おっさんたちの心を癒す、新緑の奥久慈男体山ツアー(2024/4/27)
職場の先輩方と一緒に、茨城県の奥久慈男体山に登った。
ひとりの先輩Mさんは、他県から出向で茨城県に来ている人で、その地域の山を幾多も登ってきた人だった。Mさんの残りの滞在期間がわずかだったので、せっかく茨城に来ているのだから、茨城の魅力を、山を知ってもらって喜んでもらいたかった。
もうひとりの先輩Yさんは、仕事のことで毎日あれこれと頭を悩ませている人だった。だから、山にでも登って、自然に触れてリフレッシュしてもらいたかった。
そして、私は最近家と職場の往復が続き、家事と仕事の毎日だった。だから、久しぶりに山に登って、単調な日々からひとときでも解放されたかった。
そんな3人の年齢を足すと、142歳になる。
ということは、3人とも「おっさん」である。
それぞれのおっさんが抱える事情に配慮して、登る山は奥久慈男体山にした。山の周囲には豊富な自然があり、おいしい食べ物があるし温泉もある。男体山自体には鎖場があって刺激的で登り甲斐がある山だ。単体で登るならば往復3時間程度のコースだから、時間的にも体力的にもちょうどよい。
私の思惑通り、奥久慈男体山登山は二人のおっさんを魅了した。
登りの健脚コースでは、他県から来ているMさんが「低山でこれだけ鎖場がある山はなかなかないね」と言っていた。仕事で苦悩続きのYさんも登りながら「面白い山だね」と言っていた。二人に男体山を案内した私としては、そんな言葉が聞けて満足だった。
山頂に着いて、ほっと一息ついたところで、私は見事な尻餅をついた。足場が特に悪い訳でもなく、ほとんど傾斜もない所での転倒であったので、二人のおっさんに散々馬鹿にされたが、これは二人のおっさんに喜んでもらうためのパフォーマンスであったとこの場で弁解しておくとする(強がり)。
下山に使用した一般コースでは、この季節ならではの男体山の魅力を発揮してくれた。それは、新緑の美しさだった。緑がまぶしいくらいに輝いていて、その量にも圧倒された。新緑の中を歩いていると、心がまっさらになっていった。
山を下ると、麓の大円地山荘で蕎麦を食べた。YさんとMさんは大子町の名産・奥久慈軍鶏が入った蕎麦を食べた。私は山菜たっぷりの天ぷら蕎麦を食べた。二人はビールを飲み、私は車の運転があるのでノンアルコールのビールを飲んだ。
ひと仕事…といっても山登りだから遊びだけれど…終えた後の食事は、山荘の雰囲気の良さも手伝って格別なものだった。縁側窓に張り付いた数匹のカメムシの姿すらも、風靡に感じられた。
続いて、温泉に行った。山に登ったら温泉である。この二つはセットであり、ニコイチであり、それはもはや世の理である。
汗を流した後に露天風呂に入ると、「あああああー」という何とも言えない声が、3人のおっさんの口から漏れる。風呂から出ると、サウナに入り、サウナから出るとまた風呂に入った。
風呂から上がると、座敷のレストランに行って、酒を飲む(私はノンアル)。適当につまみを頼んで、それを食べながら畳の上に寝そべる。会場にある大型のテレビには、プロ野球のデイゲーム中継が映し出されていたので、それを横目で見ながら話をしてダラダラと過ごす。
その日は土曜日だったから「明日が休みなのがまたいいですよね」と私が言うと、
「本当だよ。これが日曜だったらまったく違うよね」とMさんが言って酒を飲む。
「そうですよね、日曜だと『明日仕事かぁ』ってウツな気分になりますよね」と私はフライドポテトをつまみながら言う。
「Yさんは明日休めるんですか?」とノンアルビールを飲みながら聞くと。
「休みだよ」とYさんが言って酒を飲む。
「それはよかったですね。何するんですか?」と激務のYSさんを労いながら、寝そべったままソーセージを食べる。
「子どもと遊ぶかなぁ」とYさんは言って酒のお代わりをしにいった。
そんな風に一日を過ごして、帰路に着く。
「いい一日だった」
二人のおっさんからそのような言葉を聞いたもう一人のおっさん(私)も、同じことを思った。
奥久慈男体山(茨城県)
茨城県常陸大宮市と大子町の境にある標高653.8mの山。今回のコースは大円地駐車場→健脚コース→山頂→一般コース→大円地越→大円地駐車場。健脚コースの岩場が魅力。