場所で、足を踏み外して鞍部に落ちれば、それなりの怪我をするだろう。
打ちどころが悪ければ……ひょっとして過去に……成仏できずに靴底に……!
キレットを軽んじた罰が当たったのか。
いや、それならば同行したHの方が「キレット楽しい、キレット楽しい!」とキレットを軽んじていた。
それとも登山中に踏んではいけない場所を踏んでしまったとか。
それとも仕事中に〇〇していたせいか。
それとも先週の休みに〇〇したせいか。
それとも、それとも……。
靴底の違和感はやがて恐怖感に変わる。
それとも、それともと我が身に災難が降りかかる原因を探りながら歩いていると、靴底の感触がグニャッとしたものに変化した。
おおおおお、これは、まさか、ついに、いやそんな馬鹿な!
恐る恐る足元を見てみると、登山靴のソールが剥がれているではないか!
篭岩山のキレット用に履いてきたモンベルの登山靴。
いつもの低山用のキャラバンのよりも、ハイカットだしレザー部分が多いし岩から足を守るのに丁度よいと思い、物置から引っ張り出して久しぶり(約2年ぶり)に履いてみたのだ。
このモンベルの登山靴には思い入れがあって、一番最初に買った登山靴で、これを履いて今までもいろんな山に登ってきて。
その登山靴のソールが、剥がれてしまったのだ。
登山靴の手入れをせずに2年も物置に放置した結果、登山靴の魂(ソウル)がソールを剥がしたのか。
それとも、キレット(切戸)だけに、靴底が「切れ取」れてしまったのか。
いずれにしても、篭岩山のキレットはやはり怖い。