プロモーション有

工場夜景(茨城県・神栖市)

コト
スポンサーリンク
スポンサーリンク

鹿島臨海工業地帯の工場夜景を見る(2021/12/25)

軍の研究所開発のための土地に工場を誘致しようという「鹿島開発」の試案がまとめられたのが1960年。
その翌年に「鹿島臨海工業地帯造成計画」が作成され、4,000ヘクタールの土地に工業地域を造成するという計画が打ち出された。

目指すは「農工両全」「貧困からの解放」「人口30万都市」。当時、茨城県は「後進県」という位置づけであったらしい(今は魅力度最下位)。その後、茨城県鹿嶋市・神栖市には続々と工場が建設され……現在では約160の企業が集まり、2万人もの人が働く場所となった。この高度経済成長の日本をバブリーさを象徴するプロジェクトは、フランス映画の舞台にもなっているというから、驚きだ(鹿島パラダイス)。

鹿島臨海工業地帯のおかげもあって、鹿嶋市・神栖市は街として栄えた。当初掲げた目標の「人口30万人」には遠く及ばなかったが、両市を併せた人口は16万人ほどで、県庁所在地の水戸市の人口が27万であることを考えると、そこそこな人口である。だが、水戸からもつくばからも、成田からも車で1時間前後は走る距離にあり、その間に大きな町がないせいか「陸の孤島」のような感がないことはない。

さて、Wikiから拾い上げた文章はここまでとして、私と神栖は何かと縁がある。
というのも、今まで渡り歩いた会社で、2度ほどこの地の担当になったからだ。仕事で何度も神栖を行き来するうちに、この町の独特な感じが好きになっていった。

国道124号線沿いはチェーン店が建ち並び、ちょっとした地方都市になっている。いわゆる全国チェーンのお店で、鹿嶋・神栖にない店はない!と言うと過言かもしれないが、それくらいチェーン店が集まっている。メインストリートはそのように賑わっているが、一本裏に入ると途端に寂れた風情になる。個人経営のいい感じのお店は、裏通りに多い。

国道124号線は鹿嶋から神栖を通り、銚子までつながる道路で、神栖から銚子までは気持ちがいいくらいにまっすぐに伸びている。背の高い建物は、国道沿いのお店やホテルくらいで、あとは風力発電と工業地帯の建物が見えるばかり。工業地帯を抜け、波崎地区まで行くと本当に道がまっすぐになり、アメリカにでも来たかのような感じになる(行ったことないけれど)。

鹿嶋市あたりからの隣町・潮来方面の景色は、水郷の名にふさわしく、水田や川などの水辺が多く、平らな景色が広がっている。山の姿なんて、面影すらない。東側はすぐ海で、この辺りの風景は何となく「空が近い」感じがする。

また、国道から逸れると空き地が多いことから、「作りかけの町」の感がすごくある。県外からの移住者や単身赴任者が多いためか、茨城県から独立した独自の町を形成している感じもする。県境に位置しているせいもあるだろう。

そして、夜になると、鹿島臨海工業地帯の工場たちが「工場夜景」を見せてくれる。

今まで何度も神栖に行ったが、遠目から鹿島臨海工業地帯の「工場夜景」を眺めたことはあっても、近くからは見たことがなかった。かの有名なB級スポットを紹介する雑誌「ワンダージャパン」で工場夜景は紹介されたこともあって、私はその愛読者だったので、近くからまじまじと工場夜景を見てみたいと思うことはあった。

けれど、なかなかどうして、足が向くことはなかった。
神栖に縁はあっても、工場夜景には縁がないのかもしれない、と思っていた。

それが、2021年の年末、唐突にその機会が訪れた。
ツレのM子に夜景サイトを見せて、クリスマスにどこに行きたいか聞いてみると「工場に行きたい」というではないか。ネットで鹿島臨海工業地帯の工場夜景スポットを調べて、念願の工場夜景を見に行ってきた。

砂山都市緑地(茨城県神栖市東和田21−2)

鹿島石油 東門前(35.912532, 140.696872)

何だろう、この独特な感覚は。
工場が灯す明かりは、まるで温かみがない。月明かりや焚火のような自然の温もりはまるでなく、人々の賑わいによって作り出された都心が見せる夜景とも違う。見た目通りに機械的で、無表情で冷たい感じがする。大きな図体をデンと露わにし、圧倒してくる。これも、夜の山々が見せるような圧倒的な感じ、怖さとは違う。

都会のビル群が見せるものともやはり違う。工場ならではの、輝きと圧迫感がある。工場夜景ならではのドキドキ感・ワクワク感があった。

そこにはイルミネーションを見た時の感動とは正反対な感動があった。イルミネーションは見られるために作られたものだから、同じ人工物が見せる光でもまた違うのだろうか。

そして、何よりの違いは、工場夜景を見たM子の反応だった。「わー!すごい!」を連発し、スマホでパシャパシャと写真を撮り始める。日本三大イルミネーションの「あしかがフラワーパーク」に行った時の冷めた反応とは大違い。

「イルミネーションと何が違うの?」

試しにM子に問うてみた。

「初めて見たから」

そんなものか。

 

ワンダーJAPAN 巨大工場*総特集号 三才ムック vol.241

工場夜景