茨城県と栃木県の県境にある鷲子山上神社で、
フクロウの頭を撫でまわし、苦労知らず(不苦労)の人生を願う。
★2021年のゴールデン・ウィーク
五月の大型連休は、まるで連休の感じがしなかった。
連休中といえど、平日は変わらず仕事があるし、土日も変わらず休みであった。
つまり、日常と何ら変化がない。
仕事自体も内勤なので、「連休」を感じられるとすれば朝晩の通勤時に車が少ないところくらいか。
私に変化がなくても、子どもたちの学校は休みだし、ツレの仕事も休みである。
連休だから、どこぞへ連れて行ってやりたいものだが、世間はやれコロナコロナと大騒ぎであるから、いわゆる一般的な観光地にはどうにも行きにくい。ならば、近場の人出が少なそうなところはないかと思い、鷲子山上神社が頭に浮かんだ。
★鷲子山上神社
社務所の住所:栃木県那須郡那珂川町矢又1948
見どころ:栃木県(那珂川町)と茨城県(常陸大宮市)の間(つまり県境)にある神社。
大鳥居の前には県境を示す看板が建てられている。御祭神が天日鷲命(アメノヒワシノミコト)といわれる鳥の神様で、日本一の大フクロウ像が祀られている。フクロウ=不苦労ということで、苦労を運び去り、幸福を招くとされている。境内には大フクロウの他、様々なフクロウ像がある。
★フクロウに願いを込めて
鷲子山上神社は、日本一の大フクロウと県境にある神社として地元ではちょっとした有名神社である。
神社で販売している「県境」と書かれたお守りをカバンにぶら下げていれば、「お、鷲子神社行った?」と見知らぬ人に声をかけられるほどである(誇張)。
有名ではあるが、大型連休向けではない。
大洗の水族館や海、大子の袋田の滝や奥久慈の山々、つくばの筑波山やその近くにある霞ケ浦、日立のかみね動物園、ひたちなかの海浜公園……といった茨城県内のメジャーな観光スポットと比べると、鷲子山上神社はいささかマイナー感が漂う。
マイナーではあるが、フクロウや県境神社といった魅力がある。
コロナ禍ではそのマイナーさが好都合であり、人手も少なかろうと予想をした。
しかし、行ってみると駐車場はほぼ満車。
どうにか一台停められはしたが、まさかまさかの人出である。
といっても、初詣の神社のように混雑はしていない。
ゆったりと観光することができた。
境内はそこそこに広いから、散歩にもちょうどいい。
ところどころにフクロウの像があり、身体健全、自然保護、芸術、平和、九星ふくろうなどなど、様々な名を付けられている。
それらのフクロウ像の頭をなでると、ご利益があるということなのだが、果たしてコロナ禍でそれはどうなのか、と思う部分もあるが、フクロウがかわいいので許せてしまう(それでいいのか)。
中でも見ざる、聞かざる、言わざるの三猿をモチーフにフクロウと、かぼちゃのフクロウが気に入った。
だらだらと歩いていると、雲行きが怪しくなって、カミナリが鳴り出し、雨も降りだした。
こりゃ適わないと足早に観光を終えて、車に乗り込みたいところだが、肝心の大フクロウを見ていない。
これを見なければ鷲子山上神社に来た意味がないから、階段を登って大きな金色のフクロウを眺める。
この大フクロウ、「フクロウ大仏」なんて別称があるらしいが、金色というのがまた何とも。
絶対金運が良くなるご利益があるのだろうと思ったら、案の定そうであった。
などと、不服を述べつつも、大フクロウの真下にある金運不苦労御柱にはしっかりと願いを込めて抱きついてきた。
若い時の苦労は買ってでもせよ。
なんて言われがあるから、子どもたちには少々苦労をしてもらった方が後々良いのかな、と思う。
しかし、いい歳になった私は、もう苦労から解き放たれてもいい頃かと思う。
フクロウ様、そろそろ頃合いですぞ。
フクロウに願いを込めて……というか念を押して、鷲子山上神社を後にした。
神社を出ると、カミナリはいっそうひどくなり、雨は大粒になり、やがてヒョウになった。
フクロウ様、これはいったい……?
悪天候を苦労と取るか、それとも、不測の事態を楽しめるか。
苦労を苦労と思わずに、「いい経験」と思えるかどうか。
そういえば、歳を重ねて経験を積んだ今は、「苦労している」とあまり思わなくなった。
段々と「不苦労」に近づいているのか知らん。
それがわかっただけでも、御利益があったということか。